はじめに

今、私は、あるNPO(非営利組織)が提供するサービスのデザインと、そのサービスに関するの三つ折りパンフレットのデザイン(作成まで含む)を担当しています。その経験をもとに、サービスデザインについて考察します。なお、実際にはパンフレットにはNPO自体の説明も含みます。

まずは、ソフトウェア設計における原則の一つを簡単に紹介します。次に、この原則を、サービスデザインとパンフレットデザインの視点から考えていきます。

ソフトウェア設計でのモデルとビューの分離

モデルとビューを別々に考えるというのは、ソフトウェア設計の原則の一つです[1]。モデルは、何らかの情報やデータ自体を表します。ビューは、そのモデルの表示するもの(見た目)です。利用者は、ビューを通じてモデルを見ることになります。

たとえば、より具体的には、以下のようになります。
・モデル: アンケート結果のデータ
・ビュー: 表によるアンケート結果の表示、グラフによるアンケート結果の表示

user_view_model
こうすることの利点の一つは、モデルに影響せずに、ビューを変更できることです。また、新たなビューの追加も容易になります。

サービスデザインでのモデルとビューの分離

上記の話と、サービス内容とパンフレットとの関係を以下のように対応させてみました。
・モデル:
サービス自体について決定されたこと。どんなサービスを提供するのか。サービスの価格はいくらか、など。
・ビュー: パンフレット。サービス内容についての情報を載せる。レイアウト、色、ロゴ、イラストなども構成要素となる。

user_view_model2
上記の図では、モデルとビューが分離されていることを示しています。何からのサービス内容がモデルとして定義され、ビューはそのサービス内容を表します。


では、サービスデザインにおいて、モデルとビューを分離する嬉しい点は何でしょうか? あるいは、逆に、分離しないことで困る点は何でしょうか? それは、状況により決まります。ここでは以下の二点をもとにして考えたいと思います。
(1) サービスデザイナーの人数: あるサービスのデザインに関わる人が複数人いるかどうか
(2) パンフレット数: 一つのサービスに対して、パンフレットを複数作るかどうか

これら状況により、サービスデザインにおける以下の性質が決まります。
・理解容易性: サービスのデザインに関わる人が、サービス内容について容易に理解できるかどうか

なお、ここでは、サービスのデザイナーとパンフレットのデザイナーは、同じ人が担当すると仮定します。現実的には、異なる場合があります。その際にも、モデルとビューの分離が有効かもしれません。

サービスデザインでのモデルとビューの分離のパターン

まずは、一番単純な状況について考えてみます。つまり以下の状況です。
サービスデザイナーの人数: サービスのデザインに関わる人は一人である
パンフレット数: 一つのサービスに対して、一つのパンフレットを作成する

この場合、モデルとビューの分離の重要性は、大きくありません。
・理解容易性: サービスは、その人がデザインするため、内容については理解済みです

以下の図は、モデルとビューを分離していない状況を示しています。
user_view_model_role1


次に、サービスデザイナーが複数人いる場合です。
サービスデザイナーの人数: サービスのデザインに関わる人は複数人である
パンフレット数: 一つのサービスに対して、一つのパンフレットを作成する

この場合、モデルとビューの分離が必要になることがあります。
・理解容易性: サービスデザインの理解は、サービスデザイナー同士の会話か、パンフレットを通じて行われます。パンフレットは利用者向けに作られているのであり、共同するサービスデザイナーのために作られているのではないため、サービスデザイナーにとっては理解しにくいかもしれません。また、サービスデザインが複雑になると、会話を通じての理解は難しくなるかもしれません。

以下の図は、モデルとビューを分離した状況を示しています。ここでは、モデルとは、サービス内容を記述したものです。
user_view_model_role2
以下の結果になります。
・理解容易性:
サービスデザインの理解は、サービスデザイナー同士の会話か、モデル(サービス内容の記述)を通じて行われます。モデルは、共同するサービスデザイナーのために作られているため、理解が容易であることが考慮されています。

次に、サービスデザイナーが複数人いて、かつ、パンフレットを複数作る場合です。
サービスデザイナーの人数: サービスのデザインに関わる人は複数人である
パンフレット数: 一つのサービスに対して、複数のパンフレットを作成する

この場合、モデルとビューの分離が必要になることがあります。
・理解容易性: サービスデザインの理解は、サービスデザイナー同士の会話か、複数のパンフレットを通じて行われます。
(1) パンフレットは利用者向けに作られているのであり、共同するサービスデザイナーのために作られているのではないため、サービスデザイナーにとっては理解しにくいかもしれません。
(2) サービス内容の全体像を理解するには、複数のパンフレットを理解しなければならないかもしれません。そのため、全体像の理解が難しくなるかもしれません。
(3) サービスデザインが複雑になると、会話を通じての理解は難しくなるかもしれません。

以下の図は、モデルとビューを分離した状況を示しています。ビューに対応するパンフレットは二つあり(たとえば簡易なものと詳細なもの)、これらはモデルに対応するサービス内容の一部を表します。
user_view_model_role3

以下の結果になります。
・理解容易性:
サービスデザインの理解は、サービスデザイナー同士の会話か、一つのモデル(サービス内容の記述)を通じて行われます。モデルは、共同するサービスデザイナーのために作られているため、理解が容易であることが考慮されています。


[1] Patterns of Enterprise Application Architecture