デザイン言語2.0 ―インタラクションの思考法』という本に、「日本料理をデザインする」という章があります。この章の執筆者は、柳原一成さんという方です。日本料理の専門家で、料理教室なども開催されている方のようです。

さて、内容は、日本料理をデザインという言葉を所々で使って解説する、という印象でした。それでも、料理の専門家がデザインという言葉をどのように使うのかは、参考になります。

この記事では、このブログで作成したデザインの枠組みを意識しながら、柳原さんの日本料理のデザインの見方を考えていきたいと思います。

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日本料理のデザイン

何のデザインなのかという視点で読んでみると、以下があることが分かりました。
・料理のデザイン
・味のデザイン
・盛りつけのデザイン
・膳組のデザイン
・作法のデザイン
・いただき方のデザイン

なお、膳組とは、国語辞書によると「日本料理で、膳に並べる料理の種類・品数を決めること」のようです。

上記の項目は、分類は少し難しいのですが、以下のように分類できるような気がしました。
(1) それ自体の質のデザイン
・味のデザイン

(2) それの見せ方のデザイン
・盛り付けのデザイン
・膳組のデザイン

(3) それのとの関わり方のデザイン
・作法のデザイン
・いただき方のデザイン

料理のデザイン、といった場合どこまで含むのかですが、それに関しては、少し本文を引用してみます。
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味のデザイン、盛り付けのデザイン

まず、「味をデザインする」とはどのようなことなのか。「味良く、食べ良く、姿良く」整えることが料理のデザインと、私は考えています。

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ここで「姿良く」がどこまで含むのかが微妙なところです。しかし、この文のタイトルが、「味のデザイン、盛り付けのデザイン」であることから、作法やいただき方は料理のデザインには含まないように思えます。

ちなみに、個人的には、「整える」という言葉が印象的でした。一般化すれば、何か(料理)の何か(味、食べやすさ、見た目)を「整えること」が「デザインすること」、であるとなります。たとえば、キャラクターをデザインする、とは、キャラクターの何かを整えることでしょうか?

次ですが、盛り付けに関しては次のことが興味深いかもしれません。
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魚でも同じです。夏から秋口がおいしいスズキを刺身にする際一キログラム半なのか、三キログラムなのかによって、切り身の厚さや幅が変わってしまいます。必要な大きさのものを頼むか、または探します。つまり、素材を選ぶところから盛り付けは始まるのです。
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つまり、盛り付けがデザインであるなら、盛り付けにおける素材選びはデザインの中の一つの行為だということです。

膳組に関しては、膳組とは何かについての解説だけに思えましたので省略します。

次に、作法のデザインについてです。これは、茶懐石の解説の中で触れられていました。なお、茶懐石とは「お茶にまつわる料理」とのことです。
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茶懐石には給仕側にも食べる側にも約束事があります。自分で勝手気ままに食べるのでなく、挨拶されてはじめて、箸を取り上げます。それから、お酒が出てから向付に手をつけるなど、さまざまな決まりごとがあります。それが茶懐石の中における「作法のデザイン」だと私は思います。やりとりの仕草や挨拶は身につけると本当に美しいもので、約束ごとはきゅうくつのように思われる向きもあるかもしれませんが、約束があるからこそ、かえって自由であるのです。
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最後に、いただき方のデザインについてです。「いただき方もデザイン」という節があり、そこでは、美しい箸づかい、ということからはじまって、以下のことが解説されていました。
・器と箸の関係
・盃は手に持って
・共猪口を手に持つ
・懐紙をつかう
・手をつかう
・器をぬぐう
・蓋のあつかい

料理とデザインの枠組み

それでは、デザインの枠組みを用いて、料理のデザインを見ていきたいと思います。

料理におけるデザインでは、以下の分類に基づくデザインを特定できそうでした。
(1) それ自体の質のデザイン
・味のデザイン

(2) それの見せ方のデザイン
・盛り付けのデザイン
・膳組のデザイン

(3) それのとの関わり方のデザイン
・作法のデザイン
・いただき方のデザイン

ここでは、簡単のため、(1)と(2)だけに着目します。

さて、残念ながらここまでで、料理自体の定義がありませんでしたので、wikipediaを参照することにします。
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料理(りょうり)とは、食品食材調味料などを組み合わせて加工を行うこと、およびそれを行ったものの総称である。
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この料理の定義では、料理の姿や見た目に関する行いは含まれていません。

さらに、柳原さんの言葉を思い出してみます。
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「味良く、食べ良く、姿良く」整えることが料理のデザインと、私は考えています。
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この言葉から分かるのは、料理のデザインには、一定の方向性、あるいは、目標があるということです。味の良し悪しがあり、食べやすいかどうかがあり、姿の良し悪しがあります。

ここでは、これら3つの良し悪しを最終的に評価するのは、食べる側であると考えます。

また、食べる側に料理を出した時点で、その料理の姿に関わる何らかのことが行われているものとして考えます。たとえば、適当なお皿に適当に盛り付けたとしても、いずれにせよ、食べる側はその料理の姿を見ることになると考えます。極端なことをいえば、お皿に盛りつけられないない料理でも、料理と見なします。

以上をふまえて、次に、以下のデザインの枠組みを使って考えていきます。
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まずは、「デザイナー」に対応するものは何でしょうか? 料理をつくる人、あるいは、料理をデザインする人が対応しそうです。「料理人」でいいのでしょうか?

次に、「ユーザー」に対応するものは何でしょうか? 「食べる側の人」のことです。一般的に何と呼ばれるのでしょうか? ここでの疑問は、「食べること」は、「利用すること」なのでしょうか? 「ユーザー」や「利用」ではない別のより一般的な表現が必要にも思えます。

次に、「モノ」に対応するものは何でしょうか? 「料理」ではないかと思います。

次に、「デザイン」に対応するものは何でしょうか? これははっきりしたことは分かりません。たとえば、「料理人」に料理のデザインを見せてほしいと頼んだ場合、どういうことになるのでしょうか?

「ユーザーの満足」には何が対応するのでしょうか? 柳原さんの言葉でいえば、三つの満足がありそうです。
・味の満足
・食べやすさの満足
・姿の満足

まとめ

デザインの枠組みを使って、日本料理のデザインがこの枠組みで説明できるかどうかを確かめました。

デザインの枠組みを使ってみて、繰り返し起こる疑問は以下のものがありそうな印象です。
(1) 「ユーザー」は「デザイナー」と同じくらいに十分に一般的なのか?
(2) 「デザイナー」に「デザイン」を見せて、と頼んだ場合、「デザイン」は常に存在するものなのか?