c96545b9.jpg世の中には多くの、酒にまつわる怪しい都市伝説がありますが、そのひとつに、「ワインは他のアルコール飲料より健康に良い」というのがあります。実際のところどうなのでしょう。米テキサス大学のCharles Holahan氏らが、J. Stud. Alcohol Drugs73:80–88, 2012)に発表した論文によると、どうもこの都市伝説、クロ(ウソ)のようです。

 

フランス人が肉や乳製品を中心とした高脂肪な食生活を送っているにも関わらず、心疾患などの生活習慣病にかかる率が低いという「フレンチパラドクス」を説明する理由として、フランス人はよくワインを飲むからだと言われた時期が90年代にありました。恐らくこの頃から、健康に良いというワインの都市伝説が生まれたのだと思われますが、すでに「フレンチパラドクス」自体が否定されている現在でも、ワインに特別な効能を期待する向きは多いようです。

 

Holahan氏らは、5565歳までの男女802人を、その飲酒習慣によって、3つのグループに分けました。その内訳は、まったく飲酒をしないグループ(345人)、ワインを主流に(飲酒量の3分の2以上)適度に(一日に12杯程度)飲むグループ(176人)、ワインはほとんど飲まない(飲酒量の3分の1以下)が、他のアルコールは適度に飲むグループ(281人)でした。そしてその後の寿命を、20年に渡り追跡調査したのです。

 

その結果、飲酒をするグループは、しないグループより有意に長生きしたのですが、ワインを主流に飲むグループと、ワインはあまり飲まないグループでは、寿命に有意な差を見出せなかったというのです。確かに当初、ワインを主流に飲むか飲まないかだけで、単純に両者を比較した場合、後者は前者より死亡率が1.85倍も高いという結果が得られたのですが、その後の解析で、事はそれほど単純ではないことがわかったのです。

 

実は、ワインをあまり飲まないグループは、より高齢で、男性の比率、健康に問題を抱える人の割合、喫煙率がすべて高く、社会経済的な地位も低いうえ、積極的な運動もしないという傾向が認められたのです。そこで、それらワインとは直接関係のない要因を差し引いたところ、ワインを主に飲むグループとワインはあまり飲まないグループの間の寿命差がなくなってしまったのです。つまり、ワインを主に飲む人が、ワインはあまり飲まない人より長生きしたのは、ワインそれ自体のせいではなかったというわけです。

 

ワイン信奉者には少し残念な結果となってしまいましたが、アルコールを適度に嗜む人は、まったく飲まない人より長生きできることは実証されたようなので、まあそれで良しとしようではありませんか?