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腰までずり落ちたぶかぶかのズボン、首周りで異彩を放つ金のネックレス、深みのない褐色の肌にタンクトップ、もう夜なのにサングラス等々言い出せばきりが ありませんが、これらに共通するのは?・・・「俺ってかっこいいだろぉ」と女子からもてる男を自認する男子に散見されるものの、かなりの数の女子からは 「ダサっ!」と一蹴される代表的なファッション・・・なんていうと怒られるかもしれませんね。ただ、このように男子が思うかっこいいと、女子が思うそれと に大きな隔たりがあるのは、何も人間だけではないようで、あの美しい孔雀の尾羽にも実はその疑いがあることが最近わかったようです。

孔雀のオスはどうしてあのような美しい、けれども同時に外敵からも見つけられやすいため一見自然淘汰に不利な羽をもつようになったのか?自然淘汰による進化論で有名なダーウィン先生もこれには大いに悩み、その結果、代表作『種の起源』から12年後の1871年に、その著書『人間の由来と性淘汰』の中で、孔雀のオスがもつあの美しい羽は、メスがより美しい羽をもつオスに惹かれ、その子孫をより多く残した結果だという説を唱えました。これは配偶者選択による性淘汰と呼ばれ、配偶者の好みという移ろいやすい基準が、自然淘汰と同様の強い選択圧を本当にもたらすのかどうかは常に議論の的でもあったようですが、今日まで広く信じられてきました。


この配偶者選択を最初に実験的に証明しようとしたのが、スウェーデン・ヨーテボリ大学動物学教授Malte Andersson氏で、1982年にコクホウジャク(Euplectes progne)のオスの長い尾羽をより長くなるように細工すると、メスと交尾できる機会が増えることを実験的に確かめ、Nature誌に報告しています。このように、特徴的な羽が配偶者の選択に有利に働くことは、他の鳥では実証されたものの、孔雀のメスが本当にオスの尾羽の美しさに魅了されているのかどうかは、孔雀に直接尋ねるわけにもいかず、長い間確かめられずにいたのです。


peahen-eye-tracker-253x300そんな中登場したのが米カリフォルニア大デービス校と米デューク大で、動物行動学の博士課程に学ぶJessica Yorzinski氏です。同氏はメスの孔雀に視線追尾装置(左写真)を取り付け、メス孔雀の視線が本当にオスの羽に釘付けになっているかどうかを調べたのです。すると、メス孔雀の視線がオスの羽に向いた頻度は全体の1/3以下、それもそのほとんどが、肝心の羽の最も美しい上部ではなく、下部の地面に近い部分だったそうです。


では、メスに見向きもされなかった美しい羽の上部は何かの役に立っているのでしょうか。Yorzinski氏は、野生の孔雀が育つ、背の高い下草の生い茂る自然環境では、孔雀のオスがもつ大きい羽は、遠くからでもメスに見つけられ易いという利点があるのではと考え、模型を作製すると案の定、遠くにいるメスほど駆け寄ってきて、羽の下部が見えていないときはより頻繁に羽の上部を見ることがわかったのです。これは、オスは確かに目立つ羽の上部でメスをおびき寄せているのだけれど、メスが本当に関心があるのは、そこではなく、羽の下部ということになります。


それでは、なぜメスはそれほどまでに羽の下部に関心をもつのでしょうか。Yorzinski氏によれば、おそらくメスは、羽の下部を見ることで、羽の対称性や広げたときの大きさをチェックしているのではとのこと。特に、その大きさはオスの性成熟度と関連することが知られているからです。男が見せたい魅力と女が見たい魅力が違うのは、ヒトも孔雀も同じなのかもしれませんね。


本研究成果は、Journal of Experimental Biology誌の最新号に掲載されています