2008年06月12日

シベリア超特急 スーパー・コレクターズ・エディション

「いやぁ映画って本当にいいものですね 」
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SIBERIAN EXPRESS SUPER COLLECTORS EDITION
監督:MIKE MIZUNO(水野晴郎)
音楽:JIM DADDY(2)、遠藤浩二(3)
出演:水野晴郎、西田和昭 他
ナレーション:油井昌由樹
1996年、2000年、2002年 日本

去る6月10日に亡くなられた映画評論家・水野晴郎が念願だった監督を務め、自ら出演もこなし、そのダメっぷり丸出しの演出ながら反戦・嫌戦というテーマを訴え、一部の映画ファンの間でカルト的人気を博して続編が作られ、ついにはスクリーンを飛び出して舞台化された、水野晴郎のライフワーク(?)とも言えるサスペンス・シリーズ。

シリーズを通じて低予算なのが丸判りのセットで敢えて往年の名画の有名シーンを真似して撮影するなど、映画評論家ならではのこだわりは一本筋が通っていました。

第1作目の音楽は、おそらくライブラリー音源から使っているのでしょうが、2作目からはオリジナル曲が用意され、低予算ながら徐々に音楽も豪華になっていきました。

3作目では劇中歌が流れるなどミュージカル的な要素も入り、音楽自体もそこそこ楽しめる内容になっています。

特に3作目の音楽を担当した遠藤浩二は日本の映像音楽界を代表するホープの一人で、様々な映画・TVシリーズの音楽を手掛けています。

サントラ盤収録曲を全体的に確認すると、スリリングなサスペンス曲および悲痛な心情曲にジャズやタンゴといった、意外にも聴き応えのある音楽が用意されていて、映画を盛り上げています。

3作目までの音楽を集めたサウンドトラックCDがリリースされており、水野晴郎氏自ら作品の音楽に対する思い入れタップリの解説文を書かれています。

映画を観た事のない人もCDを聴くだけで「シベリア超特急」が楽しめるユニークなサントラ盤です。

score_fan_1980 at 23:00|PermalinkComments(0)TrackBack(0)映画音楽 | サスペンス

2008年06月05日

13F(THIRTEENTH FLOOR)

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THE THIRTEENTH FLOOR
監督:ジョセフ・ラスナック
音楽:ハラルド・クローサー
共同作曲:トーマス・ヴァンカー
出演:クレイグ・ビアーコ、グレッチェン・モル、ヴィンセント・ドノフリオ、デニス・ヘイスバート、アーミン・ミューラー=スタール 他
1999年 アメリカ

「インデペンデンス・デイ」のローランド・エメリッヒ製作による、ヴァーチャル・リアリティを題材にしたSFサスペンス。

仮想現実のシミュレーションで1937年のロサンゼルスを再現しようとしているコンピュータ技術者が研究中に殺人事件に巻き込まれ、仮想現実の1937年の世界と現実世界の両方で事件の調べていくうちに意外な真相にたどり着くという話。

音楽はオーストリア出身の作曲家、ハラルド・クローサーが担当。

ドイツ語圏の映画音楽界で活躍した後、アメリカに渡りスタジオ・ミュージシャン活動を経て、ハリウッドでも映画音楽を手掛けるようになったそうです。

クローサーにとって、「13F」はハリウッドで初めて担当した大作映画のスコアとなりました。

本作ではオーケストラ主体のサスペンス・スコアや仮想現実の1937年のロサンゼルスで流れるスイング・ジャズのスタンダードに、スリリングなテクノ調のスコアと内容的にも盛り沢山で聴き応えのあるサントラになっています。

また、ジャズィーな響きに満ちたヒロインのテーマ曲は、なかなかの出来栄えです。

クローサーは本作のサントラでハリウッドの映画関係者に実力を認められ、「デイ・アフター・トゥモロー」や「エイリアンvs.プレデター」といった超大作映画の音楽を手掛ける様になりました。

さて、このサントラも現在は廃盤扱いで入手しづらい状況になっています。

score_fan_1980 at 22:55|PermalinkComments(0)TrackBack(0)SF | サスペンス

2008年06月03日

紅い眼鏡

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THE RED SPECTACLES
監督:押井守
音楽:川井憲次
出演:千葉繁、鷲尾真知子、田中秀幸、玄田哲章、兵藤まこ、永井一郎、天本英世、大塚康生 他
1987年 日本

押井守監督の実写第一作にして、作曲家・川井憲次の映画音楽デビューを飾った記念すべき作品。

いわゆる押井守作品における「ケルベロス・サーガ」(仮想戦後史シリーズ)の第一作目に当たり、本作の後にはコミック「犬狼伝説」や続編の映画「ケルベロス 地獄の番犬」が発表され、アニメ映画「人狼 JIN-ROH」やラジオドラマ「ケルベロス 鋼鉄の猟犬」も制作されています。

凶悪化する犯罪に対処するべく設立された警視庁特殊機動隊、通称〈ケルベロス〉。特殊強化服・プロテクトギアと重火器で武装した隊員たちの非情とも言える捜査活動に世間の非難が集まり、組織は解体の憂き目に遭うもの、一部の隊員たちは解体に抵抗して反乱を起こし、隊員の一人・都々目だけがプロテクトギアと共に国外逃亡を果たす。
そして三年後、帰国した都々目を待ち受けていたのは、悪夢の如く変貌してしまった〈街〉だった…

と、粗筋みたいな事を書きましたけど、映画の内容が主人公の都々目が体験する、終わりのない悪夢の様な出来事の繰り返しで構成されているので、ぼんくらの私には物語の全体像が書けないのです(笑)。

出演者の大半が実力派の声優陣で占められている所が大きな特徴です。

銃火器を使ったアクションは冒頭のみで、あとは白黒映像で出演者の芝居と長台詞が延々と続いていきます…

その延々と続く白黒映像の映画に鮮やかな変化を付けているのが、川井憲次による音楽です。

映画のメイン・タイトルとエンド・タイトルに流れる怪しげな高揚感をタップリ効かせたメイン・テーマ曲に含まれている全てのフレーズを残らず取り出し、アレンジを施して全体の音楽を造り、映画の隅々までに行き届かせています。

テーマ曲のフレーズの一部を変形させてマンボにするわ、重厚なサスペンス曲にさせるかと思えば、偽ラジオ体操の曲にも化けるわ、果ては清楚な感じのラブ・テーマにまで姿を変えて現れるわと、川井氏のアレンジの粋が味わえる怪しげな魅力が炸裂したサントラです。

一つのテーマ曲だけをムダ無く使いきって(決して手抜き仕事では無い)、映画全体の曲を完成させる映像音楽におけるアレンジの宝庫というか代表例だと私は思います。

score_fan_1980 at 00:33|PermalinkComments(0)TrackBack(0)SF | アクション

2008年05月31日

秘密結社 鷹の爪 THE MOVIE 〜総統は二度死ぬ〜

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EAGLE TALON THE MOVIE
脚本・監督・声の出演:FROGMAN
音楽:池頼広、manzo=萬Z(量産型)、slum、saihate
2007年 日本

flashアニメを使ったチープな作画で人気を博した深夜番組のTVアニメ『THE FROGMAN SHOW』の劇場版第一作目。

心優しい総統が率いる、世界征服を目指すビンボーなベンチャー秘密結社・鷹の爪団と、名ばかりの正義のヒーロー、デラックスファイターとの(示談交渉による)激闘を描いたギャグアニメですが、ユルい作画ながら、大半のキャラクターの声を監督のFROGMANが声色を変えて演じており、随所に芸の細かいネタ(時事風刺、監督の居住地である島根県に関するローカルなモノ)が効いてる、気楽に笑えて楽しめる作品です。

映画の方はスケールアップして、3D映像も使い、ストーリーも良く練られていて、また笑える様々な仕掛け(予算ゲージ、広告を使ったギャグ等)も用事されて見応えのある作品に仕上がっています。

音楽はmanzo=萬Z(量産型)によるTVシリーズ版のバラエティー豊かな曲が映画の中でも、かなりの頻度で使われています。

また、劇場版用に池頼広をはじめとする様々な作家陣が曲を書き下ろしていますが、劇場版単独のサントラは現時点で未発売です(劇場版第二作目の音楽とカップリング収録したサントラのリリースを希望します!)。

ブログのトップに揚げたのは、TVシリーズ「THE FROGMAM SHOW」のサントラ盤ジャケット画像です。

池氏は劇中に流れるオーケストラっぽい曲を手掛けていて、映画のスケール感を高める事に貢献しています。

manzo氏によるユルい感じがたまらない、鷹の爪団のテーマや、モロに正義のヒーロー調なデラックスファイターのテーマは一度聴いたら忘れられない魅力にあふれています。
TVシリーズのサントラも、かなりオススメです。

score_fan_1980 at 15:50|PermalinkComments(0)TrackBack(0)アニメ | コメディー

2008年05月18日

ダーク・ストリート/仮面の下の憎しみ(デッド・プレジデンツ)

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DEAD PRESIDENTS
1995年 アメリカ(劇場未公開・ビデオ)
監督・製作・原案:アルバート・ヒューズ&アレン・ヒューズ
音楽:ダニー・エルフマン
出演:ラレンツ・テイト、キース・デヴィッド、クリス・タッカー、フレディ・ロドリゲス、ローズ・ジャクソン、ジェニファー・ルイス

ベトナム帰還兵の黒人青年が、地獄のような戦場よりも悲惨な故郷の現実に耐えかねて、ついには銀行強盗に手を染めてしまう様子を通して、アメリカの病んだ姿を描いたブラック・シネマの一本。

音楽はダニー・エルフマンが担当。本作品ではエルフマン自身が打楽器類とエレキ・ギターの演奏を行ってサンプリング音源を作り上げたそうです。

これらサンプリング音源をオーケストラ・サウンド(隠し味にハモンドオルガンを加えている)とミックスさせて奇妙な味わいのスコアをエルフマンは完成させました。

公開当時発売されたサントラ盤(日本盤も原題の「デッド・プレジデンツ」のアルバム・タイトルで発売された)には黒人アーティストの歌がメインで、エルフマンのスコアはメインタイトル・テーマの一曲収録のみで終わっています。

残りの曲は翌年にリリースされた、エルフマンの映画音楽2枚組ベスト盤「ミュージック・フォー・ア・ダーケンド・シアター Vol.2」にて、メインタイトル曲を含む計5曲、時間にして延べ15分弱が収録されました。

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このアルバムのライナーノート内でエルフマン自身は本作のサンプリング音源の制作が、えらく骨の折れる仕事だったので、この制作過程は好きになれなかったと語っています。

本作品でエルフマンは彼独特の陰のあるサウンドを使って、ベトナムでの地獄のような戦場と故郷の悲惨な状況の二つを重ね合わせる事に見事成功しています。

音楽だけ聴いてもサンプリングされた、奇妙かつ陰のあるループ・サウンドが結構クセになって楽しめます。

score_fan_1980 at 00:19|PermalinkComments(0)TrackBack(0)映画音楽 | サスペンス

2008年05月15日

暴れん坊将軍

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1978年〜2004年 日本
主演:松平健
音楽:菊池俊輔

江戸幕府第8代将軍・徳川吉宗が、旗本・徳田新之助と名乗り、江戸市中に現れて、世にはびこる数々の悪を退治していく、子供からお年寄りまで愛され続けてきた、痛快娯楽時代劇シリーズ。

クライマックスの「余の顔を忘れたか」等のセリフで、吉宗と新之助の顔が一致した時、悪人どもがハッと驚くと同時に開き直り、ラストの立ち回りに突入していく、毎回おなじみの展開を待ってましたとばかりにTVの前で観ていた方も多いはず。

学校における社会科・日本史テストの穴埋め問題で、「徳川幕府第8代将軍・徳川吉宗は通称、〇〇将軍と呼ばれた」という問題を出すと、正しくは「米(こめ)将軍」と答えるべき所を誤って、「暴れん坊将軍」と答える生徒が続出したという伝説的なエピソードが残っています。

音楽は日本人なら、この人の曲はTVで必ず聴いていると断言できる、御大・菊池俊輔!

菊池氏といえば数々のTVシリーズの音楽を手掛けている事で有名で、代表作は「仮面ライダー」「Gメン'75」「キイハンター」「スクールウォーズ」「ゲッターロボ」「ドラえもん(大山のぶ代版)」「ドラゴンボール」…とタイトルを挙げたらキリがない位です。

何と言っても、吉宗が白馬に跨がって大地を駆け抜けていくオープニングのタイトルバックに流れるメインテーマと、悪人を退治していくクライマックスで流れるメインテーマをアレンジした立ち回り用の音楽が有名です。

菊池氏が生み出す音楽の魅力の一つが、日本人の心の琴線に触れる独特のメロディーラインを供えている所だと言えます。

菊池氏が手掛けたサウンドトラックの特徴は、曲が流れる場面のシチュエーションに応じて、各作品のメインテーマのメロディーラインを自由自在に変化させるアレンジを施す所でしょう。

泣きの入った悲壮な曲になったり、勇壮な燃える曲に姿を変えたりと、これが菊池氏のファンを病み付きにさせるのです。

まぁ、御託はここまでにしておいて、まずは実際に菊池氏のサントラ盤を聴いてみてください(笑)。

score_fan_1980 at 19:52|PermalinkComments(0)TrackBack(0)TVシリーズ | 時代劇

2008年05月13日

武士の一分(冨田勲×山田洋次 時代劇三部作ベストセレクション)

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2006年 日本
監督:山田洋次
原作:藤沢周平
音楽:冨田勲
音楽編集:浅梨なおこ

出演:木村拓哉、檀れい、笹野高史、小林稔侍、大地康雄、緒形拳、桃井かおり、坂東三津五郎 他

藩の毒味役を務める下級武士が貝の毒にあたって失明してしまう。しかも、最愛の妻が藩の上役と不貞の関係を強いられている事を知るや、自らの一分(いちぶん)を守るため、上役への復讐を誓う…

藤沢周平原作×山田洋次監督による時代劇三部作のラストを飾る作品である、本作品は夫婦愛を描くと同時に、盲目の剣士の復讐劇にもなっている娯楽篇。

慎ましくも愛に溢れた生活を送る夫婦役をSMAPの木村拓哉と檀れいの二人が見事好演。

山田洋次監督による上品な演出と季節感あふれる映像は、さすがの一言です。

そして音楽は「世界のトミタ」こと冨田勲が担当。シンセサイザーとオーケストラによる現代風のサウンドに時折、尺八、笙、琵琶を加えた上品かつスリリングなスコアに仕上げています。

最近のハリウッド映画の音楽に多く見られる、映画本編の大半に音楽を流すやり方ではなく、曲数をできる限り少なめにして、映画の要となるシーンだけに曲を流すという音楽演出が見事で、音楽の印象が強く残りました。

本作品のサントラは冨田氏が手掛けた、山田洋次監督時代劇三部作のスコアを集めたベスト盤の形でリリースされました(アルバム選曲は冨田氏自身)。

このサントラ盤の面白い所は実際の映画に使われた、映像に合わせて楽器の音をミックスした完成品の方ではなく、冨田氏が当初、作曲時に想定していた全ての楽器の音をミックスしたオリジナル・バージョンの方を収録してある所です。

これは、映画のダビング作業にて曲と映像を実際に合わせてみると、曲が合わないと山田洋次監督に指摘された事による物です。

そこで映像に合わせて楽器の音を一部、取り除いたり、曲の演奏時間(尺)の長さを変えるといった音楽編集作業が映画のダビング現場で行われました。

音楽編集作業を行ったのは、宮崎駿監督や押井守監督をはじめとする数々のアニメ作品で録音監督を務め、現在は邦画の実写作品で選曲や音楽編集で活躍する浅梨なおこ氏です(個人的な推測ですが、音楽編集作業は音楽制作ソフト・プロツールスを使って行われたと思います)。

音楽的には完成度が高くても、映像用の音楽としては必ずしも完成度が高いという事ではない、イコールではないという事が判る面白い例だと思います(オリジナル版と完成品、どちらの方が良いのかは曲を聴く側の好みによりますが…)。

score_fan_1980 at 11:10|PermalinkComments(0)TrackBack(0)映画音楽 | 時代劇

2008年05月12日

遊星からの物体X

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THE THING
監督:ジョン・カーペンター
出演:カート・ラッセル、ウィルフォード・ブリムリー、ドナルド・モファット、キース・デヴィッド 他
音楽:エンニオ・モリコーネ
1982年 アメリカ

南極大陸にて、10万年以上も雪の中で凍結状態だったエイリアンが復活、アメリカ南極観測隊に襲い掛かるSFホラーの傑作。

映画の原作となった、ジョン・W・キャンベルJr.が1938年に発表したSF短編「影が行く」(創元SF文庫版に収録)を読むと、映画は原作の雰囲気をかなり忠実に再現している事が判ります(原作と映画ではラストが変更されていますが)。

誰がエイリアンに寄生されたか観測隊員同士で疑心暗鬼になって探り合う時に醸し出される緊張感を活かしたプロットは見応えがあります。

何と言っても、特殊メイク担当のロブ・ボーティンが造形を手掛けた、映画の中に登場する、細胞レベルで人間と同化してしまうエイリアンの数々が凄まじいの一言に尽きます。

エイリアンに寄生された人間の頭部から脚が生えて、胴体から分離するわ、同じく寄生された人間の腹部が真っ二つに割れて、内部に生えている牙で傍にいる観測隊員の両腕を喰いちぎるわと…ショッキングな惨殺シーンの連発で、人体が崩壊して怪物化・死体化していく描写が映画本編よりも有名になりました(*_*)。

音楽はマカロニ・ウェスタンの大ファンであるジョン・カーペンター監督の熱烈なオファーを受けて、イタリアの映画音楽の巨匠エンニオ・モリコーネが登板。

モリコーネは静かで重苦しい弦楽器の音とシンセサイザーで繰り返し奏でられるパルス調のベース音を組み合わせて、どこか音の輪郭がハッキリしない、不安げな音楽を作っています。

これは人間と同化して姿をなかなか見せないエイリアンの恐怖感を出そうとモリコーネが考えたからです。

エイリアンが徐々に本性を現すに従い、ハッキリしない曲調の中にトラップを仕掛けるがの如く、突然ショッキングな音がインサートしてきて、音楽はクライマックスに向かって突き進んでいきます。

モリコーネは叙情的なメロディを書くのが得意な作曲家ですが、本作品のサントラでは叙情的な曲は一つもありません。

モリコーネは本作品において、輪郭が不明瞭で暗く重苦しいサウンドでありながら、存在感のあるスコアを見事に書き上げ、映画に終末感をもたらす事に成功しただけでなく、SFホラー映画音楽の傑作を我が物にする事が出来たのです(モリコーネは何故か本作品にて、その年のゴールデン・ラズベリー賞の作曲部門にノミネートされてしまいました)。

夜中にヘッドフォンで聴く時は気をつけた方がいいサントラです(笑)。

score_fan_1980 at 00:00|PermalinkComments(0)TrackBack(0)SF | ホラー

2008年05月11日

天地創造

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THE BIBLE
1966年 アメリカ/イタリア
監督:ジョン・ヒューストン
製作:ディノ・デ・ラウレンティス
音楽:黛 敏郎
出演:マイケル・パークス、リチャード・ハリス、フランコ・ネロ、ジョージ・C・スコット、ピーター・オトゥール 他

旧約聖書の世界をジョン・ヒューストンが映像化した一大スペクタクル巨編。

〈アダムとイブ〉〈ノアの方舟〉〈バベルの塔〉〈ソドムとゴモラ〉といった誰もが知っている、旧約聖書のエピソード7つを見事に映像化しており、ノアの方舟は実物大セットを建造して撮り上げるなど、CG映像技術がなかった時代だからこそ可能だった、巨大かつリアルなセットをフルに活かした迫力ある実写映像を観るだけでも価値のある作品です。

一般常識として旧約聖書の事を知るには、もってこいの作品だと思います(西洋文明の考え方の根幹を成すという視点から観ると「あぁ、なるほど」と頷けるシーンがありますし)。

音楽は戦後日本の現代音楽を代表する作曲家、故・黛 敏郎がハリウッド超大作映画の音楽担当として大抜擢されました。

生前の黛自身の話では、本作品の音楽は当初、ストラヴィンスキーが担当するはずだったのが、土壇場でストラヴィンスキー側のスケジュール変更が発生し、作曲を務める事が出来なくなり、黛本人に急遽、音楽の依頼が来たとの事だそうです。

黛は気をてらわずに映画の雰囲気に沿って、聴き応え充分の迫力ある洗練された響きを持った、正統派オーケストラ・スコア(一部、コーラスも含む)を見事書き上げ、映画に風格と重厚感をもたらす事に成功しています。

このスコアは高い評価を得て、黛はアカデミー作曲賞にノミネートされるという快挙を成し遂げました。

ところが日本国内では、このサウンドトラックはCD化されておらず、イタリア製の輸入盤CDでしか聴く事が出来ず、しかも既にイタリアでも製造中止になり、入手困難な状態になっています。

洗練された迫力のある響きが楽しめる本作品のような映画音楽は世界的に見ても、あまりないですし、サントラCDのリマスター復刻を期待したい所です。

score_fan_1980 at 00:15|PermalinkComments(0)TrackBack(0)映画音楽 | スペクタクル

2008年05月10日

敦煌(とんこう)

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DUN-HUANG
1988年 日本
監督:佐藤純彌
原作:井上靖
音楽:佐藤勝
出演:佐藤浩市、西田敏行、中川安奈、原田大二郎、柄本明、蜷川幸雄、渡瀬恒彦、田村高廣 他

11世紀、宋が支配する中国。新興国・西夏に向かって、シルクロードに旅立った若者が西夏での戦乱から、敦煌の文化遺産を守ろうとする姿を描いた歴史スペクタクル超大作映画。

井上靖の同名小説を製作費45億円をかけて、中国大ロケを敢行して映画化した作品ですが、欧米の歴史スペクタクル映画とは趣が異なり、異国の歴史を描いたドラマとしての味わいが強い作品です(大規模な戦闘場面を終盤に用意していますが)。

生きる目的を見出せず苦悩する一人の若者の姿を描いた壮大な青春映画としての側面もあります。

音楽は故・佐藤勝が担当。

黒澤明、山本薩夫、五社英雄、岡本喜八、山田洋次といった巨匠達の作品に次々と音楽を提供し、その生涯に手掛けた映画音楽の本数は308本。

その全ての作品において、作曲・編曲・指揮を自ら行い、さらにダビング(映像に合わせて、セリフ・効果音・音楽をバランスよくMixするプロセス)作業も全て立ち会い、最後まで一切、手を抜かなかったという高いプロ姿勢の持ち主として知られていました。

正に日本映画音楽界を代表するマエストロです。

佐藤氏の人柄と音楽について知りたい方は「佐藤勝氏・講演会記録」という素晴らしいサイトが在りますので、興味のある方は是非アクセスしてみて下さい。

また、音楽制作に参加された民族音楽プロデューサー・星川京児氏が制作当時の裏話を語った〈映画の民族音楽・「敦煌」の軍楽〉という記事もあるので、併せてどうぞ。

当初、映画の製作サイドは作品のスケールの大きさから「敦煌」の音楽をハリウッドの映画音楽の巨匠、ジョン・ウィリアムスに依頼するプランを考えていたそうですが、結局、断念せざるをえなかったという話が残されています。

佐藤勝は中国が舞台の作品でありながら、シルクロードが出てくる事も踏まえ、風景描写的なシーンを除き、中華風の旋律・楽器・奏法を使わない、映画の内容に沿ったオーソドックスな形で作曲を行っており、男性コーラスを基調とした壮大なメロディを持つテーマ曲を書き下ろしています。

全体的にスケールの大きいスペクタクル調の音楽ですが、洋画のスペクタクル作品の音楽で見かける、聴いていく内に胸やけを起こすような感じが全くない、滑らか響きに覆われた聴きやすいサントラです。

迫力あるハッキリしたメロディを持ちながら、自然にスーっと耳に入ってくる「敦煌」の馴染みやすいスコアは、でっかいサウンドと音厚感を重視している現在の映画音楽界の楽曲に染まりきった私の耳には、新鮮な響きに聴こえました。

スケールの大きな映画音楽でも聴く方(観る方)に負担のかからない音楽を作り上げた佐藤勝の心くばりというか、優しさが見えてくるようなサントラです。

こういう感じのサントラも、たまにはいいなと思い、今回のレビューを書いてみました。

唯一このサントラ盤に対する不満は、収録曲に曲名を一つも付けずに「M-1」「M-2」…という風に、音楽制作の際に付けられる業務用整理番号(ミュージック・ナンバー)しか書いてない事です。

素晴らしい楽曲に曲名を付けないなんて、いくら何でもあんまりな仕打ちですよ、これは…

もうハッキリ言って、手抜き仕事なんてレベルを越えています!(-_-#)(怒)

score_fan_1980 at 00:22|PermalinkComments(0)TrackBack(0)映画音楽 | 史劇
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