池袋新文芸坐にて、内田裕也さん追悼第二弾ということで番組まれた「水のないプール」と「コミック雑誌なんかいらない!」の2作品を鑑賞後。
私にとって今夜一番深刻なことは、いきつけの居酒屋の定休日ということ。別にその店で跋扈する若い娘たちの生き血を吸って生きてるわけじゃないんだけど、こんな夜、私のヴァイタルはとりわけか細くなり ……

<R1.9.15 池袋/夜の部>
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「宮城野」

いつもの重い戸をすべらせて入店すれば、今夜は思いのほか賑わう店内。しかし私一人滑り込むスペイスは確保されており、一番端っこに無事腰を据えることが出来た。やはりこちらの安心感は、今夜も揺らぐことはない

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先ずはお酒。こないだと同じ日本酒の冷たいの、“文楽”を。
内田裕也さんという人の全盛期を私はまったく知らないんだけど、私にとっての内田裕也さんの理解とは、ロックという音楽世界の中で何かを成した人なのか、それとも自分の空想世界の中でだけの王様だったのか、そこが良く分からない、ということ。

奇抜な言動を繰り返せば世間から注目されるということは、これはYouTubeなどでまさに現在進行中だが、要は人間というのはどれだけ奇抜であっても、そこに中身があるのかないのかに依りその評価、共感がもろに異なろうが、彼の場合は如何に ? ということが分からなくて ……

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“これウィスキィ、ほんもんだと思うけど …… 演出かは知らないけどこのまるまるの一気飲み対決、安岡力也さんはぜんぶ飲み干して、内田裕也さんが2/3くらいしかいけなかった画が非常にリアルであった”

但し、私の場合はそれが映画となるが、彼をとり巻く仲間たちとの、仕事としてであってもその関連性、単純にその画から漂う雰囲気からすると、少なくともその世界では独りよがりではなくって、人望のあった人なのだろうなぁ、ということは十分に伝わってくる


1986年 124分 日本
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「コミック雑誌なんかいらない!」

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“お好み三点盛り”

というやつを、今夜は玉子焼きと板わさは据え置いて、磯辺巻きを焼き海苔で試してみようと。
海苔について、ただそれが乗るか否かでもりそば500円、ざるそば700円というのは納得出来ない、という声を良く聞くが、私も、どちらかといえばそちら側かも知れない。とりわけおそばの山の頂点に盛られるそれがチープな業務用の、あの細く機械切りのものであったならば ……
こちらの焼き海苔は、確かに質は良いのだろうが私が“焼き海苔”のそれに期待するざっくりとした野性味、ということで言えば、それには些か品良すぎて届かないものであろうか。とは言え、且つ山葵が練りワサビであったとしても、相変わらずこの板わさと甘い玉子焼きの魅力にあっけなくねじ伏せられる私である。

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「恐縮です !」

往年の梨元勝さんの名台詞を皮肉り、それを切り口として非常識な取材を続けるキナメリレポーター(内田裕也)。最初のうちはプロデューサー(原田芳雄)からそれを評価され、何があっても俺が責任持つから遠慮なくガンガンやってくれ ! と背を押されるのだが、その行き過ぎた突撃取材はスポンサーからの顰蹙(ひんしゅく)を買ってしまい、そうなるとあっさりプロデューサーも彼を使い捨て、憐れ深夜番組の風俗体験レポーター(山本晋也監督みたいなやつね)に成り下がる。
そんな彼の逃げ場所は、得もいわれぬ幻想の中の美女、愛人(麻生祐未)との深夜の野球場でのお忍びキャッチボールだった ……

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“自家製さつま揚げ”

他の料理に比べ安価だということだけで、量が少ないはずだからお一人様にはちょうど良いだろうと短絡して注文した“自家製”を名乗るそれは、リアルな魚肉感に溢れる、というよりはつなぎの関係からか、寧ろおからに似た食感であった。
予想通りに大きさは小ぶりで、その意味ではマッチしたと言えよう。
同時にお酒をもうひとつ、とやった。

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ロス疑惑、山口組と一和会との抗争、所謂山一抗争、日航ジャンボ機墜落事故、松田聖子さん神田正輝さんとの聖輝の結婚 etc.
まさか部分部分にその渦中の当事者たち本人が登場し(三浦和義さん本人が出演、またほんとうの暴力団詰所への突撃取材、等々 !!)、まるでドキュメントを見ているような圧倒的臨場感には打ちのめされる。

「恐縮です ! 聖子さん、一言だけお願いします ! 今度生まれかわるときも、神田正輝さんと一緒になられますか ?」

―― 凄すぎるわ、内田裕也 ……

15-09-2019 019-42-24 AM
“金色/冷たいの”

いつもの“ひやこん”を。
ほんとうにちょうど、きっかりの分量しか付けられていない徳利のつゆを(ほんとうに足りないと思ったら、お願いすれば快くもらえますけど)、しかし少しばかり残してやりはじめるのは、この時点で自分を敢えて満たさない、言い換えて自分への戒め、ということに他ならず。
シンプルであることこそが蕎麦の真髄であるということを予感していながら、それでもデコラティヴに奔る自分を止められなかったことへの ……

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高齢者を金の地金を用いた悪徳商法で騙して富を得た、商事会社を名乗る会長宅、マンションの部屋の前をおしくらまんじゅうで取り囲むワイドショー記者群。
その中を、深夜番組の風俗体験レポーターから、メインストリームへの返り咲きを懸けた男が掻き分けて進む。
そこへ素性の知れぬヒットマン(役者として一番危うかった頃のビートたけし)が現れて、部屋の窓を蹴破り、ドスを振り翳して侵入していく。あっけにとられて呆然と立ちすくむ記者やキャメラマンたち。窓から興味津々群がる阿呆どもの顔顔顔、目目目を、キャメラのレンズが部屋のほうからとらまえていた。

するとその真ん中から、一拍遅れて狂った男が突っ込んでくるではないか !

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印象的だったのは、愛人役の麻生祐未さんのほんとうにナチュラルな美しさかな ……
ただ歩くだけで、ブラウスの中にあっても手にとるように見てとれる、その規則正しく揺れるその二つの豊満な乳房の運動を、明らかに意図的ながら、且つべらぼうにナチュラルに魅せるというこの狡猾さ ! その計算し尽されたダンピングを映像に収めた監督の力量には舌を巻く。
内田裕也さんの演技は、これまでに鑑賞した数作とともに確かにハテナマークを引き摺るんだけど(笑)、こういった作風には逆にそれがマッチし、その臨場感が極限まで高まったことに大きく寄与したと思う。

会長の部屋のドアが開き、血まみれのヒットマンが警察呼べと叫びながら出てきた。こいつ殺したから、逮捕しろよと。
そして“一拍遅れて入っていった男が一拍遅れて”、やはり血まみれとなって出てくる。
中で何が行われたのかと詰め寄る記者たち。男は答えない。答えない男に、ヒーロー気どりかよ ! との罵声が降りかかる。
この当時の芸能レポーターやゲリラ記者たちの横暴ぶりには当時から批判があったと思うし、そして彼らにも、それはほんのかすかなものかも知れないが、一縷の悲哀というものがあったと思う。

ともあれ、それらをこれほどまでにリアルに映像化して世に問うたということは、当時の時代背景がまだそれをぎりぎり許したかも知れないにせよ、大したものだとリスペクトせずにはいられない

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腹を刺されながら、大勢の記者たちからマイクを突き付けられて罵られる男。
もう心底嫌気がさしたか、しかし崩壊した心の中からぎりぎり壊れずに残っていたロック魂を一欠けら拾い上げ、ひとこと絞り出した ……

「I Can't Speak Fucking Japanese」

―― 私もただひとことで本作を表現させていただくとするならば、痛快 !

Fine