腹黒舞子さんとの京生活 / 櫁屋涼 ミツヤリョウ
竹書房『月刊まんがくらぶ』(2011年12月号~連載中)
現1巻刊行

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【レビュー】
大学生日常コメディ / 和風・京都文化
 
京町家に一人で暮らしているコテコテの京都人・左京 舞子の家に、大学進学を機に
初めて京都にやってきた、直球元気娘の南 恵が居候することに。
和敬静寂・京文化の申し子のような舞子さんと、自由奔放で素直な恵が、お互いの性格や
文化の違いに戸惑いながらも一緒に暮らしていく中で打ち解けていく、のんびり日常コメディ。

タイトルでもろに”腹黒舞子さん”と名付けられていますが、舞子さんの『腹黒』は、
いわゆるテンプレ的京都人のイメージに対する愛称のようなもので、本当に性格が悪いわけではありません。

「ぶぶづけいかがどすか?(帰れ)」に代表されるような、奥ゆかしく小洒落た表現を、
敢えて”笑顔で遠まわしにひどいことを言う=裏がある”と曲解した結果、
京都人=腹黒、というイメージが定着してしまったのでしょう。 

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しきたりを重んじる舞子さんにとって、そんなものうっちゃってガツガツ距離を詰めてきて思ったことを言う恵は、
ちょっと理解しがたいけれど何処か羨ましかったりして。

「友達ってな どのタイミングでなれるもんなん?」
「そんなの 一緒にお茶飲んだらもう友達だよ」

深く考えすぎちゃうタイプの「どこから友達?」にシンプルに答えを出すというやりとり、
様々な漫画で見られるわりとありがちな会話ですが、二人のこの会話に至るまでの
文化・性格・考え方・言葉のすれ違い、その大元の理由の描写もあり、感じ入ってしまいました。

奥ゆかしさの美徳と、素直さの美徳、どっちも違ってどっちもいい。
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舞子さんかわええなあ。

「和風」「神様・神社・妖怪」「日本文化」というワードに心躍る私にとって、京都ってのは
まさにそれらの結晶体というか御本尊というか、実際に訪れた事は数回しかありませんが
憧れの地みたいなもんでして。
読みながら京生活に思いを馳せられる最高の雰囲気漫画です。
作者が思い入れある土地を舞台に描く日常ものって、本当にその土地の魅力が紙面から
溢れ出て来て、行った事有る無し・滞在期間の長短に関わらずその土地を好きにさせる力が
あると思います。

「ばらかもん」で離島に憧れ、「ハヤチネ」で岩手・大迫の魅力を知り、
「めくりめくる」で倉敷が大好きになり、「たまゆら」で竹原に行きたくなり、
「かみちゅ」で尾道に夢を抱くのと同じ感覚を、この作品にも感じます。
『腹黒舞子さんとの京生活』は、”京生活”漫画の名に恥じない素晴らしい作品だと思います。

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舞子さんかわええなあ。

舞子さんのかわいさにばかり目が行きがちですが、いろいろと京文化や京都の観光名所、
京ことばの解説など小ネタも満載で、漫画持参で京都に小旅行に出かけたくなります。
京漫画として『わさんぼん』『腹黒舞子さんとの京生活』は抑えておきたいところ。

系統としては、
『わさんぼん』(佐藤両々 / 芳文社)
めくりめくる』(拓 / ワニブックス) 
『ハヤチネ!』(福盛田藍子 / スクエアエニックス)
『ばらかもん』(ヨシノサツキ / スクエアエニックス) 
ハルノカミカゼ』 (ichinomi / 一迅社)
『たまゆら』 (原作:佐藤順一 漫画:momo)
『かみちゅ』(原作:ベサメムーチョ 漫画:鳴子ハナハル)
あたり好きな人向け。
特に『わさんぼん』好きならまず外しません。

聖地巡礼という名の普通の京都旅行、行きたいなあ。