ひつまん。

2015年08月

水惑星年代記 月刊サチサチ / 大石まさる  オオイシー

 少年画報社『ヤングキングアワーズ』(不定期読切等)
 全1巻 ※ナンバリング:『水惑星年代記』7巻目相当

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【レビュー】
放浪記 /  日常・ノスタルジー  / 短編連作

本作は大石まさるのSF大河巨編『水惑星年代記』シリーズの外伝的立ち位置にあたる単行本です。
外伝とはいっても本編との直接的な関係は無く、1巻で独立しており巻数が振られているわけでもないので、
この単巻のみの購入でも一切問題はありません。


主人公は、サチコさん。20代前半で、自由真っ盛りなお年頃。
このたび、気ままな放浪の旅に出ることを決意しました。
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 何故、旅なのか?何の旅なのか?何処へ何しに行くのか?
そんなことはサチコさんにはどーでも良いのです。

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幸子さんは
旅をしています
幸せを探す旅です
大ざっぱにいえば
そーゆー事です
みんなそうです
 

最初のページに入るナレーション、この6行にこの『月刊サチサチ』という作品の
雰囲気というか、おおらかさというか、そういったものが集約されています。

本作はすべて、サチコさんの放浪の旅の1日を切り取った、
1話4ページの短編で構成されています。

使われなくなった廃バス亭に住み着いたり、川をカヌーで下りながら寝泊りしたり、
時に自然に囲まれ、時に人に囲まれ、幸子さんは幸せを噛み締めて生きています。

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先日ご紹介した芦奈野ひとし『コトノバドライブ』もそうでしたが、 
トーンをほとんど使わず、ベタと線で陰影や模様が描かれています。
コマの中が一枚の絵として完成していて、もちろん僕の好みもあるのでしょうが
牧歌的というかのんびりした雰囲気にはこういった手描きの柔らかい絵柄のほうが
合致しているように感じられます。
↑ のページを見て、「画力が高い」という感想を抱く人は感性が近いのかなあと。
川の表現、木の表現、それぞれの陰影や光の照り方をすべてフリーハンドの線で描けるって凄いと思います。

絵の雰囲気に違わず非効率なような優雅なような、自由で気ままなサチコさんの『幸せ』をおすそ分けして貰える、
非常に心地の良い作品です。

各話4ページ目の最後は「幸子さんは幸せでした」で〆られるわけですが、
いろんな〆の「幸せ」の中でも最も自分にとって沁みた「幸せ」は、
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ここでした。

いろんな「幸せ」があるので、読む人によって心に沁みる話は違うでしょうが、
なんとなくいいなぁ~とかあるある、とか思える”この漫画を読んでる時間”が過ごせて、
僕としては幸せな気分でした。



僕もこの作品を読むと全てを放り出して放浪したくなるのですが、
現状としてはそういうわけにもいかないので、
せめて心をサチコさんに乗せて作品の中で旅をしようと思います。 


自由気まま・マイペースに幸せなこの作品の雰囲気は、
そっくりそのまま大石まさるの次回作『おいでませり』の主人公・せりさんに
継承されています。
『月刊サチサチ』が気に入ったなら『おいでませり』も一緒にどうぞ。


系統としては、
『コトノバドライブ』(芦奈野ひとし / 講談社) 
『ヨコハマ買い出し紀行』 (同上)
『カブのイサキ』 (同上) 
『すみっこの空さん』(たなかのか / マッグガーデン)
『ちろり』(小山愛子 / 小学館) 
『よつばと!』(あずまきよひこ / アスキー・メディアワークス)
あたり好きな人にオススメです。 


【追伸】
去年の2月ごろからのんびり気ままにレビューを書いたり書かなかったりしてきましたが、
先日当ブログの来場者数が1万人を越えました。
当初は内輪の友人向けかなー くらいにしか思ってませんでしたが、
どうやらいろんな方々に見ていただけてるようで嬉しいやら恥ずかしいやら。
時に作者様ご本人様からツイッターなどでお言葉をいただいたりして恐縮の極みです。

兎に角こんな具合の拙文・不定期更新で申し訳ありませんが、いつもいつもありがとうございます。
なにとぞ引き続きよろしくお願い致します。

ミソニノミコト / PAPA  パパ
芳文社『まんがタイムきららミラク』(2016年10月号―連載中) 
既刊1巻

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【レビュー】
ファンタジー / 日常コメディ・ギャグ / 神道・神様

高校3年生に進級し、大学受験の天王山の夏休みを迎えた女子高生・塚原瑞穂。
彼女の祖母は信心深く、毎日のように神棚に瑞穂の受験の成功を祈願してくれている。

その甲斐あってか、ある日突然神棚から神様が現れた。

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現れたのは鯖の味噌煮を司る、サバノミソニノミコトと名乗る神。
曰く、祖母の敬虔な姿を見て瑞穂の受験を手助けに来たというが・・・・

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どうやら、わりとポンコツであった。 いや鯖の味噌煮いいとは思うけど。

ともあれ半ば押しかけ女房ならぬ押しかけ神様として瑞穂の家に居座ることになった鯖味噌煮命、
略してミソニとの共同生活を描くゆるやかドタバタファンタジーコメディ。

料理以外はわりとポンコツ、ちょっとワガママで気まぐれなミソニと
マジメで面倒見がよくわりと容赦ないツッコミ型の主人公・瑞穂の組み合わせが
まるで鯖と味噌のようにマッチしていて絶妙な味を醸し出しています。

基本的にいわゆるユルユル日常コメディですが、神様ものの漫画の多分に漏れず
随所に神道知識や小ネタを挟んできたり解説を入れたりしてくれるので、
神様だとか神道だとか古事記だとかそういう類が好きな人はより楽しめる内容です。
もちろん知らなくても十分楽しめるとは思いますが、僕はそういう系統だいすきなので。
 
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神話なんてものは大体お下品ですが、その中でもオオゲツヒメの逸話なんかは諸外国と比べても
変態性において一歩先を行っていると思います。

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 まんがでわかる本地垂迹思想 (ギャグマンガです)
別段解説がくどいわけではなく、基本的には神様という名のボケ要員と友人という名のボケ要員と
主人公という名のツッコミ要員が織り成すコメディなのであしからず。

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爆笑するような作品ではないですが、のんびりなんとなく読んでクスッと来る良作です。

総括すると、
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梁居風路ちゃんが僕のビジュアル的好みを100%反映していてかわいいです。


系統としては、

神性存在・超常現象系との同居・共生ものとして
『2KZ』(長田佳奈 / ぶんか社) 
『うにうにうにうに』(青田めい / 芳文社)
『高尾の天狗と脱・ハイヒール』(氷堂リョージ / 竹書房)
『百花のしるし』(カネコマサル / アスキー・メディアワークス)
ハルノカミカゼ』(ichinomi / 一迅社)
『ぎんぎつね』(落合さより / 集英社)
『てるてる天神通り』(児玉樹 / 角川書店)

辺りが非常に近く、ここらへん好きなら特にオススメです。
ほか和風神様系のんびりコメディの

『くまみこ』(吉元ますめ / メディアファクトリー)
『チロリン堂の夏休み』(オオカミうお / 講談社)
『ねこむすめ道草日記』(いけ / 徳間書店) 
『しくしくしくし』 (るいたまち / 角川書店)

とか好きな人とも相性が良さそうです。 

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