タビと道づれ / たなかのか
 マッグガーデン『月刊コミックブレイド』(2006年9月号-2010年4月号)
全6巻・完結済 

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【レビュー】
ファンタジー・ジュブナイル / ミステリー・サスペンス / ヒューマンドラマ・感動

(最近、”期待の新作”ばかり取り上げていたので、たまには完結済みの傑作を。)


6巻完結のファンタジー・ジュブナイル。
なんというか、すごく綺麗な作品です。
綺麗事をまっすぐ言う綺麗さと、人間のエゴ・醜さ・弱さをまっすぐ描く綺麗さと、
暗い展開や心を折りにくる展開・描写もありつつ、それでも大丈夫。と立ち上がるようなお話です。
子供に読ませたい童話やおとぎ話みたいな雰囲気と、オトナ向けのビターな重さを両立した作品。

あらすじ。

主人公・タビは、あるきっかけで学校をサボり、5年前まで住んでいた街にやってくる。
そこに居るであろう大切な人、「航ちゃん」に会いに。
見慣れた懐かしい街、変わらない道路。
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しかし、駅に着くなり妙な男子と警官に追い掛け回されるタビ。
「どうやってこの街に入ってこれた!?」
「この街はおかしいんだ」
ただならぬ様子に逃げ出すタビだが、通ろうとした道が突如崩れ落ちてしまう。

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男子いわく、この町の道は”人を食う”という。
通れない道、入口に戻るトンネル、決して辿り着かない向こう岸。 
そして、路のほかにも閉ざされたものがひとつ。
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”今日”という日を繰り返す、脱出不可能な街に閉じ込められたタビは、
ユキタと名乗る男子の「この街を元に戻す!」という願いに協力するため、
そして大切な「航ちゃん」に会うために街の事を調べ始める。

そんなタビの掌には、奇妙な紋様が刻まれていた。
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その「テガタ」は、通れない路を通るための証、願いを叶える流れ星の欠片。

きっとこの街が閉ざされたのは、誰かの願い。それは誰、そして何故?




全6巻でボリューミーかつスピーディな展開、2周や3周読んだくらいじゃ気付けないほど
巧妙に張り巡らされた伏線、交差する登場人物の思惑と湧き出る謎。

先を読ませない、しかし読み返すと納得するしかないという絶妙な伏線&回収のバランスが凄まじいです。

レビューを書く時は印象的な決めゴマを抽出するのですが、この作品の大ゴマは例外無く
”伏線の完璧な回収” あるいは”予想を大きく裏切る急展開”なので、非常に選定が難しいです。
内容も具体的に書くと初見の驚きと感嘆を損ないそうで・・・。

読んだことない人は絶対に一読すべきだと思います。一読して嫌いじゃないって思ったら
何度も何度も読み直してみてください。何気ない会話の一コマやキャラの表情ひとつ取っても
「ああ、そういうことだったのか」ってなることばかりです。

マッグガーデン特有の優しい繊細なタッチと、綺麗な(恥ずかしい)セリフ回しにつられてほんわか系と思うなかれ。
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劣等感や挫折、逆恨みに自己嫌悪。読んでるこっちの心が痛くなるような描写がもりだくさんです。
でも、その痛みは人生にはつきもので、どうにか向き合っていかなきゃいけない。
弱い人間たちが、弱いなりにもがき苦しみ逃げまわりのたうち回りながら生きていかなきゃいけない。
ある意味で救いがないような、でも救われているような。

哀しい話や展開ではよくボロボロ泣く僕ですが、優しい話で泣いたのは、家中の本棚を見回しても
この作品と「バック トゥー★ザ・ヒーロー」くらいしか見当たらないです。

この作品から綺麗な部分と優しい部分だけ抜き取ったのが現在連載中の次作『すみっこの空さん』なわけですが、
僕個人としてはドロドロと爽やかのバランスが取れている作品が好きなので、『タビと道づれ』を推します。

絵の系統は
『ARIA』(マッグガーデン / 天野こずえ)
『ひとりぼっちの地球侵略』(小川麻衣子 / 小学館)
『現代魔女図鑑』(伊咲ウタ / 一迅社)
に近いかなあ。

SFファンタジージュブナイルとしては
『バックトゥー★ザ ヒーロー』(鬼灯 / 徳間書店)
『ミガワリメーカー』(恩田澄子 / 講談社)
『まじめな時間』(清家雪子 / 講談社)
『空想郵便局』(朝陽昇 / マッグガーデン)
『四月八日のまえがきに』(松井信介 / 小学館)
『流寓の姉弟』(須藤祐実 / 小学館)
あたりにも共通の雰囲気を見いだせるかと。

心にズシンとくる重さ・ほろ苦さは
『聲の形』(大今良時 / 講談社)
『ぼくらのよあけ』(今井哲也 / 講談社)
などと近いものがあります。
特に『ぼくらのよあけ』は好きな人が9割方かぶるだろうってくらい近い系統に思えます。
ほか新海誠のアニメーションとか好きな人はハマるんじゃないでしょうか。