鬼さん、どちら / 有永イネ アリナガー
小学館『月刊IKKI』(2014年7月号ー11月号)
全1巻

005


 【レビュー】
学生・日常 / ビター・ファンタジー / シリアス / 短編連作

三千人に一人程度、頭部に”角”状の突起がついた、「鬼」のいる日常。
差別や迫害を避けるため、彼らは「先天性頭部突起症」という症名を与えられ、
「鬼」という呼称や、「鬼ヶ島」「桃太郎」などのおとぎ話も規制対象となった。 
 002

保護され支援され、あるいは時に哀れまれ蔑まれ、とかく異分子扱いされる「先天性頭部突起症」。
彼らの葛藤と苦悩を通して、人間の持つ強さと弱さを描く、短編連作のファンタジーオムニバス。

第一篇は、とある少女と、その同級生の「鬼」の二人を軸に始まります。
「鬼」であるがゆえに周囲に気を遣われ孤立している少女・崎みちる。
「鬼」は身体が弱いという偏見から、ゴミ捨てのくじびきにも参加せず体育も常に見学だけ。
同級生・相模ゆいこは、崎に対する特別扱いが納得いかず、本音を尋ねてみるが・・・

008

 「あちら」と「こちら」、二人の女子高生の悩みと交流を描いた第一話。
この一話だけで買って良かったと確信できるくらいには惹き込まれました。

全5編の短編連作形式で、「先天性頭部突起症」の人々を通してこの作品は様々な問いかけをしてきます。
「個性」って何ですか、「区別」と「差別」はどう違うんですか、強いとか弱いとかってなんですか。


007

なんで頭に角があるかないかで苦しまなきゃいけないんですか。
角がなければ普通の人間なんですか。

鬼として異端扱いを受けてきた崎が、 他の”鬼”や”普通の人”、あるいは鬼じゃないけど普通じゃない人たちと
関わる中で、自分の角をどう捉え、どう答えを出すのか。

004

最終話はまたはじめの二人にスポットが当たります。
ラスト十ページの展開は、なんというか胸にストンと落ちてくるような不思議な感覚でした。 


「角」は現実にはありえない、わかりやすい視覚的シンボルですが、
このテーマは身近の様々な物事に置き換えて考えさせられます。

久々に、人生観を変えられそうなパワーのある作品に出会ったなという感想です。

綺麗でちょっとほろ苦くて、でも優しくて安心するファンタジーものということで、
タビと道づれ』(たなかのか / マッグガーデン)
『まじめな時間』(清家雪子 / 講談社)
『イヴの時間』(原作・吉浦康裕 画・太田優姫 / スクエアエニックス)
『空想郵便局』(朝陽昇 / マッグガーデン)
『ミガワリメーカー』(恩田澄子 / 講談社)
『トゥインクル・キャンディ』(雲之助 / 祥伝社)
現代魔女図鑑』(伊咲ウタ / 一迅社) 
バックトゥー ザ★ヒーロー』(鬼灯 / 徳間書店)
『夜さん』(佐藤ミズ / 徳間書店)
あたり好きな人に特にオススメしたい逸品です