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Mary Poppins, She Wrote: The Life of P. L. Travers 
 

2013年に公開された「Saving Mr. Banks(ディズニーの約束)」という映画があり、Mary Poppinsの映画化に際したエピソードを題材にしたものだったので、楽しみにしていたのだけれど、Emma Thompsonに期待したほど、全体のストーリーは面白い感じがしなかったなあ…というのが気になっていて(実際にはけっこう好意的な意見が多いのですね。もう一度、映画も見てみたほうがいいのかな。なんかしっとりしすぎのラストが嫌だったなー。)、、、、

その納得いかない感から、ずっと前に映画の話題にのってペーパーブック化された元ネタの本「Mary Poppins, She Wrote: The Life of P. L. Travers」を読んでみました。いまのところ和訳本はないみたい。いつものごとく…理解度は信用ならないんけど、映画化のくだりに関しては、一部映画の中ではあまり触れられていないポイントがあると思った。それが今回のタイトルでして。

  • 映画のファンのみんなの言うように、映画にもあるように、パメラ(著者)が映画の作り方に大反対したのは確か。
  • 映画の中での創作バトルは楽しく描かれていると思う
  • 映画では、ハラハラしながらのプレミアを見たあとに(自分はきっと呼ばれないと思っていたのは事実らしく、勝手に飛行機乗ってLAに行ったらしい)、どれだけ著者がガッカリしたのかは描かれてない。
  • 脚色で一番不満だったのは、メリー・ポピンズは恋愛しない!煙突掃除のバートと恋仲になった設定は絶対ダメと言ってたらしい。うむ。
  • Mr.Banksの極端な設定にもご不満が。後日インタビューで語ったところによると「バンクス氏は、わたしがとても愛しているキャラクターなのに、ハリウッドはあんな怪物にしたててしまって」とのこと。
  • ちなみに、ディズニーが発掘してきたジュリー・アンドリュースのことは、演技も歌もきいたことなかったけれど、会った瞬間に好きになったらしいです。
  • パメラはお金ももらっているしディズニーとの契約だから、公開時のパブでも文句は言えない、、、ので沈黙を守り、数年後にようやっと文句を言い始めた。
  • とりわけ傷ついたのは、内容が変えられているとはいえ、「ディズニーのメリー・ポピンズ」という題名だったとか。元本だとプレミア上映中もembarassment に泣いたとあり、「そして、自分のクレジットのあまりの名前の小ささにショックを受けた」とあります(苦笑)
  • 続編の話もあったけれど、パメラとの交渉はディズニーが直接行ったこともあったり、困難だったうえ 、ディスニーががんと判ったので2の契約の話は出ず、ディズニーも数年後に死んだ。
  • 著者は、映画の苦い思い出があったので、ブロードウェイミュージカルの話が来たときは盛り上がった上に数年交渉にかかり、その上で五月蠅く指示をしつづけたのだけれど、結局、プロデューサーは「映画で使った曲が使えないと、絶対ブレイクしない」という壁にぶちあたり、ディズニーは当然、ディズニーがらみでないビジネスに曲を提供しないということで、お話はおジャンになったのだとか。
アナ雪の年に公開されたこのディズニー映画はあまり話題にならなかったようですが、Mary Poppinsを演じたジュリー・アンドリュースも、結局翌年のSound of Musicのほうが代表作になり、この年のオスカーは、コックニーを矯正されるオードリー・ヘップバーンが唄を全部クチパクしたミュージカル映画My Fair LadyのほうにBest Pictureが獲られるという不運もあったとか(Best Actressはジュリー・アンドリュース)。

まあ、映画に対するパメラの当時の絶望感からしたら、短絡的にアルコール依存症の父の死と母の自殺未遂の子供時代という悲話に脚色された映画が、またしてもディズニーによって作られたともし知ったら、ビジュヌ神かなにかの生まれ変わりになってハリウッドを火の海にしたいくらい、著者、今度も怒ってるんじゃないの?というのがわたしの感想です。策略者のディズニーが死んでいてこうなんだから、どういう策略でストーリー考えたんだろうなあ…。Mr.Banksさんは最後幸せになったんだから、それでいいじゃないか、じつはうれしかったんじゃないの?といういい訳でもあるのかな?


なお、映画の権利契約は、契約時の即金100,000ドルと、レベニューシェアとして上映収益(からフィルム配給経費や宣伝費などが引かれたもの)の5%、そして実費経費など1000ポンドだったそうです。これで既刊の4冊のもろもろの映画やキャラクター販売やらの権利を渡したそうな。契約金も大きいけれど、ウェブサイトには1965年もっとも稼いだ映画で、税引後収益285,00,000ドルとのこと。単純計算の5%は1,425,000ドル、もちろんこの計算は正確じゃないけれど契約金とは1桁上、、、アカデミー賞で大ヒット、そのあとグッズ、各国上映、ビデオ、DVD…(売上は最終的に7500万ドルを超えたそうで)となるのだからあとは予想がつきますよね。

性格の問題か、自分のお手伝いさんの支払いができないのでは、と最後まで自分の収入を気にしたりしたらしいですが(経済的に自立した女性として見習いたい)、1996年に96歳になるなった最後まで年をサバをよんでたらしい彼女の残した遺産は2,044,078ポンドだったそう。1ポンド=160円とすると軽く3億円を超えるくらい?ご立派です。(見習うレベルを超えています…)

すっかり印税の話が長くなりましたら、さらに付け加えるとすると、Mary Poppinsのイラスト問題。書籍のイラストレーションを手がけたメリー・シェパードは一切ディズニーの契約に絡んでいなくて、ディズニーキャラクターはオリジナル(C)のようです。キャラクター権……。それで後から本を出すときにだいぶんシェパードはごねたそうですが(そりゃそうだ!)、結局最後の本までイラスト=原作者のタッグは健在でした。(もともとそんなに仲がよいわけでもなく、本当は彼女のお父さんに描いてほしかったけれど忙しそうだったため、新人の娘のほうに頼んだ…というところからだからもったのかもしれない。近しい女性とはだいたいけんか別れか疎遠になってしまっている)

しかも、そのお父さんのイラストレーターのE.H.Shepardは、あの、くまのプーさんのイラストレーター! パメラは不思議の国のアリスもわりと嫌いだけれど、くまのプーさんと「一緒にしないで!」というくらい並べられるのを毛嫌いしていたそうだけれど、イラストの恨みもあったのかしら……

さて、この伝記の中ではディズニーの話はほんの8%くらいで、そのほかの話もとても面白いです。主にあこがれの男性を求め続けつつもあまり良い目にあっていないスピリチャルウーマンとしての面とレズビアンかいなかという話のボリュームが多いけれど…^^;メリー・ポピンズファンでなくても、20世紀初期に生まれた女性がライターから作家になり一生独身で(息子は養子)生きた、ミステリアスで波瀾万丈な人生を読めるというてんで、大変面白いのでおすすめです。