現在もっとも大きなEPUBの配信元の1つ、アップルの書店(および教材配信)アプリ、「iBooks」ではまだEPUB 2(+拡張)が使われていますが、EPUB 3とEPUB 2の違いやメリットについて、あらためて書いてみたいと思います。

そもそも、EPUBとは
EPUBとは「Electronic PUBlication」の略で、電子書籍の規格の1つ。数千の出版社、ソフトウェア・ハードウェア会社、大学などが参加するIDPFという団体で策定が進められており、かつ、オープンな規格であることから将来も永続的に読書環境が補償できる有力フォーマットであると考えられています。

EPUBのメリットはコンテンツの永続性です。
電子書籍の規格が独自のフォーマットで、メーカーによるクローズドな規格の場合は、開発元が倒産したり、ソフトや端末を生産中止したらメンテナンスができなくなって「あ、ごめんこれまで買ってもらった本は全部読めなくなりました」ということになってしまう。またハードウェアが生産中止になったら、専用のデバイス、買った電子書籍すべてが使えなくなってしまう。もしやDRMが無く、親切な開発者が他に乗り換えるコンバーターソフトを作ってくれたとしても、独自拡張部分は捨てないとならない…なんていうことにもなるでしょう。

EPUBの場合は、技術者だけでなく、出版社などの電子書籍をリリースする側とデバイスやリーダーソフトを開発する側で意見を出し合い、「こういう機能の搭載をマストにして、こういう機能はオプションとしましょう」といったことを決めています。統一規格の上で複数のリーダーソフトが作られているし、EPUB 3についてはコンテンツの制作は「いま進行中のWeb標準の仕様に揃える」ことも決まっているから、コンテンツは基本的にウェブページと同じデータ。最悪ブラウザがあれば読めることが補償されるわけだ。EPUBを利用することで、開発者もウェブの知識を活かすことができるし、また、作者(読者)は発表した(購入した)電子書籍がある日以降まったく読めなくなってしまうというリスクを下げることができます。


EPUB 2はどんなもの?
現在出回っているEPUBは、EPUB 2.01がほとんどです。EPUB 2はXHML1.1(+CSS)で書いたコンテンツにEPUBの電子書籍構造を施すデータを加えてパッケージしたものですが、欧文の小説などペーパーバックみたいなレイアウトであれば、それで十分に用は足りるからです。
EPUB 2では段組みや縦組み、禁則や両端揃えなどは基本的にできません。また、複数画像の複雑なレイアウトも、リーディングシステム(ハードウェア、およびPCやスマートフォンに搭載するソフトウェア)などが様々であることが予想されるため、あまり想定されていません。
PC、MaciOSAndroid向けに、リーディングソフトウェアも複数存在します。

※iPad用にオーサリングされたEPUBは例外的に回り込みや段組みなどを実現している場合があります。iBooksでは、固定レイアウトやフォント指定を可能にする独自仕様を用意しており、それらを使うことで、仕様範囲外のデザインも可能になっています。

また、いまいま電子書籍(やEPUB)を「自分で作る」としたら、Sigilといったソフトや自力でコーディングして作るという方法以外にも、「パブー」(http://p.booklog.jp/ )で自動変換するとか、「BCCKS」(http://bccks.jp/)でつくるといった選択肢もあります。メルマガをEPUBに変換する「夜間飛行」(yakan-hiko.com/)なんかもありますよね。


EPUB 3にする最大のメリットは?

EPUB 3はEPUB 2とどこが違うか? EPUB 3ではXHTMLベースのHTML5とCSS3でコンテンツを書くことになりました。よりセマンティックなコーディングが可能になって、装飾面の表現も豊かになります。また目次もHTML5で書くなど、電子書籍として束ねるための記述方法も変更されました。
わたしたちにとって一番大きいのは、日本語組み版機能が強化されていることです。縦組み、段組み、行末の揃え、禁則、ルビなどがサポートされます。これらの一部はCSS3やHTML5でサポートされることが決まっていたかもしれませんが、実際にウェブページはずっと縦組みの表記方法が決まっていませんでした。一方で、日本の電子書籍はごく初期から縦組みを(とくに文芸向けなどに)導入しており、そのリーディング環境に世界向けの仕様を使ってでも対応できるようになった!ということは、とても大きな進歩だと思います(ガラパゴスじゃない環境で縦組みの電子書籍も作れる! というわけです)。
 
そのほかにも、CSS3の一部やJSによる多様なレイアウトが可能です。またメディアクエリなどを用いてリーディングシステムのウィンドウサイズなどによってレイアウトを変えることも可能です。デバイスに依存しない(複数のバージョン・開発を必要としない)電子書籍を作成できるというメリットが得られます。

とはいえ、CSS3のすべてはサポートしていません。リーディングシステム側も、JavaScriptや動画もサポートするとなるとブラウザを作るのとほぼ同じ労力が求められるために、マルチメディアがバリバリ使えるソフトやデバイスは、今後も限られてしまうかもしれません。たとえばiPadやAndroidといった端末で、主要アプリが現れる可能性があるでしょう。

そういう意味では、見た目の新鮮さや動画などを盛り込むハイレベル電子雑誌を作るには、今後もEPUBではなく、独自のウェブマガジン開発やアプリ開発といった手段がとられるかもしれません。


EPUB 3の普及はいつごろ?

EPUB 3のデータは、すでに作られてもいますが、普及してくるのは、まず、正式にEPUB 3に対応したリーディングシステムが登場してからでしょう。AdobeのDigital Editionsは2012年のQ1にリリースと言われています。すでに一部の端末には、Digital Editions 2と同じレンダリング機能をのせたSDKが搭載されているのだとか。

アップルもiPad 3発表間近との噂も出ており、新バージョンのiBooksに期待したいところ(このあいだiBooks 2になってしまったので、すぐにもEPUB 3正式対応するのかどうか、若干微妙な気がしますが…。まだ日本でのiBookstoreもスタートも始まっていませんし) 。

PC用のリーダーについては、Google Chromeのプラグインとして使える「Readium」が先日リリースされて注目されています。

またアクセスは商用利用向けでリーダーを発表済みで、完成度は高いと言われていますから、そちらを利用するベンダーが現れることにも期待したいです。

個人的には、出荷台数の多いiPhoneで利用できるよ、またAndroidならば使いやすい日本語インターフェースのソフトがあるよ、という状態がスタート地点かな・・と思います。AdobeのDigital Editionsはメディアクエリやタップによる画像の拡大、動画再生などはできない可能性が高い(ベータではできません)ところがちょっと残念ですが、日本語の処理能力の美しさにはいまから期待しています。

なお、基本さえわかれば、EPUB 3のデータは手書きやDreamweaverなどのコーディングツールなどを使って作成することができます(EPUB作成支援ツールのSigilは現在はEPUB 3未対応なのと、ソースを一部書き換えるなどのクセがあります、ただし、EPUB 2とEPUB 3で、コンテンツの一覧を読み込むspineタグなどは変わってないので、現在でも部分的にデータ制作に利用できます)。

ソフトや制作環境が揃うのはもちろんなのですが、EPUB 3はデザイン面の進化は誰もが恩恵を受けますが、縦組みはまた別。「縦書き必要!」と訴えた日本人がバリバリ使っていくべきだと思うんですよね。それが普及を早く進めることになるのではないかと思うわけです。



というわけで、先日、本を出してから薄々感じているのが、「EPUB 3すごい!」とは言ってはみたものの、まだまだ、「EPUBって何それ?おいしいの?」みたいな状況もあるのかなー・・・・と。思いまして。また気がむいたら続編を書きたいです。

本書では、EPUB 3でどんな表現ができるのかとEPUB 3の基礎的な構文などを丁寧に解説しております。