人の営みや心の合間をすり抜ける風のような存在。
そんな初演の光の君の登場シーン。
自分の錯覚か初演以降は演出が変わったような感覚を覚えました。
女官の位置が変わって感じたのは自分だけでしょうか?
彼女らと戯れることで、孤独を癒しているような、そんな印象に変わっていきました。

さてそんな誰だか確信が持てなかった若き豪速スケーター(だって、その時はあの垂髪姿は初見だったわけで←言い訳)は、市で駆け回る暴走族ならぬ安定したボディーコントロールとエグいエッジで、直ぐに誰だかはわかりました。

この時の頭の中将との掛け合いも、回を重ねる毎にだいぶ印象が変わりました。
初演ではもっと反発する気満々というか「オレはお前のいうことなんか、きかないぞーっ」とグレてる少年風だったのですが、その後は完全に中将に甘えた(⌒-⌒; )
彼には何を言っても見放されない。自分の心の内をわかってくれる。

そんな惚気ならぬ2人の信頼関係を見せつけられる感じになっていった(笑)
そもそもこの「月光かり〜」で本筋を動かしていたのが長道の秘めた愛ならば、話を展開してくれていたのは、中将の変わらぬ光の君への愛情(なのか?)
貴方があんなまっすぐでやんちゃな可愛すぎる皇子に育てたんですねってカンジ。アレは源氏も難しくなった兄への愛情を投影していたのでしょうか?

そして初、光の君のお声…
自分は内心、大輔さんは台詞あるだろうし、多分歌もあるだろうなと思っていました。もしなかったら、それは大輔さんが亜門さんの期待に応えられなかった時(笑)
しかし耳に届いた「そうだ」の声。
大輔さん? アレ?違う?? そもそも吹き替え? 録音??
初演は役作りのためか、私にはわかりにくかったです。気のせいかそれ以降、台詞が増えた気がするし、声のトーンも明瞭になりました。

表情の見える席だったわけではないのであくまで印象ですが、源氏の君が市をどう思っているかが公演を通して変化しているように感じました。
初演では気晴らしの為に潜り込んで、街の賑わいを「覗き見」しているようでした。

それが回を重ねるごとに彼らに愛着を持っていることが仕種や空気の柔らかさから伝わってきます。
源氏の君にとって市は隠れ家であり、飾らない自分で居られる場所になっていたのです。
その後の中将と街民とのやりとりからも、2人が貴族であっても彼等に愛情をもって接しにいることが自然と伝わってきました。

なのであのシーンは公演を重ねるごとにワクワクする1番の癒しの場面でした。ああいうわちゃわちゃは、大輔さんはけっこう上手。
一度はコメディタッチのショーがあってもやれると思う。
ずっとこの平和な時間が続けばいいのに…。そんなことを願わずには居られない時間でした。


ちなみにそんな自分が「ああ、大輔さんの声だ」と安心したのは、紫に声をかけたところ。あの優しいトーンが耳に届いた時、ふっと力が抜ける感じがしました。
声音に滲む孤独と共感。優しい夜の気配。夜が来なければ人は休まらない。そんな「安らぎ」にも似た時間。
守るものが出来た瞬間、源氏の君は「らしさ」みたいなものが芽生えたようにも感じました。