大の里は9連勝。霧島も勝利し1敗を守り8勝目。勝ち越しを決めた。だが2敗の琴櫻に土がつき、琴櫻は3敗。先頭に3差を付けられてしまえば、優勝は絶望的ともいえる状況になったか。2敗は平幕の4人となった。それにしても大の里が強い。そんな9日目を振り返る。

■技能賞大の里!?
既に2回の技能賞を受賞してる大の里だが、いくら強いとはいえその技能賞受賞に対しては否定的な意見が多かったし、私自身も技能賞とはちょっと違うよなという印象を覚えていた。だが、今場所の大の里が技能賞を受賞しても、ふさわしいと感じるし、むしろ今場所の大の里は、もし1つだけ三賞を与えるのなら、どの賞がふさわしいのかと問われれば、それは技能賞なんじゃないかとすら思えるくらい、相撲が巧くなってきたとも感じる。ただ前に圧力を生かして出るだけじゃない。相手の攻めを封じる。脇を固める。土俵際も突き落としだったり、引きを食らわないような攻め方を見せる。こういったところが凄くうまくなっているように感じる。

■連日の豊昇龍らしさ
昨日と同じような感想だが、豊昇龍が安定して勝つ、さらに上を目指すというのであれば、立ち合いからの鋭い出足で前にもっていく。日馬富士のような相撲を目指したほうがいいのではないかと感じるし、それを見せる日もある。だけれども、やはりこの日のような平戸海を豪快にすくい投げる。見て楽しいというのであれば、やはりぶん投げる相撲。これが豊昇龍の醍醐味だ。むしろ、日馬富士より千代の富士。なのかもしれない。いろいろ批判されることもあるが、やっぱり豪快に相手を投げる豊昇龍は魅力的だ。

■ただただ残念な琴櫻
宇良が素晴らしい相撲をとったと言えばそれまでだが、結果としては単純に「残念」だ。大関が9日目で6勝3敗。普通なんだとは思うし、大関としては決して悪くない(良いとは言わないが)成績でもあるとは思う。だけれども、やはりこの人に求められるのは、まずは優勝。そしてさらにその上だろう。お爺ちゃんも大関が長かった。その部分では先代琴櫻を継承する必要なんぞない。とはいえ、琴櫻と言う力士。スピード感を持ってここまで上がってきた力士ではない。どちらかと言えば、じわじわと、そして大きく壁にぶつかることはなく(むしろ一番長く感じたのは幕下上位だ)上がってきた力士。大関でも大関に在位しながら、上を狙える力をつけていけばいいのか。とはいえ、生きのいい若手は上がってくる。対戦相手も琴櫻だったらチャンスはあると伺って向かってくることにもなっていると感じる大関。なにか圧倒感が増せばいいのだが、そういうわけでもなく、壁にぶつかってはいないが停滞しているようにも見える琴櫻。宇良の攻めはよかったが、この負け方。ただただ残念だ。

■2敗はベテランばかり
若隆景をベテランというのはまだ「気が早い」とも思うし、怪我から番付を戻すプロセスの途中でこの地位なら6勝2敗は妥当な成績といえばそうなのだろうが、その若隆景を含め2敗は遠藤、錦木、高安。平成2年生まれ(高安は学年は元年だが)の「おじさん」たちが頑張っている。遠藤は幕内で戦うのは厳しくなってきたかと思わせたこの1年程度だったが、復活してきている感はある。この日の変化での立ち合いはなにか遠藤らしくないところも感じるが、やはり勝っている遠藤は美しい。高安も番付と地力からすれば、若隆景同様、この程度の数字を残すのは当然とも思えるのだが、謎の力を抜いた2敗だけにとどまっており、やはり力の違いは感じる。それは初日負けた時、どうなることやらと思った錦木も同様だ実力あるベテランがいい味を出して、力を発揮している。そんな2敗勢の力士たちだ。

■霧島ー大の里が組まれた10日目
一部、もっと後ろに引っ張ってもいいのではないかと言う声もあるが、このタイミングで当ててきたのは良いのではないだろうか。テンプレ的なところはあるが。結果は予想しづらいが、大の里が勝てば、2差つけることになり、リードした状態で大関にどう立ち向かえるかが注目になってくるだろうし、霧島が勝てば星が並ぶ。そして大の里が1敗したことで生まれる、場所が「動いてくる」可能性も出てくる。これが事実上の優勝決定戦と呼ぶには気が早いかもしれないが、勝ったほうが優勝に近づいてくる。霧島が勝ったところで星が並ぶだけではあるのだが、地力で大の里に追いつけた霧島にとっては大きなものになるだろうし、結果としてこの勝者が優勝するという図式が美しいのかもしれない。そんなことを感じた9日目と10日目の割だった。