生死

いじめはいけない
そう主張するトモダチに
そっと耳を傾けた

いじめはいけない
と言った後に
他人の悪口を言うことは
矛盾ではないかと
言う彼に
そっと耳を傾けた

しかしその後
びっくりした！！

「いつまでかかるんだ！！死ね！！」
携帯電話に向かって
そう罵るのも
彼

相手は郵便屋さんだそうだ


あぁ
さっきまで
神様みたいだったのに
素敵だったのに
ねぇさっきまで
花にも人にも
天にもネズミにも
やさしかったよね

それなのに

「死ね」
を

そんなに簡単に、言えるんだね


「死ね」
わたしも何度、言いたかったことだろう
世界に
社会に
絶望して
死んでしまえばいいと
何度思ったことだろう

でも彼は
いとも簡単に
「死ね」
と言うのだ

わたしの
命と引換えくらいの
つらいつらい
おもいおもい
二文字と、違うんだ…

同罪
そう思うこともできる
でも
きみは、間違っているよ
きみは、そうだね
「いじめは正義だ！弱い奴は死ね！」
そう主張して、恥ずかしい思いを
したらいいんじゃないのかな
一生懸命働く郵便屋さんを
死ねと言えるのなら。

永遠に

強者が弱者を食う
これは永遠に終わらないのかもしれない
そう呆然と考えた
暑い夕方

人間が生まれるはるか前から
当たり前であったこと
弱肉強食
それが今でも続いていて
何がおかしいのだろう？

わたしは小さくて
おかしくて
取り残されてしまうから
きっと、弱肉だ

弱肉の友達は
弱肉に違いない
だって強者なら
とっくの昔に食べていたから

だから食べられてしまう
わたしたち、一緒に
食べられてしまう運命

みんな一緒ならこわくない
みんな一緒ならこわくない
怖くないよ
泣いていないよ

薬

薬は心を抑圧する
だから薬が切れると
「がまん」していたことに
気づいてしまうんだ

不潔な場所
がさつな人
きらいなこと
がまんできずに
爆発してしまうことが
薬を飲むと、できてしまう

だけど薬が切れると
がまんしていた事実に気づいてしまう
ほんとうはいやだ
ほんとうはにげたかった
ほんとうはこわかった
ほんとうはだいきらいだった
自分を抑圧していたことに
気づいてしまう

わたしはいつでも　がまん　がまん
誰にも理解されずに
数の暴力で
わたしはがまんしなければならなくなる
そんな悲しい事実と
向き合わなければいけない日が来てしまう

がまんは苦しい
がまんは辛い
薬はすごいけど
ほんとうは
誰よりもわたしを
理解してくれないのは
薬
なのかもしれない

奴が来る

あそこにも
ここにも
フラッシュバックにも
奴が来る

怒鳴る
投げる
ぶつける
壊す
奴が来る

これを暴力といわないで何と言う？
これを虐待といわないで何と言う？
これをDVといわないで何と言う？
聴こえる　音　音　音
壊れる音
近づいてくる音
音　音　音

聞きたくない
聞きたくない
恐怖
でも誰も
そうは思わない
そう誰もが
当たり前になってしまったから


みんな
マゾヒストになってしまったんだ
暴力　OK
暴言　OK
破壊　OK
でも
わたしだけ
慣れていない
理性なの？
知能なの？
慣れないだけ？

壊れる音
音
また
よみがえる
音
助けて
このままじゃ
一生
音
音
音
から
逃れられない
助けて

助けて

フラッシュバック

アスペルガーの支援を探して
福祉機関にたどり着いた
そこではじめて
フラッシュバックに効く薬があると
教えてもらった

これまでの苦労はなんだったんだろう…
希望と同時に、そんな思いがめぐった
薬で何年もの苦しみが
なかったことになるんだったら
これまでの苦労は
する必要のなかったこと
誰も教えてくれなかったことに
がっかりした


しかし飲み続けて数日
どれだけ経っても効果が出ない
恐ろしいフラッシュバックは続く
悲鳴をあげて何かを壊して
復讐したくてたまらなくなる

人の顔が浮かぶ
にやにやしながら私を触る男の顔
陰険な女たちの顔
耳に響く言葉
あの時どうして私は
ああしてしまったんだろうと自分を責める

「いつまでも過去のことばっかり考えても損でしょ」
フラッシュバックがわからない人は平気でそう言う
だから苦しい
なおさら苦しい
私は過去にすがってるわけじゃない
頭が勝手にそうするんだ
私だけが苦しまないといけないなんて
おかしい

人間みんなに
フラッシュバックを味わう機械を
つけてやれないかな
つけてやれないかな