2005年04月10日

2004年ワキン族による単池完結型繁殖(ホテマクリ繁殖)

 子供時代には家に猫がいつも2匹ぐらい居て年に一度は子猫を生んだ。しばらくは子猫数匹と戯れられる楽しい日が続くが、そのうち爺ちゃんか父ちゃんが何処かへ子猫を捨てにゆく。子供ながらに定めと納得し爺ちゃん父ちゃんを責めたりはしない。田舎の貧乏人には猫の避妊手術などありえない時代の話。今年も金魚の繁殖シーズンが近付く。2004年の「ワキン族による単池完結型繁殖」を総括してみたい。

hk0504wakin 「単池完結型繁殖」というのは自作言葉なのだが、説明すると「親魚の産卵から稚魚の育成まで一つの池で一切特別扱いしないでほてまくる、老若男女混泳の楽チン繁殖法」を言う。「ホテマクリ繁殖」という親しみ易い別名も作ったので今後はこの言葉を使う。ついでに、この繁殖法が世界標準になる暁の日に備えてHOTEMAKURI Goldfish Breeding Methodと言う英語名も作った。この繁殖法を採用した管理人の作業は普段の換水と給餌のみである。個人的には理想の繁殖法であり、究極の金魚池の姿であると考えている。管理人は小学生時代に、山で蚊やスズメバチに追われながらクワガタを捕まえて虫籠で飼うより、庭の樫の木に捕まえたクワガタを放して自然繁殖させ、快適クワガタガーデン構築を企てた子供である。成功はしなかったが、当時より少ない努力で大きな成果が人生のテーマであった。

 昨年(2004年)の最大のテーマであったワキン族によるホテマクリ繁殖は初挑戦にして見事大成功(04年飼育観察記、参照)。何を根拠に大成功かと言うと、増えて欲しい数の魚が増えたこと。その上、その中の数匹が美貌の桜ワキンというオマケまで付いていたこと(魚ファイル「当池のシュブンキンその二話」参照 )。「苦労したぞ!」と努力の軌跡を探したが何も思い当たらず、稚魚のために何かをしたのはメダカの餌をバラ撒いたのと、田圃で採取したミジンコを3回ほど撒いたことだけ。「金魚の繁殖は簡単だぁ!」などと言うと「オバカさん」と笑われるのは承知だが、簡単な訳を説明すると・・繁殖においてオスとメスが居ることは最低条件。メスが卵を産み、オスが卵に精子をかけ、卵は自然に受精卵となり孵化し稚魚が生まれる。稚魚は生きるために自力で餌を探し食べ育つ。この中に人間が関与しなければ成り立たない要素は無い。水や餌の面倒をみたり、少々気を配るのは魚を狭い処に閉じ込めて飼うので当たり前。メスの産卵の苦しみを和らげるために魚の背中をマッサージしたり、巧くメスと絡めない初体験のオスの傍でアドバイスする飼育者は居ない。以上が管理人が「金魚の繁殖は簡単だぁ!」と言い斬る諸々の所見である。餌にあり付けない稚魚や弱い稚魚、運の無い稚魚は死ぬが、数千数万の孵化した稚魚の中で強靭な肉体と奇跡的な幸運に恵まれた、ほんの十匹の稚魚が秋を迎えれば瓢箪池は永遠に不滅の金魚池となる筈・・・。

hk0504sanran 永遠に不滅の金魚池となる筈・・・だったのだが、実はこのホテマクリ繁殖の大成功の裏には大きな落とし穴があった。当時、既に「繁殖シーズンはオスとメスは隔離すべき」という飼育指南は目にしてたが、「隔離」というのは「ホテマクリ繁殖」の飼育哲学に抵触する作業だったのでやらなかった。しかし、初めて見る金魚の産卵風景は想像以上に激しく、気絶しているのではと思われるメスにもオスが群がり、一匹のメスに10匹のオスが絡む風景も見た。これが人間だったらと想像してゾクゾクしてる場合ではないのである。産卵を終えたメス魚が死ぬのである。原因はオスに追われ絡まれ続け、魚体の色が変わるほどの擦過傷を負い、そして産卵後、体調を崩して群れから離れ動かなくなり、しだいに全身に感染症が廻り衰弱して死んでゆく。初回の産卵を無事乗り切ったメスでも数週間後の次回の産卵では心身ボロボロとなり生き残るのは難しい。オスも数匹は死んだかも知れないが、これが繰り返されれば毎年、新しい魚が生まれても、メスの比率が年ごとに下がり続けバランスが崩れる。いずれ、ホテマクリ繁殖が崩壊する年が訪れることを悟った。せめてメスに絡むオスを数匹に限定するとか、産卵場所に柔らかい水草を用意するとか、産卵後の傷んだメスを養生させるとかの「女に優しい環境」ぐらいは用意しないと、死んだ魚を網で掬うという個人的には最も嫌な作業が産卵シーズンの恒例行事となる。
 時は人を変えるもので管理人の飼育哲学などは毎年コロコロ変わる。今はホテマクリ繁殖に執着は無く、生まれる魚より生きている魚の方に未練があるので今年からは繁殖期にはオスメスの隔離は行う。まだ金魚の去勢、避妊が不可能な時代である。


〜「2004年ホテマクリ繁殖」の観察〜
『池の環境概要』
 当時の春には明2歳のワキン49匹、シュブンキン1匹が池で泳いでいたが、オスメスの比率は不明。池の広さ約6坪(畳12枚)、水深30センチから50センチ。産卵場所と稚魚の揺籠として睡蓮鉢を8つ池に沈めていた。池底にはヘドロ、落葉が堆積。水中には苔、藻、植物プランクトン(青水状態)が繁殖した環境。稚魚・幼魚の天敵多数。
『産卵の予兆』
(1)3月には腹がフックラした魚(卵を持つメス)と体の細い魚(多分、オス)の見分けが付くようになる(ただしワキンの場合)。
(2)4月、水温18度を越える頃にオスの追尾行動が始まった。
(3)産卵は水温18度から25度。季節は4月から7月。当池では5月が最も頻繁だった。
(4)雨の翌日とか新水を池に多量に入れた翌日に産卵が始まる場合が多かった。
(5)産卵は午前中が多い。
(6)確認はしなかったが大潮の日も誘発要因になるらしい。
(7)金魚は繁殖シーズンには複数回の産卵・射精が可能。
『稚魚のこと』
(1)体長1.5センチ以爾涼?話咾龍?篝?ぞ貊蝓⊃舅,侶垈?蠅傍錣襪海?燭?辰拭
(2)体長2センチを越えればメダカの餌は食べる。それまで何を食べてたかはよく分からない。
(3)体長4センチぐらいで黒い体色が赤や白に変わり始め、この時期を越えれば生存率が飛躍的に上がる。
(4)体長5センチを越えれば親魚の群れに混じる稚魚も現れ、親の餌を奪う。
(5)体長が似た者同士が群れる傾向があった。
『結果』
明2歳の親魚50匹の内、メスと思われる約20匹が産卵シーズンに死亡。12月まで生き残った瓢箪池生まれ瓢箪池育ちの当歳魚は約30匹。

〜「ホテマクリ繁殖」の成功の秘訣と条件〜
(1) 親魚はオスメスとも複数いること。沢山いれば産卵回数、孵化数は上がるが親魚の数と池の広さとのバランスが稚魚の生存率に致命的な影響を与える。
(2)産卵場所を確保する。我家の場合、産卵は睡蓮の茎、池の壁面に茂るシダが水中に垂れた場所で行なわれていたが、もっと柔らかい水草を用意していれば親魚の傷みも少なく、卵の孵化率も上がったと思う。
(3)親魚は卵や稚魚を食うので、遭遇する確率を下げるため広い池が必要。
(4)親魚は卵や稚魚を食うので、親魚には日頃より餌を十分与える。
(5)稚魚同士で群れられる場所(水草が茂る場所とか)があれば生存率は上がると思われる。
(6)天敵を池に入れなければ生存率は飛躍的に上がる。当池ではヤゴ、カニ、トノサマガエル、イカリムシが、かなりの数の稚魚・幼魚を食べたと思われる。
(7)稚魚の餌としてミジンコが湧いている必要は無いが、水中に苔や藻、微細な各種動植物プランクトンが常時存在していること。補完食として人工餌を与えると生存率は上がる。管理人はメダカの餌を撒いたが金魚用のぺレットを細かく砕けば大丈夫と思う。
(8)親子兄弟で繰り広げられる切ない生存競争を目にしても平然としていられる(親魚はメダカの餌を稚魚から奪う)。
(9)死ぬ魚を平然と見られる。
(10)秋に何匹の幼魚が残るかは天に任せられる。
(11)残る幼魚の美醜は気にしない。
(12)残らなくても瓢箪池管理人のせいにしない。

 以上は昨年の僅か1シーズンの当池での金魚の繁殖話であり、長年の観察・経験でもなく、他の環境では、どれほど共通するかは不明。沢山の環境要素の中の僅かな違いでも生物には重大な影響を与えることは世界の常識。稚魚を親魚と「隔離飼育」すれば金魚という魚は無限に増やせるのは明らかだが、それは無意味だし魚の首も自分の首も絞めることになる。出雲ナンキンのホテマクリ繁殖は可能か?と考えることはあるし、実現してみたい瓢箪池の最後の姿なのだが、多分、修羅場を掻い潜り生き残る幼魚は、親とは似ても似つかぬ魚である。世間では先祖戻りを起こした醜い妖怪魚として忌み嫌われる姿を愛でられる「枯れた男」になれる日が来るのかは不明だが、その日まで瓢箪池物語が続くことはない。2004年ホテマクリ繁殖に参加した親魚の全ては、この冬にアオサギの餌食となり2005年4月現在、池に約7匹の子孫が残る。これが本当の、ほてまくった最終結果。

『追記』
世の中には「増えるだけじゃ嫌。生まれる魚の姿形をコントロールしたい。」という強い欲望を持たれる方々も多く、そういった場合はホテマクリ繁殖法とは異なる以下の作業が有効らしい。
(1)オス・メスを厳選して交配させる。
(2)受精率を上げるために人工授精する。
(3)稚魚専用の水槽あるいは池を用意する。
(4)水温を管理する。20度ぐらいらしい。孵化時期の安定および孵化前後の魚の細胞分裂の安定化を計り、稚魚を粒ぞろいにするのが目的らしい。
(5)稚魚・幼魚の給餌・育成に秘伝の技を使う。色々あるらしい。
ここまでする飼い主に飼われる稚魚・幼魚は飼い主の望みの姿になれず寵愛を失うと旅へ出される。どういう旅かは飼い主の人格、性格に依る。いつか管理人もミジンコの自家培養に成功した暁には、こういう飼い主に豹変する可能性は多いにあるが、今以上に手間暇かかる金魚の養育時間を捻出できる生活ではない。

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