魚や飼育のことなど

2006年12月07日

簾の魔術師の話

skn061207sudare 実際には魔術師と言うのは大袈裟。しかし、なんか嬉しくなる響きがあるので日常的に多用している(薬局の友人は、薬の魔術師、フットサル仲間はタッチライン際の魔術師・・等々・・)。ようするに、一般的・平均的以上のコダワリとスキルを持つ程度のことなので、踊りながら簾を操るような事は不可能。

 簾は、2年と少し前に初めてナンキンが我家に到着した際、水槽を暗くして魚の長旅の療養にと利用したのが始まり。それ以来、愛用必需飼育アイテムとして常用している。換水時以外は、一度も全面開放の状態にした事が無いほど。数年、金魚を飼育して思うのは、魚は明らかな理由・動機を持って、簾の影と明るい所を選んで移動しているという事。金魚は非常に臆病な生物なので、安静にしたい体調不良の時、あるいは危険な気配を察知した時には暗い物陰へ移動する。人間と全く同じ行動なのである。この本能的な欲求を満足させてやるために、我家の場合は水槽上部に簾を被せる方法が一番簡単で合理的と考えた。少しばかり我家の金魚の行動パターンをご紹介。

(1)日が暮れると簾の下の暗がりへ、夜が明けると明るい所へ顔を出す。
(2)換水日は、暗い水槽の奥で過ごす傾向がある。
(3)猫がチョッカイを出すと、しばらく明るい所へ出て来ない。
(4)体調不良の魚は、暗い所に居る場合が多い。
(5)満腹になると、暗い所でノンビリしている傾向があるような気がする(これは気のせいかも?)。
(6)腹が減ると明るい所で水槽の壁面や底の苔をつつく。
(7)急に冷え込んだ日は暗い所に居る傾向がある。

以上のことから金魚は基本的には薄暗い所が好きなのでは?・・と考えてしまうほどである。しかし、瓢箪池で泳ぐワキン達は日中は日が当たる明るい所で過ごすことが多いので、真偽は不明。
その他にも色々、簾の効能があるのでまとめてご披露。

(1)1日の水温変化を和らげる。夏期は、太陽光の照射で水温を急上昇させない。冬期は冷たい北風を和らげ、急速な低水温化を抑制。一番重要な効能かも知れん。
(2)植物プランクトンの光合成の邪魔し、青水の進行を遅くできる。(ナンキンは青水を嫌がるらしいが、真偽は不明)
(3)鳥や猫に魚の居所を察知させない。(我家の特殊事情)

...季節による具体的な例...

春秋(3月〜5月、9月〜11月)...
水槽の半分を覆う(簾は2重)。特に3月、11月など、気温が急変する日がある。察知できれば前夜に水槽全面を簾で覆う。幾らか水温の保温効果を期待できる。
夏(6月〜8月)...
雨や曇りの日は水槽の半分を覆う(簾は2重)。ピーカン照りの日は3分の2を覆う。この気配りのおかげで水温が30度を超える日は滅多にない。
冬(12月〜2月)...
水温が10度以上にならない日が続けば水槽を全面覆い越冬体制に入る。簾は4重となり、ほぼ暗闇となるが、少しは風も通り、日中は僅かに明るく、昼と夜の気配や春の到来などは魚には分かると思う。この微妙な加減が板では難しく、簾ならでは効能と勝手に解釈(魚が喜ぶかは不明)。2月中旬以降、水温が10度を超える日があれば、少しづつ簾を開放し、水中に光を入れる。

...日による違い...
(1)風の強い日は全面を覆う。屋外なので開放してると、ゴミ、落ち葉が多量に水槽に入る。

備考・・
(1)我家の水槽は小さく、簾は北側に被せてあるので、日差しは割と水槽の奥まで届き、暗闇にはならない。
(2)簾は2年前にホームセンターで数百円買った安物だが、まだまだ使える。
(3)数年前にランチュウが我家に居た時に冬期に水槽を板でフタをしたてら、その板の水面側に黴が生えた。簾は板ほどではないが一部に黴が付いている(ちょっと気になるが黙認している)。

追記・・
冬期に簾を採用する訳は、我家は温暖な地域なので、簾でも十分な保温効果を期待できるため(寒冷地なら迷わず板を採用)。それと、我家の水槽の壁面や底には、冬期でも苔・藻などが密生しており(水槽を掃除しないため)、それらが枯死しないためためには、簾の目から幾らかでも光が入る方が有効と推測するため。苔・藻が枯れると水質が悪化する。千の環境があれば千の方策がある。

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2006年03月01日

青水の保温効果実験レポート

 一年前に予告した『青水の保温効果実験レポート』(カテゴリー「魚や飼育のことなど」『2005年ナンキン屋外水槽越冬の巻』参照)を1年を経てやっと投稿。納期は遅れるが、なんとか客に見捨てられない程度には仕事をするという管理人の生き様を物語る。

ssk0602aomizu1 冬期の金魚の屋外飼育において、青水(植物プランクトンが密生した緑色の水)の効能の一つに「水の保温効果」という記述を良く目にする。魚は急な水温変化を嫌がるので魔法瓶の中の水の様にユックリした水温変化なら魚も喜ぶと思う(もしそれが真実なら・・)。  
 昨年(2005年)の冬、図らずも青水と透明な水の2つのプラ舟水槽でナンキンを飼う機会に恵まれた(写真上は2005年当時の様子)。当然、青水水槽の方が一日の水温変化は小さいだろうと期待して、水槽の前を通る際にはマメに水温を計ったが、それほど差があるようには思えないのである。数百年の歴史と伝統ある金魚飼育の中で多くの諸先輩が語る言葉に嘘があるとは思えないが、どれほどの保温効果があるのか疑念が湧いて来たのである。どういう科学的作用があっての事なのか全く解らないし、その理論的考察を語った記述も目にした事が無い。液体の性質が変わり物理的に熱伝導率を小さくして冷めにくく且つ暖まりにくくするのか?青水の濁りが日傘となり直射日光を和らげることにより水温の急上昇を抑えるのか?もしや青水中の植物プランクトンが発熱するのか?・・・などと色々と悩まされた。
 お金も要らず、手間も些細なので実験してみることにした(やってみるとホントは結構面倒だった)。「暇な奴だ。」と思われるのは承知だが、もし「青水の保温効果」なるものが疑わしいという結果になれば金魚飼育学に一石を投じる貴重なレポートになるはず(ちょっと大袈裟かも)。とりあえず、準備が必要なので、今年(2006年)の1月から青水を作ってみた。製造方法は換水時に排出した飼育水(極薄い青水状態)と魚の糞を水槽に投入。数日に一度、液体園芸用肥料(植物プランクトンの栄養源)を少し添加。一日一度、エアーチューブで息を吹き込み光合成に必要な二酸化炭素を水中に供給。冬期なので増殖速度は遅いが、なかなか旨そうな青水に仕上がった・・と、思ったら寒波が来て、育成水槽に氷が張り壊滅。植物プランクトンの死骸なのかまだ生きているのかは不明だが底に緑色の物体が沈澱して水が澄んでしまったので、また作り直した。再び金魚飼育ではこれ以上濃い青水は存在しないだろうという濃度まで増殖させた。湯飲みに入れて客に出せば緑茶と思い皆飲むであろう。飲んだ事は無いが、多分、青汁ジュースを薄めた味に近いと推測(飲んだことある方がいらっしゃればコメントくだされ)。なにはともあれこれで実験準備完了。


『実験内容と環境と設備』

〜実験環境と設備〜
 青水と透明水の水温比較実験なので水槽は外部環境の影響を等しく被り、容器、容量とも同じであることが条件となるので両水槽とも全く同じメーカー、材質、サイズの透明アクリル水槽を採用。容量は約20リットル。それらを仲良く並べて設置。場所は屋外の明るい軒下。午後からは透明な屋根越しに日が当たる。雨は入らないがその他の外部環境の影響は多いに受ける。水温は、水温計の誤差を防ぐために、1個のデジタル水温計(10分の1度まで計れて気温も計れる優れもの)で計測。水槽の底と表層では水温が違うので、計測時は、水温計の数値が安定するまで水を混ぜる。

〜比較対象とした3つの水槽の内容〜
〔透明水水槽〕水道水を放置。蒸発分は追加。いつも透明な状態を維持。
〔青水水槽〕我家で自然に発生する青水。蒸発分のみ水道水を追加。金魚の飼育としては濃過ぎる状態を維持。     
〔隣のナンキンの飼育水槽〕これも比較のサンプルとして採用。水量は約110リットル。断熱マットで周囲を覆い、簾をかけて暗くしている。水は概ね透明だが、やや黄色く染まる。

ssk0602gurahu1『水温測定値の結果』
 添付したグラフをクリックして御参照下され。各水槽の水温および気温、天気も表記。計測は2月25日から2月28日までの4日間。一日3回、朝飯、昼飯、晩飯後に計測。27日と28日の夜は、なにかと忙しくて計測データ無し(随分と荒っぽい計測データではあることは認める)。

『管理人の考察と結論』
 水温変化のグラフには僅か4日分しか掲載していないが、実は昨年も今年も1月から両者の水温をマメに計測して、ようやく青水の保温効果について語っても良いのでは?という境地に至ったので今回やっと投稿したしだい。けっして数日の観察で得たヤンチャな考察では無い事を声高らかに言いたい。曇りや雨や雪の日は両者は、ほぼ同じ様に推移する。しかし両者の顕著な違いは気温が低く日差しが強い日ほど現れる。早朝は両水槽ともほぼ同じ水温であるが、日中に水槽に日が当たり始めると青水水槽の水温は急上昇する。透明水とでは4度の水温差が生まれる日もあった。当初、青水の濁りが日傘効果を生み、急激な水温上昇を抑制するのではないのか?という期待をしたが、これは実際は逆で日が当たるほど、光を熱に変換して水温を上げる。水中の植物プランクトンが日光を浴びると熱を帯び、その熱が周りの水の温度を上げる。光が当たると黒い物は白い物より温度が高くなる物理的な要因も作用する(植物プランクトンが光合成の際に発熱するかどうか?は、不明)。晴天時に青水水槽の水温が高くても一日の温度差が大きいことは保温作用があると言えるのだろうか?そしてそれを魚が喜ぶのだろうか?
 結果として青水の保温効果は確認できなかった・・と、言うより「安定した水温」では管理人の判定では透明水の勝利という結果になった。金魚の飼育では、実験に使った青水ほど濃い水槽はあり得ないし、水量はもっと多いし、冬期の屋外飼育では水槽を暗く保つのが一般的であるので両者の水温差はより少なくなることが想像できる。現実的な飼育環境で青水の保温効果を期待するのは当て外れで、水槽の保温と安定した水温を保つには水槽の断熱や設置環境に気を配る以外には方策が無いというのが管理人の結論。昔、金魚の師匠と呼ばれる方が、ある冬の日に青水の水槽の水温を計ると隣の透明な水の入った水槽より水温が高いではないか・・それを弟子に伝え、そしてその弟子がそのまた弟子に伝え、『青水の保温効果』という言い伝えが広まったのではないか?・・というのが管理人の推測。もし青水の保温効果を声高らかに唱う方を発見されたら「実験した暇な奴が居た。」と、お伝えくだされ。

『追記1』
 上記の投稿は水温だけに的を絞ったレポートなので青水を否定する訳では無い事をご記憶されたし。青水中のプランクトンは魚の餌にもなるし、青水の濁りが魚を落ち着かせる効能もあるかも知れない。あと、当地で繁殖する植物プランクトンが役立たずの種属である可能性は否定しないし、以上の実験・観察に嘘偽りは無いが、実験方法に落とし穴がある可能性も否定しない。今回は青水の保温効果という些細なテーマだったが、拘ったのには訳がある。少しばかりの熱帯魚や金魚の飼育指南書を読んで気になった事がある。熱帯魚飼育指南書の方が魚を生かす環境を人工的に再現するというイマジネーションや、その探求心や努力が金魚飼育指南書より明快で科学的な傾向があることに気がついたのである。もし「日中の青水の水温上昇の事を保温効果と言うんだっ!」と、負け惜しみをおっしゃる方は、科学的センスや説明力が不足がちなので、教師とか指導者という職業を選択される場合は御注意くだされ(余計なお世話かも知れんが・・)。伝統芸能に科学のメスを入れるとボロボロと不条理が現れる傾向がある(「なにを言っとるんだあー」と、怒りに震える金魚飼育者が存在することは承知)。

『追記2』
 実は冬期の屋外飼育については、その他にも色々と疑問を持っている。考えが、まとまれば、いずれ投稿予定。ただし、いずれが、いつになるかは不明なのが瓢箪池物語の特徴・・。挑発的記述が多いのは管理人の特質・・(この特質が敵を作る・・要反省)。

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2005年04月16日

水温差にも負けず、水質差にも負けず。

 6坪の広さがあり、巧く表現の出来ない複雑な形をしており、樹木が生い茂る池というのは常時、複数の環境が存在する。暗い所、明るい所。水温が高い所、低い所。新水が注がれる所、古い水が淀む所。浅い所、深い所。これらの要素を組み合わせると環境は無数にあり、水中で2メートルも移動すればそこは別の環境と言える。魚は一々驚いている筈なのだが、そんな素振りは見せない。魚はこれらの環境を一日中渡り歩く。

sako0504ike 『水温が違う。』
 真夏の炎天下、日の当たる睡蓮の葉の直下では水温約40度。日が当たらず新水が注がれる木陰では約30度。10度もの水温差がある。夏の晴天日の日中なら場所により5度の水温差は日常的に発生する。これまで読んだり見たりした飼育指南では金魚は一瞬で5度の水温差を味わうとショックを受けて死線を彷徨うことになる筈で、10度の水温差というのは死線を完全に越える筈。しかし、魚はそんな素振りは見せない。魚はこれらの環境を一日中渡り歩く(我家の魚達はM(マゾ)かも知れん)。この大きな水温差は曇れば収まる。春、秋、冬では晴天であっても夏よりは水温差は縮まる。高水温期での水温差は低水温期よりはダメージが少ないのでは?と考えることもできるが、あくまでも推測。
『水質が違う。』
金魚は急な水質変化に弱い生物と聞いているが、6坪の広さで約7トンの水量の池に蛇口を全開にして水を注いでも池の奥まで新水が届くまでには数時間はかかる。機械で掻き混ぜるわけではないので入り江の様な所では古い水がいつまでも淀みヘドロや落葉が堆積する。おのずと新水が注がれる所とでは水質には大きな差ができる。魚はphショックと呼ばれる堪え難い苦しみを味わっている筈だが、魚はそんな素振りは見せない。魚はこれらの環境を一日中渡り歩く(我家の魚達はやはりMかも知れん)。ただ雨や風が吹けば水が混ざり合い幾らか均質になるし、アンモニア濃度測定やph検査は経済的事情から行なったことがないので思い過ごしの可能性は否定しない。

 この池では魚達には移動の自由を保証しているので、居心地の良い場所に留まることもできるし、嫌な場所には近付かないこともできる。しかし池に餌を撒けば10度の水温差も水質差も乗り越えに餌に突進する。この事から金魚という生物は食い物に意地汚い性格の持ち主であると言える。日中は餌を求めて彷徨い泳ぐのが性らしく、あらゆる所を移動する。移動先の水は数秒前と同じ水ではない。この観察はこれまでの金魚飼育学の常識を覆すことになるのか?・・しかし、この環境に耐えられるタフな魚だけが生き延びたとも言えるし、複数の環境があるということは選択肢の幅が広いという前向きな解釈もできる。この猫の目のように水がクルクル変わる池を魚がどれほど嫌がっているのか?・・案外、気に入っているのか?・・全く不明。どっちにしても、池を均一な環境にするために木を切ったり、機械で水を混ぜたり、池を四角にしたりする気は無いので「好きな所で泳げよ。」というしかない。
 以下はその他のちょっとした観察・・
(1)冬は少しでも水温が高いところへ移動する。水深の深い所や新水の注がれる場所。当池の場合、冬は新水水温の方が数度高い。
(2)夏は新水が注がれるところへ移動する傾向がある。当池の場合、夏は新水水温の方が低い。シャワーで給水するので溶存酸素も多い。
(3)魚は体調を崩すと水温が高く浅いところへ移動する傾向がある。日が当たると浅い所の方が水温が高くなるのと、水深が浅い方が体の負担が軽いせいかと考える。
(4)夏の炎天下では魚は木陰に常駐すると思っていたが、それほどでもなかった。時々は薄暗い木陰で涼む魚もいる。

『追記』
上記の観察は昨年(2004年)、池に50匹程のワキンが居た頃の話。

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2005年04月10日

2004年ワキン族による単池完結型繁殖(ホテマクリ繁殖)

 子供時代には家に猫がいつも2匹ぐらい居て年に一度は子猫を生んだ。しばらくは子猫数匹と戯れられる楽しい日が続くが、そのうち爺ちゃんか父ちゃんが何処かへ子猫を捨てにゆく。子供ながらに定めと納得し爺ちゃん父ちゃんを責めたりはしない。田舎の貧乏人には猫の避妊手術などありえない時代の話。今年も金魚の繁殖シーズンが近付く。2004年の「ワキン族による単池完結型繁殖」を総括してみたい。

hk0504wakin 「単池完結型繁殖」というのは自作言葉なのだが、説明すると「親魚の産卵から稚魚の育成まで一つの池で一切特別扱いしないでほてまくる、老若男女混泳の楽チン繁殖法」を言う。「ホテマクリ繁殖」という親しみ易い別名も作ったので今後はこの言葉を使う。ついでに、この繁殖法が世界標準になる暁の日に備えてHOTEMAKURI Goldfish Breeding Methodと言う英語名も作った。この繁殖法を採用した管理人の作業は普段の換水と給餌のみである。個人的には理想の繁殖法であり、究極の金魚池の姿であると考えている。管理人は小学生時代に、山で蚊やスズメバチに追われながらクワガタを捕まえて虫籠で飼うより、庭の樫の木に捕まえたクワガタを放して自然繁殖させ、快適クワガタガーデン構築を企てた子供である。成功はしなかったが、当時より少ない努力で大きな成果が人生のテーマであった。

 昨年(2004年)の最大のテーマであったワキン族によるホテマクリ繁殖は初挑戦にして見事大成功(04年飼育観察記、参照)。何を根拠に大成功かと言うと、増えて欲しい数の魚が増えたこと。その上、その中の数匹が美貌の桜ワキンというオマケまで付いていたこと(魚ファイル「当池のシュブンキンその二話」参照 )。「苦労したぞ!」と努力の軌跡を探したが何も思い当たらず、稚魚のために何かをしたのはメダカの餌をバラ撒いたのと、田圃で採取したミジンコを3回ほど撒いたことだけ。「金魚の繁殖は簡単だぁ!」などと言うと「オバカさん」と笑われるのは承知だが、簡単な訳を説明すると・・繁殖においてオスとメスが居ることは最低条件。メスが卵を産み、オスが卵に精子をかけ、卵は自然に受精卵となり孵化し稚魚が生まれる。稚魚は生きるために自力で餌を探し食べ育つ。この中に人間が関与しなければ成り立たない要素は無い。水や餌の面倒をみたり、少々気を配るのは魚を狭い処に閉じ込めて飼うので当たり前。メスの産卵の苦しみを和らげるために魚の背中をマッサージしたり、巧くメスと絡めない初体験のオスの傍でアドバイスする飼育者は居ない。以上が管理人が「金魚の繁殖は簡単だぁ!」と言い斬る諸々の所見である。餌にあり付けない稚魚や弱い稚魚、運の無い稚魚は死ぬが、数千数万の孵化した稚魚の中で強靭な肉体と奇跡的な幸運に恵まれた、ほんの十匹の稚魚が秋を迎えれば瓢箪池は永遠に不滅の金魚池となる筈・・・。

hk0504sanran 永遠に不滅の金魚池となる筈・・・だったのだが、実はこのホテマクリ繁殖の大成功の裏には大きな落とし穴があった。当時、既に「繁殖シーズンはオスとメスは隔離すべき」という飼育指南は目にしてたが、「隔離」というのは「ホテマクリ繁殖」の飼育哲学に抵触する作業だったのでやらなかった。しかし、初めて見る金魚の産卵風景は想像以上に激しく、気絶しているのではと思われるメスにもオスが群がり、一匹のメスに10匹のオスが絡む風景も見た。これが人間だったらと想像してゾクゾクしてる場合ではないのである。産卵を終えたメス魚が死ぬのである。原因はオスに追われ絡まれ続け、魚体の色が変わるほどの擦過傷を負い、そして産卵後、体調を崩して群れから離れ動かなくなり、しだいに全身に感染症が廻り衰弱して死んでゆく。初回の産卵を無事乗り切ったメスでも数週間後の次回の産卵では心身ボロボロとなり生き残るのは難しい。オスも数匹は死んだかも知れないが、これが繰り返されれば毎年、新しい魚が生まれても、メスの比率が年ごとに下がり続けバランスが崩れる。いずれ、ホテマクリ繁殖が崩壊する年が訪れることを悟った。せめてメスに絡むオスを数匹に限定するとか、産卵場所に柔らかい水草を用意するとか、産卵後の傷んだメスを養生させるとかの「女に優しい環境」ぐらいは用意しないと、死んだ魚を網で掬うという個人的には最も嫌な作業が産卵シーズンの恒例行事となる。
 時は人を変えるもので管理人の飼育哲学などは毎年コロコロ変わる。今はホテマクリ繁殖に執着は無く、生まれる魚より生きている魚の方に未練があるので今年からは繁殖期にはオスメスの隔離は行う。まだ金魚の去勢、避妊が不可能な時代である。


〜「2004年ホテマクリ繁殖」の観察〜
『池の環境概要』
 当時の春には明2歳のワキン49匹、シュブンキン1匹が池で泳いでいたが、オスメスの比率は不明。池の広さ約6坪(畳12枚)、水深30センチから50センチ。産卵場所と稚魚の揺籠として睡蓮鉢を8つ池に沈めていた。池底にはヘドロ、落葉が堆積。水中には苔、藻、植物プランクトン(青水状態)が繁殖した環境。稚魚・幼魚の天敵多数。
『産卵の予兆』
(1)3月には腹がフックラした魚(卵を持つメス)と体の細い魚(多分、オス)の見分けが付くようになる(ただしワキンの場合)。
(2)4月、水温18度を越える頃にオスの追尾行動が始まった。
(3)産卵は水温18度から25度。季節は4月から7月。当池では5月が最も頻繁だった。
(4)雨の翌日とか新水を池に多量に入れた翌日に産卵が始まる場合が多かった。
(5)産卵は午前中が多い。
(6)確認はしなかったが大潮の日も誘発要因になるらしい。
(7)金魚は繁殖シーズンには複数回の産卵・射精が可能。
『稚魚のこと』
(1)体長1.5センチ以爾涼?話咾龍?篝?ぞ貊蝓⊃舅,侶垈?蠅傍錣襪海?燭?辰拭
(2)体長2センチを越えればメダカの餌は食べる。それまで何を食べてたかはよく分からない。
(3)体長4センチぐらいで黒い体色が赤や白に変わり始め、この時期を越えれば生存率が飛躍的に上がる。
(4)体長5センチを越えれば親魚の群れに混じる稚魚も現れ、親の餌を奪う。
(5)体長が似た者同士が群れる傾向があった。
『結果』
明2歳の親魚50匹の内、メスと思われる約20匹が産卵シーズンに死亡。12月まで生き残った瓢箪池生まれ瓢箪池育ちの当歳魚は約30匹。

〜「ホテマクリ繁殖」の成功の秘訣と条件〜
(1) 親魚はオスメスとも複数いること。沢山いれば産卵回数、孵化数は上がるが親魚の数と池の広さとのバランスが稚魚の生存率に致命的な影響を与える。
(2)産卵場所を確保する。我家の場合、産卵は睡蓮の茎、池の壁面に茂るシダが水中に垂れた場所で行なわれていたが、もっと柔らかい水草を用意していれば親魚の傷みも少なく、卵の孵化率も上がったと思う。
(3)親魚は卵や稚魚を食うので、遭遇する確率を下げるため広い池が必要。
(4)親魚は卵や稚魚を食うので、親魚には日頃より餌を十分与える。
(5)稚魚同士で群れられる場所(水草が茂る場所とか)があれば生存率は上がると思われる。
(6)天敵を池に入れなければ生存率は飛躍的に上がる。当池ではヤゴ、カニ、トノサマガエル、イカリムシが、かなりの数の稚魚・幼魚を食べたと思われる。
(7)稚魚の餌としてミジンコが湧いている必要は無いが、水中に苔や藻、微細な各種動植物プランクトンが常時存在していること。補完食として人工餌を与えると生存率は上がる。管理人はメダカの餌を撒いたが金魚用のぺレットを細かく砕けば大丈夫と思う。
(8)親子兄弟で繰り広げられる切ない生存競争を目にしても平然としていられる(親魚はメダカの餌を稚魚から奪う)。
(9)死ぬ魚を平然と見られる。
(10)秋に何匹の幼魚が残るかは天に任せられる。
(11)残る幼魚の美醜は気にしない。
(12)残らなくても瓢箪池管理人のせいにしない。

 以上は昨年の僅か1シーズンの当池での金魚の繁殖話であり、長年の観察・経験でもなく、他の環境では、どれほど共通するかは不明。沢山の環境要素の中の僅かな違いでも生物には重大な影響を与えることは世界の常識。稚魚を親魚と「隔離飼育」すれば金魚という魚は無限に増やせるのは明らかだが、それは無意味だし魚の首も自分の首も絞めることになる。出雲ナンキンのホテマクリ繁殖は可能か?と考えることはあるし、実現してみたい瓢箪池の最後の姿なのだが、多分、修羅場を掻い潜り生き残る幼魚は、親とは似ても似つかぬ魚である。世間では先祖戻りを起こした醜い妖怪魚として忌み嫌われる姿を愛でられる「枯れた男」になれる日が来るのかは不明だが、その日まで瓢箪池物語が続くことはない。2004年ホテマクリ繁殖に参加した親魚の全ては、この冬にアオサギの餌食となり2005年4月現在、池に約7匹の子孫が残る。これが本当の、ほてまくった最終結果。

『追記』
世の中には「増えるだけじゃ嫌。生まれる魚の姿形をコントロールしたい。」という強い欲望を持たれる方々も多く、そういった場合はホテマクリ繁殖法とは異なる以下の作業が有効らしい。
(1)オス・メスを厳選して交配させる。
(2)受精率を上げるために人工授精する。
(3)稚魚専用の水槽あるいは池を用意する。
(4)水温を管理する。20度ぐらいらしい。孵化時期の安定および孵化前後の魚の細胞分裂の安定化を計り、稚魚を粒ぞろいにするのが目的らしい。
(5)稚魚・幼魚の給餌・育成に秘伝の技を使う。色々あるらしい。
ここまでする飼い主に飼われる稚魚・幼魚は飼い主の望みの姿になれず寵愛を失うと旅へ出される。どういう旅かは飼い主の人格、性格に依る。いつか管理人もミジンコの自家培養に成功した暁には、こういう飼い主に豹変する可能性は多いにあるが、今以上に手間暇かかる金魚の養育時間を捻出できる生活ではない。

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2005年03月27日

2005年ナンキン屋外水槽越冬の巻

 管理人にとって水槽での金魚の屋外越冬飼育は今年(2005年)で2度目。昨年は3匹のランチュウをタライで屋外越冬させて冬の間に2匹を病気で失った。このことが記憶に残り、我家のナンキンはチビ揃いなので寒さが体の芯まで滲みて数匹は失うだろうと覚悟してたが、ナント!21匹全員無事、体調不良魚も出ず現在に至る。全員無事というのが非常に嬉しい。内心、飼育テクニックを誇りたい気持ちもあるが、魚の逞しさを讃えるべきが正解。この冬、金魚について発見できたことを紹介したい。

sako0503ettou ナンキン21匹を2つのプラ舟水槽に分けて飼育していたが、一方は青水、一方は透明な水と環境が分かれた。こうなった訳についてはカテゴリー、水のことなど「冬の青水」にて拙い考察を投稿したので興味のある方はご参照下され。以下は今年の観察と屋外越冬飼育の考察。

(1)世間で言われる「青水の保温効果」を期待してたが数字に現れるほど2つの水槽の水温差は無かった。
いずれ後世に残る「青水の保温効果実験レポート」を発表予定。
(2)青水水槽の魚は透明水水槽の魚より泳ぎが緩慢であった(心配になるほどではない)。
青水の濁りによる視界の悪さが原因か?水中に栄養補給となる植物プランクトンが豊富なので餌を求めて泳ぎ回る必要が無いのか?魚の動きを緩慢させる覚醒物質が存在するのか?と色々考えるが真偽は不明。
(3)青水水槽の魚は透明水水槽の魚より餌の食いがやや緩慢であった(心配になるほどではない)。
上記と同じコメント。
(4)青水水槽の魚は透明水水槽の魚より体表に艶が無い魚が多い(心配になるほどではない)。
ナンキンは他品種と比べ白い肌がキラッと輝くことがチャームポイントの一つなのだが、青水水槽の中で暮らす魚は透明水水槽の魚より輝きが明らかに劣る魚が数匹いる。青水の濁りでそう見えるのか?と注意して凝視したがこれは事実。ナンキンの飼育極意で「透明な水で飼育すべし」というキーワードがある。艶のある魚を作るためなのか?と一瞬考えたが、これまた真偽は不明だし「青水のせいだっ。」と断言できるほどの違いではない。末永く観察を続けたい要注意事項。

sk0501pura(5)我家のナンキンは水温5度でも良く泳ぐ。
他の家のナンキンや他の環境では不明だが低水温には強い品種の可能性はある。なんといっても日本海の寒風が荒ぶる出雲産である。
(6)水槽を暗くした方が魚は大人しい。水槽を明るくすると低水温でもよく泳ぐ。
物理的な光というのは精神的にも肉体的にも生きる希望の光なのだろうと勝手に推測している。しかし冬期、薄暗い環境の方が魚は落ち着ける様ではあった(魚に聞いた訳ではない)。体温が低温で心身が朦朧状態の魚を泳がせない方が越冬環境としては魚に優しいか?とも思ったが、水槽(あるいは池)を真っ暗にする必要は感じず、体内時計を正常に保つには昼夜の気配を察知できる程度の明るさは保つべきかとも考えている。
(7)水槽にフタをして暗くした方が一日の水温変化は小さい。
太陽の直射は水温を急上昇させる。そして夜は急降下する。暗くした方が低温状態ではあるが水温は安定する。青水で魚を越冬させるのであれば、青水の濁りが外部からの環境刺激・変化を緩和する作用がある可能性は大きい(いずれ後世に残るレポートを発表予定)。透明な水で越冬させるのであれば水槽を暗くできるフタを被せるのは強力な水温・環境安定化対策になると考えている。我家では簾を愛用。ほのかな明かりが差す。「こりゃたまらん」というほど冷える日は簾を2枚重ねにした。
(8)冬期の約2ヶ月半、殆ど餌を与えなくても魚はそれほど痩せない。
ただしこれは苔や植物プランクトンを食べられる環境下での話。魚は餌を与えなくても苔や植物プランクトンを食べてるようで、苔色の糞がチラホラ水槽の底に沈んでいる。水中の植物プランクトンや苔は冬の貴重な食料であることは明らか。糞をするということは水質が悪化するということなので、少ない量・回数であっても換水を定期的に行なう方が何かと安心できた(管理人は実は小心者)。冬期、苔や植物プランクトンが存在しない環境で2、3ヶ月、全く餌を与えなかった場合、金魚は生存できるのか?生存はできるが痩せ衰えるか?は判らないが、こういう事を実験する予定は無い。魚は水温5度でも餌を与えれば食べる。が、これは必要が無いどころか害が大きいことは多くの諸先輩が語る。管理人は水温10度を給餌と停餌の分岐点とした。

 未熟者のたった一冬の飼育経験ごときを観察・考察などとコマゴマ語るのは恥ずかしいし、どこまで信憑性を伴った普遍的な観察・考察なのかも全く自信無いが、なんにしても体調を崩したり死ぬ魚が居なかったのが唯一の自信を持って語れる観察結果。我家のロケーションは日本では温暖と言われる地方である。プラ舟水槽は雨水や雪が入らない柔らかな日差しの入る環境に設置している(池の環境・設備「瓢箪池別館」を参考下され)。越冬環境としては厳しい所ではない。寒冷地や別の環境・条件下では違う結果になることは十分考えられる。

sako0503ettou3 かつて瓢箪池の王者だったワキン族は屋根も防寒対策も無い露天の池で雪が降っても木枯らしが吹いても死ぬことはなかったし、春夏秋よりは動きは劣るが氷の下でもユラユラと普段と変わらず餌を求めて泳いでいた。池に水さえ溜まっていれば心配御無用の魚達であった。我家の魚はこうあって欲しいとつくづく想う。出雲ナンキンは体質が虚弱とか飼育が難しいと言われる品種らしいが、管理人はまだそれが事実かどうかの判定はできていない。事実であっても「それがどうした。」と開き直る以外にない。今年、軒下の水槽で冬を過ごしたナンキン達は来年は瓢箪池での越冬となる。魚にとって天国か地獄の池かは今のところは不明。新たな観察などがあれば来年は池での越冬生活の模様について投稿したいと思うが、それまでナンキン達が生き延びている事と、瓢箪池物語がそれまで「完」にならない事と、ライブドアーが存続している事が条件。環境・条件が違うと未来は無数に生まれる。

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2005年03月09日

謎の水

mk0503nazonomizu 〜謎の水、その1『水が蒸れないように風通しを良くする』〜
 「水が蒸れないように風通しを良くする」・・魚の飼育指南で時々目にするフレーズがある。同じ生き物仲間、なんとなく理解できる。ただしこちらは陸上、あちらは水中、蒸れるどころか年中ずぶ濡れ状態「蒸れたぐらいでどしたんぞい。」と思う。「ショップの水槽なんかフタまでして蒸れまくっているではないか。連中はなあ〜んも知らんド素人か?」・・などといろいろ考えさせられる。今でも「水が蒸れている状態」が「蒸れていない状態」と、どう違うか判らないし「蒸れた水」というものを見た記憶が無い。僅かに風通しを良くするとどうなるかはいくらか推測できる。
(1)水面に風を送ることにより水の蒸発を促進しその時に発生する気化熱を奪うことにより水温を下げる。
(2)水面の空気と接する面を風紋により広くし、かつ水表面を拡散し水中へ取り込む酸素量を多くする。
(3)風による水の対流を促進し水槽内の水温水質を均一にする。
(4)多湿によって発生する水面上部の有害生物(カビ・細菌等)及び物質(カビ・細菌等から発生する毒素)を水中に取り込まないため。(実際にどのような有害生物・物質があるかは分らない)
 以上が自分が考えられる限りのご利益なのだが、(1)については高温状態にならない所へ水槽、池を設置すればいいことだし(2)(3)についてはエアーレーションを行なえば対処できる。(4)だけが風通しを良くすることで得られる特別なご利益ではなかろうか?
 「エアーレーションをしない環境では風通しを良くする」と言って貰えたら素直にウンウンと頷けるのだが、もしや他にもっと重要なことがあるのかも知れない。「もう少し詳しく教えて貰えんかの〜先輩っ。」と、つくづく思うが、まあ何事も結果が良ければ理由を知る必要もないとも考える。

〜謎の水、その2『こなれた水』〜
 『魚を飼うときは「こなれた水」を用意しましょう。』・・飼育指南でよく目にするフレーズである。この「こなれた水」とは一体どういうものなのか?・・手でモミモミした水ではないことは確かだが、未だに謎の水である。この謎の水の正体を突止めるには、まず「新水」という誰もが入手可能な水のことを考えてみる。「新水」とは水道水からカルキを抜いただけの水、あるいは自宅の井戸から汲み上げた水(溶存酸素を上げる必要はある)と理解した。それではこの「こなれた水」は「新水」と比べて何が、何処が、どう違うのか?作り方は?・・感心する解説にはまだ巡り会えない。それでも初めての飼育から1年と8ヶ月が経って、もしやこの「こなれた水」の正体は「生物濾過サイクルが確立した環境の水」を指すのではないか?という朧げな見解にたどり着いたのであるが、当の「こなれた水」推奨者本人の見解は不明。「もう少し解り易く教えて貰えんかの〜先生っ。」と、つくづく思う。初心者ではないという証に隠語を使用したり、香り高い日本語を使いたいという気分は理解できるが、もし、経験の少ない飼育者に飼われる魚の長寿を願うなら何の役にも立っていない。

『追記』
「水が傷む」とかも?マークが付く表現だがキリがないので謎の水のことは終わり。

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2005年01月28日

冬の青水

mk0501ike 写真は昨年の年末、池の水深約50センチの最深部に固まる魚達を撮影したもの。堆積する落葉も一枚一枚数えられるほどの透明度。幾らか水が緑色に染まっているが「青水」と呼ばれる植物プランクトンが水の中にワンサカいる状態ではない。これでは老眼の鳥でも容易く狙える。この魚達はこの冬、全てアオサギの餌食となった。
 魚が生存する池や水槽を明るい環境におけば春から秋は嫌でも植物プランクトンは増殖する。当池でも4月から10月までは換水を怠れば日ごと水が緑に変色する。一昨年の冬は見事な透明の水だったので、今年は諸先輩に習い「見事な青水」を作ろうとしたが見事な青水にはならなかった。秋から換水量に気を配り青水を維持しようと心掛けたが11月を境にだんだん水が澄んでゆく。池に漏水があり冬にも時々給水するが、その給水量が多過ぎるのでは?と考えていたが、それだけが原因では無いのでは?という観察がある。「その観察とは?」の前にまずは冬の青水の効能と植物プランクトンの生存繁栄原理を考えてみる。

 『屋外飼育の金魚は冬は青水で越冬すべし』という金魚の飼育指南を良く目にする。冬期の青水の効能はアオサギから魚を守るためではなく、冬の給餌をしない期間の魚の栄養補給源であったり、青水による水の保温効果であったり、外部的刺激を青水の濁りにより和らげ落ち着ける環境を魚に提供することだったりと、低水温期の活性が低い魚を春まで健やかに生かすための効能と理解している。ただし、どれほど誉め讃えるべき効能かは不明。
 青水中の植物プランクトンも植物の仲間である。もっと狭義では緑藻、珪藻、藍藻と呼ばれるが深か〜い領域になるのでこれ以上踏み込むことは止める。水中の植物プランクトンとその他の植物とは水中を漂うか、固着しているかの違いはあるが昔、理科で習った「光合成」という最も重要な生存行為を行なうことは共通している。この種族は体内の葉緑素が光りエネルギーを浴びると二酸化炭素と水を原料に炭水化物(澱粉)という自らの細胞を増殖させるエネルギー源を造る、ついでに今も昔も将来も誰もが必要としている「酸素」を放出するという神様の次にエライ方々なのだが別にそれほど感謝してるわけでも尊敬してるわけでもなく詳しい事はこれ以上は知らない。なんにしても植物プランクトンも生存繁栄のためには環境に左右されるのは我々人間と同じ。生存繁栄に必要なものは、光合成を行なうのための光、光合成に必要な二酸化炭素(魚が鰓から出す水中に溶けた二酸化炭素)、その他の栄養素として窒素、リン、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどの水中に溶けた各種ミネラル、そして快適な環境(水質、水温など)。

sako0503ettou 池から少し離れた玄関先にナンキンを泳がすプラ舟水槽が2つ仲良く並ぶ。魚の数は違うが魚の総体重ではほぼ同じ。魚が水中に排出する二酸化炭素、糞尿などの植物プランクトンの栄養源の総量に大きな違いはないと思う。日照量、水温、水槽の構造、水量、濾過設備、換水量などなど・・飼育環境、飼育法もほぼ同じ。しかし右の水槽では青水になるのだが左の水槽は見事な透明の水である。しばらくは不思議に思っていたが植物の生態を学習すると原因らしきことを推測できるようになった。左の水槽は昨年の9月からの5ヶ月間、一度も水槽を洗っていないので苔が底や壁面を覆う。壁面には5ミリほどの藻までが密生している。右の水槽は昨年の12月に新しく購入し設置したもの。設置して2ヶ月ほどが経ち苔が幾らか付着しているがまだ僅かである。この違いが2つの水槽の青水の出来具合いに重大な影響を与えているというのが管理人の発見。左の水槽では苔や藻が水中の二酸化炭素、栄養素を消費し、植物プランクトンへの分け前が少ないことが増殖の妨げになり水が透明なのでは?というのが推測。瓢箪池の環境は左の苔や藻の蔓延る水槽の環境に似ている。その上、魚が排出する二酸化炭素も約7トンの水量に対しては僅か。当池の気候では11月を境に水温低下という追い打ちも重なり、植物プランクトンの生存繁栄環境が悪化し冬は青水を維持出来ない・・というのが管理人の推測。断定しても良い気もするがどうだろうか?

『追記』
世の中には光合成を行なわないヒネくれた植物プランクトンもいるらしい。
世の中には毒性物質を製造する恐い植物プランクトンもいるらしい。

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2004年11月25日

素人が語る、金魚の気持ちいい水温。

mk0411suionkei 写真は瓢箪池唯一の水質計測器、池に浮ぶ水温計。年中無休で電池も要らず良く働く。別館の水槽も含めて全部で4つ所有しているが、たった1度から40度まで計るのに2度の誤差があり、どれが正直者かは不明。1度から40度というのは金魚の生存可能水温域。管理人が金魚を気に入ったのは、この寒さにも暑さにも耐え健気に生きる姿が理由のひとつ。しかし、この1度と40度というのは四季の中で緩やかに水温が推移した条件下で短時間耐えられる温度であって急な水温変化や極端な高低水温が長く続くと魚は生死を彷徨う。

『一年の水温変化』
 四季のある中国の温帯水域に生息していた野生のご先祖の血を引く金魚は季節により生態を変える。プランクトンが増殖する春に繁殖期を向かえ夏秋はたらふく餌を食べ、冬の餌が乏しい時期には活動を抑制し新たな春を待つという季節の巡りをご先祖様は数百万年?繰り返して来た。その子孫である金魚は季節の水温変化を許容し、許容するだけでなく必要とすると考えている。(人間が一生を20度の快適気温で過ごしたらどうなるか想像して下され・・生の悪い生体になるとは思わぬか?)それでは熱帯地方で生きる金魚はどうしているのかというと、多分、生理不順で悩んでいると思う。しかし、南極北極や熱帯にも温帯域とはコントラストは異なるが季節の変化はある。
 屋外の水槽(池を含む)に冬に覆いを被せたり、夏に日除けを施すのは水量、水深の少ない飼育環境を野池に近い水温変化に近付けるという努力である。また冬期に青水での飼育を推奨されるのは水中の植物プランクトンが太陽光の直射を拡散反射させるため「日傘効果」があり急激な水温上昇を抑えることがひとつの理由。(青水の功罪はいずれ投稿予定)人間の都合で虚弱な愛玩生物になってしまった金魚にはこれぐらいの気遣いは必要かも知れない。(瓢箪池では野生の血を呼び覚ますため何もしない・・めんどうなだけかも)

『一日の水温変化』
 一般的な飼育環境では水温は気温の変化と共に変化するが気温の変化より遥かに緩慢で穏やかに推移する(理科で習った比熱と熱還流という自然の法則を思い出して下され)。日常の水温変化は年間の水温変化と同じく魚にとり刺激であり、許容範囲内の変化があることは正常なホルモン分泌や正常な体調の維持、脳の活性化などに必要不可欠と考えている。ヒーターなどで水温を一定に保つのは無意味どころか生の悪い魚に仕上げてしまう恐れがある。どうしようにもないほど一日の水温変化が大きな環境に設置された水槽の場合のみヒーター設置が最終兵器として検討されるものと考える。この「どうしようにもない環境」は水量の少ない水槽を冷暖房完備の室内に置いた場合と水槽が直射日光を受ける場合に多い。手元にある金魚の飼育指南書はこの最終兵器を最初兵器として推奨しているが、ヒーター設置を前提にするなら魚を飼いたい方にとって地球のあらゆる魚種が選択対象となる。もし「一日の水温変化の許容値は何度なの?」と問われればズバリ「5度以内、且つ24時間で緩やかに推移すること」と管理人は答える。一年間、マメに池と水槽の水温を計った結果、一日の水温変化が5度以上あった日は夏の豪雨の翌日がカンカン照りの日と冬の寒波の後の小春日和の場合の僅か数日しか無かった。もし日常的に5度以上の水温差があり水槽の移動も出来ず「此処はどうしようにもない環境かも・・」と対策を考えるならヒーターとサーモ設置はキンギョは喜ぶ。

『水温変化が緩やかで少ない池、水槽とは?』
水深が深い、水量が多い、立方体あるいは球体に近い形状の水槽、水と接する面の温度変化が小さい。日光の直射が無いなどなど・・・。しかし、水温のことだけなら物理の学習だけで足りるが、その中で泳ぐ魚は水温だけで生きていられる訳ではない。

『その他』
 魚を大きくしたい場合、餌の摂取・消化能力が高い水温20度から30度の高水温期を長く保てば成長は速い。(寿命が永くなる訳ではない)
 10度ほどの低水温で金魚を数週間過ごさせ、その後、20度程に水温を上げると季節を問わず産卵行動が起る。(ただし、メスの卵とオスの精子の熟成度は低いかも)
 品種により寒さの耐性が違うようで、ランチュウは10度を切ると底で緩慢な動きになり、ワキンは5度でもよく泳ぐし餌を欲しがる。ナンキンは現在のところ不明。
 病気の治療で水温を上げると効果的な場合があるのは、特定の病原菌の活動を抑える働きと魚自身の活性化が自己治癒力を高めるためである。(病気と水温との関係はいつか改めて投稿予定)

『瓢箪池の水温』
 実際に瓢箪池でこれまで計測した最高最低水温は冬の氷が張った日の水温3度、体毛がチリチリする灼熱の夏日は局地的には40度、平均では約36度。夜明け前が一番低く晴天時は午後2、3時頃が最高水温となる。池は西側に開けているため午後からの水温上昇カーブは急な傾向にあると考える。
 別館の水槽・・傾向は同じだが軒下で断熱材を巻いているのもかかわらず、一日の水温変化は池よりも大きい。理由は水量、水深が少ないこと。夏の晴天日には日傘を差し、冬は簾で水槽を覆っている。それでも5度以上の水温変化がある日が一年で数回ある。
 いくら水温に気を使っても生きる魚は生きるし、死ぬ魚は死ぬ。(愛用の決め台詞)

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2004年11月18日

水を制する者、魚を制す

mk0505tarai 「水を制する者、魚を制す」・・事実だと思う。かつて「チョックラ水を制しちゃるか!」と勢いで淡水魚飼育関係の書籍を読み漁ったりネットで熱心に調べた一時期があったが科学的実証や数値を明らかにするためには計測器や顕微鏡や試薬の購入という経済力が前提となる要素が多く直ぐに断念した。この諦めの良さが管理人がいつまで経っても大成しない理由。それでも経済力を前提しなくても五感と観察力で克服できる要素も多々ある。
 「水を制する」とは「水質が原因による魚の病気・衰弱等が発生しない水の維持管理」ということと考えている。「水質」とは無数の要素の集合体であり、魚に影響を与える水の総体品質と考えている。濾過能力や濾過方法に重心を置き過ぎると落とし穴に落ちても気が付かないケースがある。極上の清浄な空気と言われる南極の気温マイナス50度の中で生きるより、人や生活・産業排気の悪臭が立ちこめる気温20度の東京の方が多分普通の人には快適・・。ちなみに「無数の要素」の例として・・『化学的水質要素』としてph(ペーハー)、硬度、アンモニア濃度、亜硝酸濃度、硝酸塩濃度。溶存酸素量。溶存二酸化炭素量、各種ミネラル物質含有量、各種有害物質含有量、水(H2O)の分子状態、・・・。『物理的水質要素』として水温、水流、・・・。『生物的水質要素』として植物プランクトンの種類と繁殖状態、動物プランクトンの種類と繁殖状態、有害あるいは有益な細菌、バクテリアの種類と繁殖状態、苔の種類と繁殖状態、・・・。『環境的要素』として水量、広さ、水深、水と接する面の材質・性能・効能が水質に及ぼす要素、日射量とその光学的性質が水質に及ぼす要素、風力が水質に及ぼす要素・・・。素人が気になる「要素」でもこれだけあるから実際にいくらあるかは検討つかない。これらの「無数の要素」が絡み合った糸を科学的に解く作業は道楽としてはチト厳しく、その上、魚の種類、品種による無限のバリエーションがあり生態実験を伴った魚の長期(2千年程かかるかも?)の飼育観察が必要となるが、深刻に考えなくても生きる魚は生きるし、死ぬ魚は死ぬ。それでも道楽なりの探求は価値あることで、人工的で閉鎖的な空間で魚を飼育することは換水などの水管理が飼育作業の殆どを占め、この水管理を効果的、効率的、経済的に行なえればそのご利益は魚だけなく飼育者にとっても大きい。魚をしばらく飼育された経験がある方はウンウンと頷いていただけると思う。
 瓢箪池物語みたいな個人の気晴らしサイトで語れることには深い考察や科学的裏付けは望めず、管理人の性格からして主観的、観念的になる恐れは十分にあるが、自分が理解できて、納得できて、ついでに観察の裏付けまで得られたら魚が生きる水のことなども投稿していきたい。次回の『水のことなど』投稿テーマは「水温について」を予定。投稿発射まであと数日・・。

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秋のサカリ

hk0411akinosakari 池の金魚は秋にもサカリ(生殖行動)がつく。秋のサカリは春ほど執念深いものではなく一時的な気の迷いという風情なのだが、それでもひつこくメスを追い回す。その気の無いメスにとっては迷惑なことと思う。追いかけるオスは好きで追いかけているので疲労衰弱は自業自得。傾向は雨の翌日、雨水が多量に入り、水温が20度付近の日に多い。メスがこの季節に産卵間近の成熟した卵を抱いているとは考え難く産卵するとは思えないが、オスは追いかけなくてはならない状況に置かれるらしい。この現象は昨年の秋も目撃したので恒例行事リストに加えてもよいと考える。その原因を推測してみる。
(1)水温と水質変化がオスの生殖本能を刺激する。(雨水による新水刺激)
(2)メスが微量に誘惑フェロモンを出している。
(3)腹の膨らんだ体型を持つナンキンやオランダシシガシラが狙われる傾向が強く、オスはムッチリボディラインに刺激される。
(4)以上の要因が複合的に重なった。
 人間のオスのことなら自信を持って語れるが魚のことになると推測するだけで確証は無い。しかし、同じオス仲間、本能が理性に勝つことは自信を持って言える。
 この観察は自然池に近い環境で生きる精力絶倫の鮒尾ワキンの話で他の野生味の少ない品種や他の環境でも共通することかどうかは不明。

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