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だまし絵


事件当夜は雨
ヒラリー・ウォー 吉田誠一訳 
創元推理文庫 2000年

 まず序章で、「出遭いがしらの殺人」という以外に何の共通性も無い三つの事件が、ある本に採録された「実話」として紹介されます。
それからおもむろに本編に入るのですが、しょっぱなからいきなり起こる殺人事件、先の三つの事件とは無関係で、「いったい何をやってるんだろう作者は」と思いながら読み進めるうちに、だんだん、登場人物や捜査のそこここに、三つの事件のそれぞれの特徴が、うっすら透けて見えてきます。
それで、ようやく序章は全体のヒントなのだと気がつくわけですが、さあ、三つのパターンのどれが正解なのでしょうか。それとも、全く違う展開が用意されているのかな?


推理の主役は田舎町の警察署の署長と部下たちです。頭脳明晰なスーパースターは一人も登場しないけれど、彼らがスーパースターでないからこそ、読み手のほんの半歩先を歩いているような臨場感があり、ついついのめりこんでしまいます。

豪雨の夜に殺されたよそ者の果樹園主。彼を取り巻くのは、若くて美人の女房、ちょっとイケてる使用人の青年、長年音信不通のあやしげな弟。周りに転がっているのは、どうとでも解釈できそうな、平凡な手がかりばかり。
噂好きでおせっかいな田舎のおばちゃんたち、営業努力の対極にある雑貨屋のおやじの放漫経営など、情報提供者?の悪気の無い攪乱に悩まされながら、署長たちは根気良く捜査を続けます。登場人物についての辛らつだがユーモラスな描写も、ウォー作品の魅力の一つ。

悪戦苦闘の果て、いよいよ手詰まりかと思われたそのとき、彼らはついに真犯人にたどりつきます。しかし、話はまだ終わりません。


どうでもいいけど、写真の帯がヤダな。










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