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死者の足音

死者と踊るリプリー



死者と踊るリプリー(book)
パトリシア・ハイスミス著 佐宗 鈴夫訳
河出書房(河出文庫) 2003年
平穏に暮らすトム・リプリーの近所に、様子のおかしいアメリカ人夫婦が引っ越してきた。
一見、どこといって変わったところもない連中だが、なれなれしく近づいてくる態度に何かひっかかるものを感じ、トムの頭の中で警鐘が鳴りはじめます。周囲をかぎまわられ、無断で写真を撮られ、旅先まで付け回されるに及んで、トムの苛立ちは頂点に達します。
ディッキー・グリーンリーフやマーチソンの事件をほのめかすいたずら電話も、きっと彼らの仕業に違いない。いったい、彼らは何のためにこのような行動をとるのか。何か証拠でもつかんでいるのだろうか。
トムは「贋作」の画廊仲間とともに、プリッチャード夫妻の背後関係を洗い始めます。しかし、その間にも、プリッチャードの奇妙な執念が、じわじわとトムを追い詰めていく。
希代の詐欺師にしてシリアルキラーのトム・リプリーも、今度こそ年貢の納め時なのだろうか。




リプリー・シリーズ最終作。ただし、著者の死によってたまたまこの作品がラストになってしまっただけかもしれません。ハイスミス女史本人がどうするつもりだったかは不明。

直接には 「贋作」 のあとを受けた話で、ディッキーの件もいくらか蒸し返されており、形としては総括といってもいいかと思いますが、トムの不安を掻きたてるだけかきたてておいて、結局中途半端な結末で肩透かしを食わされ、まだまだ続きがありそうな感じも無いではありません。

ハイスミス女史の作品傾向からすると、どうもトムがこのまま野放しで終わるのはすわりが悪いような気がします。「死者と踊るリプリー」を前編として、多分三部作くらいで完結編のアイデアがあったんじゃないかと思うのですが、今となってはもう考えてもせんない事になってしまいました。

私としては、“まぬけな探偵対リプリー”の本作よりも、脇役との対比でリプリーの異常性が浮き上がる「贋作」や「リプリーをまねた少年」のほうが、シリーズのクライマックスにはむしろふさわしかったのではないかと思いました。


映画化予定。解説によれば、主演はなんとジョン・マルコビッチだそうです。う〜ん。見栄えはするでしょうが、イメージとしてはどうなんだろうか。
小説を読む限りでは、リプリーは外見的にはごく平凡で目立たない、「どうにでも化けられる男」で、特に「絶対に人殺しには見えない」のが条件のような気がするのですが。言っちゃ何だが、マルコビッチだと登場10分以内に殺っちまいそうです。
むしろ、怪しげでつかみどころの無いプリッチャード役のほうがはまる感じがします。最後のまぬけっぷりも、マルコビッチがやると思うとおかしさ倍増。

シリーズ第一作の映画化作品「太陽がいっぱい
のアラン・ドロンも、スクリーン的には楽しいけど、ビンボーで小悪党のリプリー君には美しすぎました。
主役をやるような映画俳優は、たいてい美男か目立つ男と相場が決まっているので、こういう役は案外難しいかもしれませんね。
その点、「リプリー」のマット・デイモンは、そこそこ原作に忠実なキャスティングでした。ディッキーを演じたジュード・ロウとの対照のおかげも大きかったとは思いますが。

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1. 嘘から出た殺人……パトリシア・ハイスミス『殺人者の烙印』  [ Dolphin Kick 2004 ]   2004年11月23日 11:06
パトリシア・ハイスミスの小説を読んでいると、どうしてこんなにどきどきしてしまうのだろう。小説なんだからと自分に言い聞かせても動悸は治まらない。訳者あとがきには「はじめから推理小説を書こうとするのでなく、犯罪者の心理や動機、行動を通じて、サスペンスを含んだ
コメント
1. Posted by BlogPetの「ありす」   2005年02月15日 22:15
きょうは、年貢詐欺したかったの♪
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