クロージングとはビジネス用語で「契約締結の実現をすること」だ。
 
私はこれを自分流に置き換えて「あまりレベルの高くない私立ぎりぎりの人がちゃんと合格して、二次募集になることを避ける」意味で自分に言い聞かせている。

よくこのブログ上で言っているが、私はどんな人でも基本的に学習指導を引き受けている。ただし時間がない時はさすがに無理で、断っている。

だから時々、中学3年生の6月ぐらいに「なんとかなりませんか」と訪塾されてくる人もいる。たいていすごく点数は悪い。5月にある中間テストの衝撃で来訪するのだ。

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ここで少しアドバイスしておく。
中学3年、最初の1学期中間テストは結構難しい。学校の先生が「3年生になったから一発かましておくか」と考えているからだ。特に数学は、甘く見て惨敗ということが多い。

例の和の平方公式と差の平方公式を分かった気になって、あまり練習しないでテストに向かうと、ものすごいカウンターを喰らう。

中間項の 2ax を忘れてしまうからだ。
もちろんこれだけではないが、数学をさぼっているツケがドンとやってくるのがここだ。

英語も受動態とか、現在完了形の登場で「過去分詞」の出番だ。ということは原形=現在形、過去形、過去分詞形、現在分詞=ing形まで全部テストに出る。だから単語の勉強をさぼっていた人はかなり痛い目に遭う。

絶対にお気楽に受けてはいけないですよ。

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話は元に戻る。
 
なぜ「私流 クロージング」に気を使うか、というと,後がないからだ。
ここで少し想い出話をする。年寄りの想い出話は長くなって嫌われるから、注意して要点だけ述べる。

まだ私が駆け出しのころは、生徒に対して説得力がなかった(今は少しあるつもりです)。
特に「なんとかなるさ」のノリでやっている人には、何を言っても無駄なところがあった。ある年、ある私立高校を公立と併願つまりダブル受験する人がやたら大量になった年があった。

この時私は悪い予感がした。私立高校は経営が優先だから、単願=専願者を優先して合格させるので、併願者はけっこう落ちる。落ちても余裕のある人は公立には通れるから問題はないが、ギリギリの人や、今でいうメンタルの弱い人は公立も落ちることになる。負の連鎖だ。

でもこの「落ちる」という現象が自分の身の周りでいつも起きるか??というとあまりないはずだ。
 
だから想像ができない→用意ができない→油断するという「図式」が完成する。

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特に、
① 兄弟で一番上の人(ホントの長男さんとか長女さん、あるいは上や下の人とすごく年が離れている場合や、一人っ子も含む)
② 親せきの人たちに受験経験がないとか、受験がものすごく順調に行ってしまって、苦しんだ経験のない人たちに囲まれている
③ でも本人には実力も自覚もない、勉強について「動作不安定」な場合

①+②+③の場合は「マジにヤバイ」のである。

まさにそれにあてはまる生徒D君がいた。
 
とにかく遊ぼうという意識と、変に自分は誰々よりはできる、と低い人を基準に考えているタイプで、やばいな~と感じていた。だから事あるごとに「そんなのでは危険だ、もっと対策勉強をして、1点でも多く取らなければ」と忠告ないし脅していた。

しかし家庭の雰囲気も甘く、連絡をしてこのままでは危ないと報告したのだが、下の子がちょうど手間がかかる年齢であったこともあり「あの子に任せてますから」だけだった。

受験まであと2か月となった12月のある日、その家から、退塾したいとの申し出があった。自分はちゃんとやっているのにあまりにも私がうるさいから、と言う理由だった。
 
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まだ若かった私は、がっかりするのと同時に、安心したことを正直に告白しよう。
 
もちろん合格してしまえば私の杞憂ということになり、めでたいことだ。しかし、落ちてしまってしょげているその姿を見るのは嫌だったし、ああこれで責任を問われずに済む、という安堵感もないまぜにあった。つまり私はこの時点で、その生徒D君(やめてしまったから正確には 元生徒であるが)の失敗を確信したのだ。どう見てもそっちの確率が高かった。

D君と学校で同級生だったE君が塾に残っていたが、その人は冒険をしたくなかったので、私の勧めに素直に従い、専願コースを選んでくれたから、私はそちらは心配していなかった。

皮肉なことに、E君を連れてきたのはD君だった。しかし最近、E君はD君を避けている雰囲気があった。まさにE君はD君を「自分にとって害のある存在」と認めつつあったのだろう。D君の方でも、次第に成績が上がり自分に追いついてきたE君を、うっとうしく思っていた風もあった。自分もがんばらなければ、と思うべきところを、うっとうしく思うところが、子供なのだ。このように中学時代に「大人になっていく」姿を見るのは、興味深く、尽きるところはない。
 
E君のご両親は、ともに理解のある方で「うちの子Eは時間はかかるが、やることはちゃんとやるタイプですから」と答えてくれていたし、またその私立高校は、今後は進学に力を入れる、今のこの学年からコース分けを細かくし、刺激を与えるためにクラス間の入れ替えも頻繁に行うと宣言していたから「一生懸命勉強すれば、高校で自然に道が開ける。変に面倒見の悪い公立に行くよりいい」とも励ましておいた。

E君は高校受験は当然うまく行き、3年後にちゃんと大学にも通り、今は立派な一家の主である。その私立高校も今では立派な進学校になっている。E君たちはその先鞭をつけたことになる。
 
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さて途中退塾した 元生徒D君はどうなったかというと、見事にその私立高校に落ち、ショックが大きかったのか、あるいは何かが足りなかったのか、公立高校にも落ちた。

こういう「負の連鎖」が一番怖いのだ。
 
当時、3月に実施されていた私立の2次募集にやっと通ったが、家から1時間半もかかるところで、交通費もバカにならない。一番開放的で、楽しく過ごせたはずの中学卒業の3月全部を、不安に包まれて、受験に全部使ってしまったことになる。たいそう心細かったと思う。
以上すべて、同級生だったE君が教えてくれた。E君なりに心配はしていたのだ。

その後D君がどうなったかは、私は知らない。運が悪かったとしか言いようがないが、後少しの運を引き寄せる努力を怠ったことは事実で、気の毒ではあるが、人生が与える試練だろう。
これを乗り切って今はよくやっているはずだ、と信じたい。

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詰めが甘いとこうなる。
10 cm のパットでも、ゴール下 1 m 以内のシュートでも、絶対に外してはならないのだ。日頃の計算練習で間違っている人が、本番でピタリと合うなんて、期待する方がオメデタイのと似ている。
 
だから冒頭で「あまりレベルの高くない私立ぎりぎりの人がちゃんと合格して二次募集になることを避ける」は私の負の教訓だ。

自分が半分は体験したことだから、生徒にも説得力がある。
で、去年やその前の年で危なかった人もうまく合格したが、塾には無関係で、私の知らない人だが、やはり同級生で併願の人が落ちた、と報告してくれた。

やれやれ、いつの時代でも「詰めが甘いD君」はいるんだな~、と確認するのが、私のこの季節の「教訓」であり「風物詩」みたいなものだ。
来年度もこうならないように、締めていきたい。

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では今日はこのへんで失礼します。

今日は兵庫県公立高校の入試日です。
今ごろは3科目かな?
後少しで終わりだぞ。
 

m(_ _)m