2009年03月21日

Narcissu

物語を書く際、人間の死をテーマに据えるというのは、あんまり褒められたことじゃないと思います。
エッセンスとして加える程度ならともかく、それそのものを本軸にしてしまうのはとても危うい。
極端ですが、文章ってのは多かれ少なかれ書き手が実際に体験したことじゃないと「重く」ならないという持論がありまして。
だからこそ、いかにも物語然としたノンフィクションは多くの人に共感を抱かせるんだと思います。
実際の書名を出すことは控えますが、最近のタイトルだけでも少なくない数が存在しますしね。

誰にでも平等に訪れるけれど、それでいて一番遠いところにあるもの。
逆説的に、「死」という実体験に基づいた文章なんてものは書けるはずがない。主観的に「死」を書くことはできないんです。
んなこと書いてる俺だってもちろんそうです。説得力ないですねw


ナルキッソス


そんなこんなで《ステージなな》より「Narcissu」です。
最初ガチで読み方わかんなかったゆとりは俺だけでいい。ちょっとリーンカーネイションしてくる。

来月発売の同タイトル三作目に、俺の敬愛するシナリオライターであるごぉさんが参加されると聞き、これは発売前までに前作くらいプレイしとかなきゃならんだろうということで。
ホームページを覗いてみたら、この作品、なんとフリーソフトでした。
確かにプレイ時間は一時間半程度と短かったですが、これだけのクオリティでフリーってびっくりですよ。
しかしそれを考えると、セラフィックブルーなんかはプレイ時間五十時間越えの超大作フリーソフトですからね。
こういう作品の存在が、P2Pの蔓延にいっそう拍車をかけてるんじゃないかと思ったり思わなかったり。

冒頭で長々と能書きを垂れ流しましたが、つまるところ、ナルキッソスはモロにそういう話でした。
不治の病に冒された男女二人が病院を抜け出し、当てのない逃避行の果てに、結局二人は何を成し遂げることもなく死んでしまう。
余計な設定はひたすら省いて、最後に至るまでをひたすら淡々とした文章で綴り続けた本作。
あまりにもあっさりと終わってしまったため、プレイ直後は味気なさすら感じていましたが、後々になってからじわじわと余韻が浮かび上がってきました。

この物語は、徹底して「ドラマ性」を排除しているように思えます。
シーンのひとつひとつを切り取ってみると、それらはどれも悔しいくらい、どちらかと言えば悪い意味で、現実味に溢れている。
何の前触れもなくある日突然入院することになって、そのまま起伏のない闘病の日々を過ごし、やがて最期の時を迎える。
病院を抜け出してみたところで、そこにドラマはありません。奇跡なんて起こるはずもなく、二人は当然助からない。
……まあ、でも。
こう言ってはなんですが、人間ってそんなものだと思います。
そんな他愛もない話を淡々と、しかし全力で書ききったのが、このナルキッソスという作品でした。

あまりにも救いのない、それでいて起伏もない話。飾り気のない文章。
でも、どうしてか考えさせられるものがある。

最期まで終わらせてみてひとつだけ気になったのは、果たしてこのライターはナルキッソスというゲームを通して、いったい何を語りたかったのかということ。
先程「ドラマ性」を排除しているように思える、と書きましたが、冒頭で一箇所だけ、ラストに繋がる伏線が語られてるんですよね。
盛大なネタバレになるので伏字にしておきますが、○○の○○○数についてです。勘のいい人はこれだけで気付くかも……?
ああ、そう来るんだ……と。
ラストシーンを読み終えて、なんだかこう、言い様もなく空虚な気持ちにさせられてしまいました。
それがプレイヤーに対するメッセージ……というわけでは、たぶんないんですよねー。
正直なところ、メッセージ性という要素は限りなく薄いゲームであるように思えました。
というのも、ナルキッソスは最初から最期まで一貫して、ひたすら「客観」した物語であるように思えたんです。
語り部となる主人公の心情はほとんど描写されず、ヒロインであるセツミに関してもまた同様。
この物語をどう受け取るかは、ほぼ完全に読み手に委ねられていると言っても過言ではない。
……と俺は読み取ったのですが、実際のところはどうなんでしょうか。あんまり自信はありません(笑)

と、つらつら書き続けてきましたが。
この「Narcissu」が名作であることは間違いないです。あの尺で、ここまで考えさせられるストーリーを書けるのは本気で凄いと思います。
前述のとおりフリーソフトとなっておりますので、興味のある方はぜひプレイしてみるのをお勧めしますよー。

seiha1016 at 00:45コメント(2)トラックバック(0) 
雑記 

トラックバックURL

コメント一覧

1. Posted by 有馬   2009年03月22日 04:41
5 よしやってみますナルキッソス。



あーとっくに御存知かもしれませんが、我々と同い年の小柳粒男さんのくうそうノンフィク日和シリーズはやばいですね。小説には作者自身の体験が核になっている、という話からすると、今まで一体どんな人生を過ごしてきたのかぞっとしましたw
2. Posted by 静波   2009年03月22日 07:46
よしやるといいよナルキッソス。

小柳粒男さんって同い年だったのか!
いやまったく知りませんでした。タイトルは知ってるけど実際に手に取ったことはないのよ。
有馬がそこまで言うからには読んでみねば……!

コメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価:  顔   星
 
 
 
最新コメント
最新トラックバック