独立行政法人「雇用・能力開発機構」が、おもに中学、高校生の職業意識向上のために建設した「私のしごと館」の昨年度収入が1億1000万円にとどまる一方、同館に常駐している機構職員27人の年間給与だけで2億4000万円かかっていたことが14日、分かった。
 全体の維持管理費は収入の20倍の約21億円に達し、差額は民間企業が支払う雇用保険料で穴埋めされる。識者からは「赤字の垂れ流し」との批判も出ている。

 「私のしごと館」は、様々な仕事の内容を子どもたちに知ってもらうための施設として、1993年に建設が決まった。土地代を含め、要した費用は約580億円。
「場所柄、全国から来る修学旅行生の利用が期待できる」(厚生労働省)などの理由から、京都府に建てられた。

 同機構は99年以降、所有していた勤労者福祉施設を1000円台などの破格値で次々と投げ売りし始めたため、「しごと館」については、その建設自体に批判が強かったが、これに加えて注目されていたのが、全面開館(2003年10月)後の収支決算だった。

 同館によると、昨年度の来館者の約7割は修学旅行や校外学習などによる学校単位の団体客だったが、訪れた学校数は、中学校が537校(全体の4・8%)、高校が389校(同7・2%)。都道府県別に見ると、10道県の中学、11県の高校は1校も、同館を訪れ
なかった。
 この結果、04年度の入館料などの収入は1億1089万円にとどまり、目標の1億6574万円の3分の2にとどまった。

 これに対し支出面では同機構から派遣されている職員27人の給与が計2億4726万円。1人当たりの平均年収は915万円に上る。民間企業からの出向職員や臨時職員分も含めると人件費は6億円を超え、情報システムの管理費3億8000万円などを加えた全体の年間維持費は約21億円に達していた。

 職業啓発については、文部科学省も近年、力を入れ始め、近所の職場を訪ねる「職場体験」などを推進している。県内で「しごと館」を訪れた中学は1校、高校は皆無だった埼玉県では、県教委の関係者が「地元でじかに現場が見られるのに、京都の郊外までわざわざ行って、模擬体験施設を見るという選択はなかなか取りづらい」と話す。
 こうした状況について、厚労省育成支援課は「職業に関する様々な情報が1か所で得られるのは全国でここだけ」と強調する。だが、ロボットアームを動かしたり、スタジオで原稿を読んだりして、「宇宙飛行士」や「キャスター」を疑似体験することの効果については、賛否が分かれている。

 作家の猪瀬直樹さんは「建設費などで膨大な保険料をつぎ込んだ上、毎年、赤字を
垂れ流すのは納得できない」と指摘、「国は雇用事業から撤退し、その分を失業保険などに回すべきだ」と提言している。
http://www.yomiuri.co.jp/main/news/20050415i101.htm
読売新聞 平成17年04月15日