お正月を迎えるたびに思い出す患者さんがいます。

20年足らず前の元日の朝10時ごろだったでしょうか。
新年を迎えてお酒を頂き、ちょうど良いくらいに酔いが回ってきた頃です。
98歳だったでしょうか、もう100歳を間近にしたおばあちゃんが顎関節脱臼の急患として来られました。
整復は何の問題もなくすぐ済みましたが、整復を終えて開口一番、「酒臭い息で患者を治すとはどういうことだ!」と怒られてしまいました。
その日を境に、お正月にはお酒を飲まない習慣が身につきました。
柔道整復師たるもの、いつでも急患に対応できるようにお酒を飲むのにも気をつけなければなりませんね。

太郎の顎関節脱臼の整復は口内法(Hippocrates法)です。

教科書に記載されている整復法は・・・「柔道整復学−理論編」P.119

ヾ擬圓鯒慍薜未泙燭郎前未砲気察頭部を前屈位にして保持させる。
⊇兌圓藁省貉悗縫ーゼを包巻し、患者の口腔に入れ母指腹を左右の大臼歯上に当て、他の四指は口外より下顎骨を把持する。
N省貉慂△粘暴に大臼歯を下方に押圧し、さらに力を緩めず後方に導くように圧していくと、わずかに関節頭が引き込まれるような感触が伝わる。
い海里箸、把持した下顎を前上方にすくい上げるように操作すると整復される。
(整復と同時に、術者は両母指を大臼歯の外側にすべらせる)

・・・とあります。

記述にするとこのような形になるのでしょうが、どの関節の脱臼における整復についても関節窩と関節頭の位置関係を把握し、関節頭がどのような軌道をたどって整復位に到達するかイメージすると良いでしょう。

また、脱臼の整復に際して行う牽引は、骨折の時のそれとは異なります。
学生の皆さんの多くが誤解しているのは、脱臼の時の牽引力は骨折の時のそれに比べて格段に弱いものであることでしょう。

さて、太郎が行う顎関節脱臼の整復は患者さんを背臥位とします。
両母指は患者さんの左右の大臼歯に当てますが、ガーゼは巻きません。
他の四指で口外から下顎骨を把持します。
患者さんにゆっくり口を開けるように指示します。
患者さんが口を開けようとする動作に合わせて両母指で大臼歯を下方に押圧し、下顎骨を下方に押し下げます。
両母指の下方への押圧を緩めることなく、患者さんにはゆっくり口を閉じてもらうように指示します。
患者さんが口を閉じようとする動作に合わせて、両母指や下顎骨に当てた四指が弧を描くように(船底式整復)下方から前上方に引き上げます。
この整復法では完全に整復されても、大臼歯で両母指がはさみこまれません。
整復操作は患者さんの開口動作や閉口動作と一緒に行っていますね。
ですから、整復位が得られても患者さんには自分の口には術者の指が入っている意識があるため噛まれることはないのです。

一般的な顎関節前方脱臼では、下顎歯列が上顎歯列より前方に転位していますね。
太郎がアドバイスした柔道整復師の人は、前述した記述よりも下顎歯列を上顎歯列に合わせるようにイメージして整復することができた人もいます。

また、どの脱臼でも言えることですが、患者さんの筋緊張は整復障害となりますね。
初めて顎関節脱臼を受傷した人の中には、ベッドに寝てもらってすぐ整復を行おうとするとうまくいかないケースがあります。
患者さんをベッドに寝かせて2、3分は放置しておいた方がリラックスしてもらえて整復障害をもたらさないでしょう。


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