柔道整復師のS先生から、「膝を負傷した患者さんの経過が思わしくないので、どのようにしたものか?」との問い合わせがありました。

一概に膝を負傷したと言っても分かりません。
骨損所見があるのか、側副靭帯損傷なのか、それとも半月板損傷などいろいろありますからね。

その患者さんを直接見ることができれば、必要な情報も得やすいでしょう。
でも、問い合わせであれば、S先生から得られる情報のみに頼るしかありません。

太郎:「性別は? そして、年齢は?」
S先生:「57歳の女性です。働いている人です」
太郎:「負傷原因は?」
S先生:「日常生活で痛みを感じたみたいです」
太郎:「どんな症状?」
S先生:「膝関節の伸展時に、引っかかったような感じと痛みを訴えます。屈曲時の疼痛は少ないながらあります」
太郎:「膝関節のどのあたりに痛みがあるの?」
S先生:「膝の外側ですね。外側上顆から腓骨頭にかけて。そこに圧痛を認めます」

施術録を見ながらでしょうか、上記のように答えてくれました。
以前のBlog「施術録−負傷原因の書き方」でもお話しましたが、この書き方では不備ですね。
単に「日常生活で痛みを感じた」だけでは健康保険施術を行う上で必要とされる「いつ、どこで、何をしていて、どの部位を、どのようにした」の何一つとて満たされていません。

負傷原因を分析することによって、ある程度は損傷を受けているもの(例えば半月板損傷であるとか側副靭帯損傷であるなど)の推測が可能です。
でも、こんな負傷原因では想像だにつきません。(>_<)

続けてS先生は、「半月板損傷を疑って徒手検査を行いましたが異常はありません。ただ、腓骨頭付近にまで圧痛が」と言います。

外側側副靭帯の走行







「外側上顆から腓骨頭に付く靭帯ってなかったですか?」と言う私の問いに対してS先生は「すみません!忘れました!」

どうやらS先生は、外側側副靭帯の走行を忘れてしまっていたようです。

膝関節の内反ストレステストは行っていなかったようです。
それでいても、圧痛を認める部位には何が存在するか見当が付けば、外側側副靭帯に病変があるのかな?って推測が付くように思えます。

人は皆、時間の経過に伴って記憶を失っていきいます。
でも、日ごろの施術において最低限必要とされる知識は維持しておきたいものですね。

免許を取得して臨床に携わり始めると、ついつい疎(おろそ)かになりがちな勉強。
しかしながら、仮にも人の身体を預かる身。
患者さんは、私たち柔道整復師を信じて、外傷に対する手当てを委(ゆだ)ねて来られるのです。

柔道整復師免許を取得した限りは、何十年もキャリアのある先生は元より、免許を取得して間もない柔道整復師であっても、患者さんから見れば同じ柔道整復師・・・プロとして見られています。

プロの名に恥じない心がけとその姿勢を保ち続けたいものですね。

【参考文献】
「膝靭帯損傷診断マニュアル」磯部饒監訳・メディカルサイエンスインターナショナル・1986年5月第1版第1刷
【補足】
S先生から得られた情報では、膝外側側副靭帯の走行に沿って圧痛を認めると言う所見があることが分かります。
ただ、膝の伸展に伴って引っかかる感じがあるなど外側側副靭帯損傷には見られない所見もあります。
従って、これだけの情報だけで病変を確定するのは難しいですね。
なお、今日のBlogでは膝の病変部位を特定するための考え方を書いたのではなく、これを例に卒後勉強の重要性をお話したものです。


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