84歳の女性Aさん(無職)が自宅敷地内で布団を干そうとした時、足元に敷き詰められた砂利に足を滑らせて転んだと言って来院されました。

「痛い場所はどこですか?」という問いかけに対してAさんは、右前腕部、左殿部、左大腿部、左足部と痛みのある場所を答えていきます。

以上の患部を聞くだけで、左側に転倒したことが推測できますね。

ただ、左側に転倒したのに右前腕部に疼痛を訴えるのは不自然ですね。

【画像 は、Aさんの右上肢です。

内反肘変形









【画像 


これを見ても分かるように、Aさんの肘は内反肘変形を呈しています。
でも、この変形は今回の受傷によって生じたものではなく、Aさんのお話では彼女が子供の頃、肘を骨折してその結果このように肘が曲がってきたとか。

Aさんはどうやら幼少の頃、上腕骨顆上骨折を受傷したことが推測できます。

内反肘変形は著明ですが、触診しても遠位骨片の伸展転位は僅かに残っているか(?)という程度です。
外観上でもそれは認められません。

伸展転位はほぼ整復位が得られていたか、それとも成長に伴って自家矯正されたと推測されます。

打撲による皮下溢血斑




【画像◆


【画像◆は、Aさんの右前腕尺側です。
中央部付近には皮下溢血斑が認められます。

Aさんの受傷は、太郎の接骨院を受療する3日前です。
受傷から2日経過して、右前腕の皮下溢血斑を見つけてその翌日、太郎の接骨院を受療したものです。

皮下溢血の色は、「赤→紫→青→黄→白」の順に変化していきます。
Aさんの前腕部に見られる皮下溢血斑の中央部付近が黄色味を帯びてきていることからも、受傷から数日経過していることが推測できます。

【参考】 「傷病判断の指針・・・腫脹と皮下溢血」

ところで、左側に転倒した場合は一般的に、左半身を受傷します。

Aさんは左側に転倒したのに右前腕尺側を負傷しています。
Aさんのお話では右前腕は何にも打ったりしていないとのことですが、左側に転倒した際、内反肘変形した前腕が何かによって打撲したのでしょう。

このような所見は、肘の変形(内反肘や外反肘など)がある人に多く見られる傾向です。

今回のAさんは自ら右前腕部の負傷についても訴えてくれましたが、側方に転倒して、その反対側の肘に変形(特に内反肘変形)がある場合は変形がある肘や前腕に負傷がないか確認すべきです。

Aさんの負傷原因は転倒によるものです。
転倒した場合は必ず、頭部を打っていないか確認することも必要です。

その問いに対してAさんは、頭を打った覚えはないと言いながらも、転んでから右側頭部が時々痛いような気がするとの訴えがありました。

また、頭頂部から左側頭部にかけて圧痛がありました。
これは、Aさんが自覚していなかった症状です。

自宅敷地内の転んだ方向にはブロック塀があるそうです。
もしかしたら、転ぶと同時に左側頭部を打撲したのかも知れません。

右側頭部が時々痛むことをはじめ、左側頭部の圧痛は、問診や触診を重ねていくことで得られた情報ですね。

頭部の打撲は痛みが著明であれば患者さんが自発的に訴えてくれますが、痛みを伴わなかったり、他の打撲部の痛みが著明な場合は訴え忘れていることが多いようです。

でも、頭部以外の打撲より、むしろ症状が軽微でも頭部打撲の方が重篤な結果を招きかねません。
それだけに、負傷原因が転倒である場合は元より、交通外傷や墜落によるものでは必ず頭部外傷の有無をチェックする必要があるでしょう。

頭部外傷があるからと言ってその全てを対診をする必要もないでしょうが、対診するのに越したことはありません。

Aさんのように、打撲部とは反対側の側頭部に疼痛を訴えるのは高齢者に比較的多く見られる症状です。
これは、頭部を支える頸部の筋力が弱いために起こるようです。

太郎が行う頭部外傷に対する判断は、まず‘部の疼痛の程度を見ます。
圧痛ではなく、自発痛で判断するでしょうか。

頭部の自発痛が強ければ速やかに対診を行います。

次いで、⊆傷前後の記憶を確認します。
交通外傷(自転車などによる転倒を含む)では逆行性健忘症となっていることもあり、その場合は相当な外力が頭部に働いていることが多いようです。
受傷前後の記憶が欠落している場合も対診しておくのが賢明です。

その他に確認するものは、以下のとおりです。

受傷後から頭が重く感じないか?(頭重感の有無)、気分が悪くないか?
疼痛とは異なり、頭重感を訴える場合は医療機関に対診すべきです。
また、気分が悪くないかも確認します。
気分が悪くなるのは受傷後24時間程度の間に多く見られる症状です。

ご擬圓気鵑量椶料阿暴兌圓亮┿悗鯲て、それをゆっくりと左右に動かしてそれを目で追ってもらう。
目で術者の示指が追えない場合や、眼球が振戦している傾向があれば速やかに医療機関に紹介すべきです。

ジ斉阿防埃然な点はないか?
付き添いに家族がいれば、家族に聞くと良いでしょう。
受傷後に、おかしな言動をするようになっていないか尋ねます。
また、付き添いがいない場合は患者さん本人に受傷時の様子をはじめ、昔の話、ここ数か月前の話、ここ数日前の話、来院当日の朝から今までの生活状況について聞くなどし、言動に不自然さがないか確認します。

84歳というご高齢でありながらAさんは、 銑イ里い困譴砲眤仗任鮃佑┐觸蠍が見受けられませんでした。

念のためAさんには、頭痛が増してきた場合はもちろん、受傷から2、3週間の間に家族の人から不自然な言動を指摘された場合は速やかに医療機関を受診するように伝えました。

また、今見る限りでは大丈夫なように思えるものの、ご心配であれば医療機関に対して紹介する旨を伝えました。

柔道整復師にとって頭部外傷は、思いのほか見落としがちです。
とは言え、必要に応じて頭部外傷について速やかに医療機関の受診を促す義務があると太郎は思います。(ー_ー)!!


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