72歳の女性Iさん(主婦)が、「左手が痛い!」と言って来院されました。

昨日のBlogでお話したように、柔道整復師が保険施術を行う上では必ず、負傷年月日や負傷原因を確認してそれを施術録に記載しておく義務があります。

太郎:「どうしたのですか?」

Iさん:「何もしていないのに、手が痛くなったんです」

患者さんの中にはこのように、疼痛を訴えて来るものの「何もしていないのに痛くなった!」と言う人がいますね。

何もしていないのに」ということを業界用語(?)では「無自覚に」と言います。

「無自覚に」というのは「自覚がないうちに(自覚をしないで)」という意味。
いつ、どのようにして負傷したか気付かない(無自覚)うちに負傷したということですね。

Iさんの手の痛みが無自覚のうちに生じたからと言って、それをそのまま受け止めてはいけません!

「無自覚のうちに痛くなった」というのは、言い換えれば「負傷原因が見当たらない(負傷原因がない)」ということです。

これでは外傷性に起因した傷病とは言えなくなり、保険施術の適応からはずれてしまいます。

時々、施術録の負傷原因欄に「無自覚のうちに○○を挫く」という記載をしている人を見かけますが、これは誤った記載方法です。(外傷性疾患とみなされません)

Iさんのように患者さんが無自覚のうちに痛くなったという場合、次のようなケースが考えられます。

負傷した時は自覚したものの、受療時には忘れてしまっている。
気がつかないうちに捻るなどして負傷してある。
負傷した事実が全くない。

,里茲Δ淵院璽垢呂△襪痢なんて疑いたくなりますが、例えば炊事中に流し台に突き指した場合などで、負傷にかかった外力が軽微であればあるほど忘れてしまうようです。

炊事仕事に追われているところへ、「あいたっ!」と一瞬だけ感じる程度の突き指をした場合ですね。
負傷した瞬間は覚えているものの気にも留めないためにすぐ忘れ、後になって指に腫脹があることに気付くなどして来院してきます。

,鷲藹したその時は自覚していましたが、△鷲藹の瞬間の自覚さえないものです。
靭帯損傷はその程度によって第1度から第3度までに分類されますが、第1度の靭帯線維が引き伸ばされただけのもの(微細断裂)に該当するものが多いでしょうか。

,汎瑛佑鵬燭蕕の外力が加わって負傷しているものの、負傷した瞬間の自覚がありません。
でも、時間や日数の経過に伴って疼痛などに気付いて来院するものです。

,よび△漏綾性疾患ですが、は負傷の事実がないものです。
非外傷性疾患となりますので、柔道整復師の保険施術の対象からははずれます。(保険施術を行うことができません)
例えば今回のIさんの傷病がこのに該当するとしたら、変形性関節症など整形外科領域のもので、医師の保険診療の適用です。

,筬△乏催する場合は、患者さんが申告した「何もしていないのに」という負傷原因(?)を鵜呑みにすることなく、具体的な負傷原因を突き止める必要があります。


Iさんの手を見てみました。

疼痛部位は左手関節周囲に訴え、圧痛はTFCC(三角線維軟骨複合体/手関節尺側裂隙)部に認めます。
手関節掌側から見ると、患側手関節全体に腫脹が認められました。
特に、尺骨縁位部の尺側には腫脹が確認できますね。
なお、背側からでは腫脹が確認できませんでした。
自発痛はないものの、手関節橈屈および背屈(伸展)で疼痛が誘発されます。
運動痛は特に、手関節橈屈痛に著明です。
また、Iさんの左手関節には特記すべき既往歴(Colles骨折や捻挫など)はありません。

左手関節尺側に腫脹を認める






さて、以上の所見を見る限り、Iさんの手関節痛は外傷性疾患である可能性が高そうですね。
でも、負傷原因を突き止める必要があります。

太郎:「どんなきっかけで痛めたんですか?」

Iさん:「きっかけも何もありませんねぇ」

太郎:「何をしている時、痛くなったのですか?」

Iさん:「何もしていないのに痛くなりました」

太郎:「いつ頃から痛くなったのですか?」

Iさん:「昨日から痛いんです」

太郎:「昨日の朝? 昼? それとも夜ですか?」

Iさん:「昼間だったかなぁ」

太郎:「どのような姿勢で痛いですか?」

Iさん:「こんな姿勢!」健側の手で患側手関節を橈屈させたり背屈させたりしています。

太郎:「日常生活で困ったことはどんなことですか?」

Iさん:左手を背中に回し、右肩甲骨下角をかくような仕草をしながら、「そうそう、こうして背中をかけないんですよ!」

Iさん:「昨日もこうして背中をかいた時から左手が痛くなって・・・」

太郎:(^^;


ようやく、負傷原因が聞き出せましたね。(^^;

私たちの考える負傷原因は、患者さんにしてみれば時として負傷原因と認識していません。

Iさんのケースでは、左手を背中に回し、右肩甲骨下角を指先でかこうとした際、母指球を背中につけるかたちとなり(手掌を背中に向け)手関節に尺屈が強制されています。

私たちにしてみれば、これが文句なしの負傷原因となるのですが、患者さんにしてみれば、ただ背中をかいただけとしか認識せず、これを負傷原因と考えないことが多いようです。

ですから、前述した,筬△両豺腓蓮患者さんにいろんな質問を投げかけることで、負傷したタイミングを思い起こしてもらうことが大切ですね。

患者さんから負傷原因を聞き出す技術とも言えるでしょう。(^^;

Iさんとの会話を見て頂いてもお分かりでしょうが、Iさんから負傷原因を聞き出すために太郎は、答えが得られない場合はまた質問の方向性を変えて質問を重ねていきます。

負傷原因を聞き出す質問には、次のようなものがありますね。

「どのようにしてケガをしましたか?」「どのようにして痛めましたか?」「きっかけは何ですか?」
「何をしている時、痛くなりましたか?」
「いつ頃から痛みがありますか?」「いつ頃から痛み出しましたか?」
「どのようにしたら痛いですか?」「どのような姿勢で痛いですか?」
「日常生活でどのような時に困りますか?」「日常生活で何がしづらいですか?」

負傷部位に応じて、具体的な動作を例示しながら質問するのも有効です。

(肩関節)「洗濯物を干すのに不自由はありませんか?」
(手関節)「座っていて、手を衝いて立ち上がるのには大丈夫ですか?」
(膝・足関節)「階段の上り下りに支障はないですか?」

患者さんから負傷原因が聞き出せない場合の極めつけ(?)には、「原因がない場合は保険施術できません!」と言えば、患者さんも一生懸命(?)になって負傷原因を思い出してくれることもありますね。(^^;


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