昨日のBlogでは、右第3手指基節骨の剥離骨折を疑う患者Fさんのお話をしました。

Fさんの症状には剥離骨折を疑う所見が見受けられましたが、症状も乏しく、Fさんの希望もあって対診を行いませんでした。(^^;

さて、ここで問題ですが、Fさんの指にもし骨折があった場合はどうなるでしょうか?


第17条【施術の制限】柔道整復師は、医師の同意を得た場合のほか、脱臼又は骨折の患部に施術をしてはならない。ただし、応急手当をする場合は、この限りでない。


柔道整復師法第17条には上記のように規定されています。
これに違反した場合は30万円以下の罰金に処せられます。(法第30条第二号)

法第17条に規定される医師の同意を得るために、柔道整復師は医療機関に対して対診を行います。
しかし、施術所を訪れる患者さんの全てに対して対診を行うわけではありませんし、そのように規定されてはいません。

脱臼や骨折に該当しない患者さんであれば、柔道整復師の判断に基づいて施術を行って良いわけです。

柔道整復師には診断権が与えられていないものの、施術所を受療した患者さんの傷病が脱臼や骨折に該当しないか判断が求められます。

医師の場合であればX線撮影など科学的な検査に基づいて診断ができますが、柔道整復師は徒手による判断が求められています。

転位のある骨折や脱臼ではX線撮影を行わずとも判断が容易ですが、徒手的な判断には限界があり、Fさんのような場合では鑑別に困難がつきまといます。

さて、患者さんの傷病が骨折と自覚しながら後療施術を行った場合は法的に「悪意(事情を知っていること)」と解されます。

この場合は法第17条違反に問われる可能性が高いでしょう。
ただ、患者さんに対して柔道整復師が対診を勧めたのにかかわらず、患者さん独自の判断でこれに応じなかった場合はその情状について配慮がなされるようです。

また、明らかに骨折を自覚しないまでも柔道整復師が骨折の存在を疑いながら医師の同意を得ずに後療施術を行った場合も法第17条違反に問われる可能性があります。
この場合も、骨折を自覚しながら後療施術を行った場合と同様に、患者さんに対して対診を勧めてあるかどうかが罰則適用の判断基準に影響します。

柔道整復師が骨折の存在に気づかず後療施術を行った場合は法的に「善意(事情を知らないこと)」と解されますが、この場合は当該柔道整復師に過失があったかどうか判断されるところです。
客観的に判断し、誰が見ても骨折を示唆する症状であれば柔道整復師の過失責任は増しますし、骨折を示唆する症状が乏しくて多くの者が見落としがちな場合であれば柔道整復師の過失責任が減るわけです。

過失責任の判断は、柔道整復師が記録した施術録等に基づきます。
従って、施術録には症状をはじめ対診を行った場合はその旨、対診結果が得られた場合はその結果、対診を勧めるも患者さんが対診に応じなかった場合はその旨など、万が一のときに備えて自分を守るための記録をしておかなければなりません。

なお、骨折を疑って患者さんに対診を勧めたのにもかかわらず、患者さんがこれに応じないまま数日施術を行ったケースで、その患者さんが何らかの理由で医療機関を受診して骨折が判明したという事例が以前ありました。

当該施術を担当した柔道整復師は骨折の存在を疑っていましたので、患部には副子固定を施したとのことです。

当該柔道整復師はこの患者さんの傷病名を捻挫として請求してありましたが、後の医療機関の受診によって骨折が判明したわけです。

事情を説明した結果、この柔道整復師に対しては、法第17条違反に問われることがありませんでした。
施術料については初検日に算定してあった(捻挫に対する)施療料が(骨折に対する)整復料に改められ、金属副子加算の算定が新たに認められたとのことです。
ただし、再検日以降の施術に関しては骨折の後療として認められず、捻挫の後療としてしか認められなかった(後療については骨折に変更されなかった)と聞いています。


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