上腕骨外科頸骨折は、「‘眦招森折」と「外転型骨折」に分類されます。

‘眦招森折
肩を内転して転倒し、肘を衝いて発生します。
近位骨片骨軸に対して遠位骨片骨軸は内転しています。

外転型骨折
肩を外転して転倒し発生します。
近位骨片骨軸に対して遠位骨片骨軸は外転しています。

学生の頃、このように覚えたことでしょう。
現在の学校教育現場でも、これと同じ分類が教科書に掲載され、それを元に講義が行われています。

ところが、現代の整形外科学では、その分類が異なってきています。
現在、骨折の評価や治療法の選択の上で用いられているのはNeer(ニアー)の分類(Neer's classification)です。

【Neerの分類(four-part分類)】(Neerによる/1970年)
上腕骨近位端部の骨折は、基本的に、「々頭」「大結節」「小結節」および「す幹」の4つのsegment(区分)の組み合わせによって成立しているものと考えます。(Codman)
この4つのsegmentが相互に1cm以上離開するか、45度以上回旋転位した場合に限って転位骨片として認め、1つの骨片が転位していれば2-part骨折、2つが転位すれば3-part骨折、3つが転位すれば4-part骨折とします。
転位が前述した規定以下の場合は、骨片の数にかかわりなく、minimally displaced fractureまたは1-part骨折として一括して扱います。
なお、骨頭自体が骨折して転位した場合はhead-splitting骨折、骨頭が圧挫・欠損したものはimpression骨折として別に分類します。

Neerの分類













【AO分類】(Jakobらによる/1984年)
Neerの分類と同様の解剖学的認識に基づいているものの、骨頭の血流状態、骨頭壊死の可能性をより重要視した分類となっているのがAO分類です。
ABCの3大分類に分けられ、さらにA1、2、3、B1、2、3、C1、2、3に細分類します。

A型は関節外骨折で、単純な骨折線を示すものです。
大結節骨折または小結節単独骨折や外科頸単独骨折などはこのグループに入ります。

B型は関節外骨折で、骨折線が2か所に見られます。
大結節骨折または小結節骨折と外科頸骨折の組み合わせがこのグループに入ります。

C型は関節内骨折で、解剖頸骨折と大結節骨折あるいは小結節の組み合わせがこのグループに入ります。

なお、B3とC3は、上腕骨骨頭が脱臼している場合です。

AO分類










新しい(現在の)整形外科学書を見ると、前述したような分類にとって変わっています。
近年の医学書では「以前に提唱された受傷原因や骨折の転位方向を指標とした様々な分類方法は、現在用いられることは少ない」と記載され、私たちが慣れ親しんだ分類については一切触れられていません。

とは言え、学校で用いる教科書をはじめ国家試験では、古い分類法が採用されています。
そのおかげで(?)、太郎が20年以上も前に購入した神中整形外科学が役立っています。
これには、上腕骨近位端部骨折を内転型骨折と外転型骨折に分類した理論が掲載されていますから。

でも、整形外科学は20年という歳月を経て新しい理論に遷り変わってきているのに対して、柔道整復学は20年前の理論のまま何の変化もないのでしょうか?
これこそが、日本古来の理論のまま引き継がれている証しなのでしょうか?

学問は不動の部分もあるでしょうが、時代の移り変わりと共に発見があり、新しい考え方や理論が構築されるものではないのでしょうか?

【補足】
今日のBlogでは上腕骨近位端部骨折の分類で、現在の整形外科学の上での考え方を紹介しました。
しかし、認定実技審査をはじめ国家試験ではこの分類法は採用されず、今もなお昔ながらの分類法が採用されています。
従って、学生の皆さんは教科書どおりの(古い)分類法で覚えるようにしましょう。
新しい分類法については、現在の整形外科学の上での分類として、予備知識として知っておくべきでしょう。

【参考文献】
「神中整形外科学」神中正一 著・天児民和 改訂/南山堂/第20版第9刷/1982年【絶版】
「神中整形外科学」杉岡洋一 監修/南山堂/第22版第1刷/2004年 【上巻
下巻

「骨折 ・ 脱臼」
冨士川恭輔 他編/南山堂/第1版第2刷/2002年
「骨折治療学」
水野耕作 他編/南江堂/第1版第1刷/2000年

【関連Blog】
「上腕骨近位端部骨折の分類の歴史」


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