小中学校ではこの時期、マラソン大会に向けて毎朝、早朝マラソンを実施しているところがあるようです。
1時間目の授業が始まる前に、生徒たちを運動場に出して何周か走らせます。

そのおかげで(?)、転んだり、足を挫いたりして来院する小中学生がにわかに増えてきます。
中にはマラソンをサボろうと(?)、痛くもない足を痛いと言って母親に連れ添われて来院する子どももいるようです。

何年か前のある日、小学6年生の男の子A君が膝に痛みを訴えて来院しました。

負傷日をはじめ負傷した時の様子は正確に覚えていません。
朝のマラソンを走った後に膝が痛くなると言います。
疼痛を訴える部位を尋ねると、右大腿部から膝にかけてをさするようにして「この辺りが痛い」と言うだけで、はっきりと部位が限定できない様子です。
腫脹や発赤など、外見上にも所見が見られません。
圧痛部位を探してみても圧痛を訴える部位はなく、自動的にも他動的にも運動痛を訴えません。

一見して、詐病(仮病)のようにも見受けられそうです。

太郎の接骨院に来院した今は、全く痛みがないと言います。
でも、朝のマラソンを走った後はしばらくの間、痛みが続いていると言います。
それでも、いつしかその痛みは忘れてしまっているようです。

付き添ったお母さんは、「この子は運動があまり好きじゃないものですから、どうせマラソンをサボりたいのでしょう! 学校から帰ってくるたびに今日も足が痛かった!なんて言っていますが、そのくせ帰るなり遊びに出かけているんですから!」と、A君の膝の痛みがいかにも詐病であると言わんばかりです。
それでも、ここ1週間ばかりは毎日足が痛いと訴えたので、念のためと思って太郎の接骨院に連れてきたようです。

もしかしたら、毎朝マラソンを続けていることによって、大腿部の筋に微細な断裂(損傷)が生じて痛みが出ているのかも知れませんね。
でも、それなら損傷部位に圧痛など、何らかの所見が見られるはずです。
また、股関節や膝関節の運動に伴って、少なからずの疼痛が見られてもおかしくはなさそうですね。

A君のように、ほぼ無自覚のうちに負傷して、大腿部や膝関節部に疼痛を訴える患者さんが来院した場合は、ことのほか注意して触診を行うようにします。
特に、損傷部位が明確でなく、来院時に症状が出現していない場合はなおさらです。

大腿骨の前面には太い大腿四頭筋があって見にくいのですが、四頭筋を弛緩させて、その深層にある大腿骨の前面を触診します。
極めてまれな確率ですが、大腿骨遠位前面にコブ状のものを触れることがあります。
そのコブ(腫瘤)は膝関節の屈伸を行っても四頭筋の動きに付随せず、むしろ大腿骨と一体化しているような感じがします。

腫瘤の状況まで把握できずとも、大腿骨遠位端部に腫瘤の存在を疑うようであれば、迷わずに対診を行うことが必要です。
これまでに太郎が経験した腫瘤の大きさは、つまんだ感触では直径2〜3cm程度の大きさでした。
それが、もっこりと盛り上がっています。
対診結果として返ってきた診断名は骨肉腫です。

骨肉腫であれば当然、低周波通電をはじめとする物理学的療法は禁忌となります。
診断の確定まではできなくて当然ですが、大腿骨遠位端部に何らかの病変の存在があることを見つけられなくては、それに気づかずに物理学的療法を施行し続け、後になって骨肉種の存在が判明しては責任問題に進展しかねません。

毎年、小中学校でマラソンが始まって、大腿部や膝部に痛みを訴える子どもたちが来院し始めるたびに昔の経験を思い出し、前述したような症状を訴える子どもには施術の都度、ことのほか触診を行いながら病変の存在がないか注意するようになっています。


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