柔道整復師の医療保険療養費支給申請(保険請求)の取り扱いにおいては、患者さんが柔道整復師に対して療養費の受領を委任します。
その委任契約を証する書面として、療養費支給申請書(レセプト)の委任欄に患者さんが署名(または押印)を行うわけですね。

さて、健康保険組合などの保険者によっては患者さん(被保険者)に対して、「柔道整復施術を受けた場合に行う署名は、申請書の記載内容を確認した上で行うように!」と指導しているところがあるようです。

このことについては、過去のBlog「「ムーブ!の疑問」から−療養費支給申請書に署名してもらうタイミング」でもお話したところです。
実際の話、患者さんが初検で来院した日がその月の最終施術日(月末)であればまだしも、ほとんどの場合はその月内にあと何回受療するか分からない状態で、その時点で支給申請書を仕上げることは不可能です。
また、月末を過ぎて前月分の施術内容が確定してから支給申請書を作成しても、その時点で患者さんがまだなお通院しているとは限りません。
支給申請書に施術内容が記載された後、患者さんから署名をもらおうとするのであれば、月末を過ぎて支給申請書を作成した後、それを保険者に提出するまでの短い間に患者さんの家を一軒一軒訪ねて回る必要さえ生じてきます。
何よりも、施術を行っても支給申請書に署名をもらえないのであれば、それをもらうまでの間は受領委任がなされていないわけですから、署名をもらうまでの間は保険施術が適用した一部負担金を徴収するのではなく、総費用額(10割額)を一旦立て替えてもらわなければならないことになりかねません。

柔道整復施術を受けた場合の療養費支給申請書に対する署名について、一部の保険者は支給申請書に記載された内容を確認の上署名を行うようにとする一方、柔道整復師側は上記の理由から物理的に無理が生じるとして施術月内の初回施術日において(施術内容が記載されていない白紙の支給申請書に)署名を求めていました。

こんな中、辻泰弘参議院議員(民主党)が10月2日、「柔道整復師による療養費の不正請求問題に関する質問主意書」をもって質問しました。

医療保険財政が逼迫する中、柔道整復師による療養費の公的医療保険への不正請求問題が大きな社会問題となっているとし、次のような質問を内閣総理大臣に行ったものです。

【以下、質問主意書から抜粋】


柔道整復師が患者に対して、支給申請書に具体的な記載をする以前に署名を求める、いわゆる「支給申請書の白紙委任問題」について、政府の把握状況を示されたい。
また、この白紙委任が不正請求の温床になっていると考えるが、この問題についての政府の具体的な対応方針を示されたい。

十三
柔道整復師の療養費の受領委任払いは、かつて整形外科医が大きく不足していた時代に患者の治療を受ける機会の確保等の患者保護のため特例的に認められたものである。
しかし、公的医療保険の財政危機が叫ばれ、医療制度の在り方が大きく論じられる現在、国民が安心できる医療提供体制の継続のためには、療養費の受領委任払い制度そのものの見直しが必要だと思われるが、政府の見解を示されたい。

これに対して福田康夫内閣総理大臣は10月9日、「参議院議員辻泰弘君提出柔道整復師による療養費の不正請求問題に関する質問に対する答弁書」をもって次のように回答しました。

【以下、答弁書から抜粋】

十について
療養費の支給については、患者から施術者への受領委任(保険者と柔道整復師により構成される団体又は柔道整復師との間で契約を締結するとともに、被保険者が療養費の受領を当該契約に係る柔道整復師に委任することをいう。以下同じ)の制度が認められており、柔道整復師の施術所がその申請書を作成するのが一般的である。
当該申請書については、療養費が一か月を単位として請求されるものであり、当月の最後の施術の際に患者が一か月分の施術内容を確認した上で署名を行い、これを作成することが原則であるが、柔道整復師の施術所への来所が患者により一方的に中止される場合があること等から、患者が来所した月の初めに署名を行い、当該申請書を作成する場合もあることは、厚生労働省としても承知している

厚生労働省としては、受領委任の制度については、患者が施術に係る費用の負担を心配することなく、その傷病に対する手当等を迅速に利用することを可能にする趣旨から認めているものであり、今後とも必要な措置と考えている。
今後ともその適切な運用について、関係者に対する周知に努めてまいりたい。

十三について
十についてで述べたとおり、厚生労働省としては、受領委任の制度については、患者が施術に係る費用の負担を心配することなく、その傷病に対する手当等を迅速に利用することを可能とする趣旨から認めているものであり、今後とも必要な制度と考えていることから、それ自体の見直しを行うことは考えていない

国(厚生労働省)としての見解では、患者さんが支給申請書に署名を行うタイミングは申請書に記載された施術内容を確認した上で行うのが原則であるとしながらも、この手続きは物理的に無理があるとして、実際の現場で行われている白紙の支給申請書に署名をしてもらうことについても承知している(認めざるを得ない)とするものです。

辻参議院議員は柔道整復師の受領委任払い制度そのものを見直すべしと政府に訴えたところでしょうが、結果的には私たちの行う事務手続きを正当化してくれることになったようです。


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