この春、太郎の学校を卒業したK先生から体験談が寄せられましたm(__)m

K先生は、接骨院に勤務する勤務柔道整復師です。
ある日、2歳の男の子がお母さんに連れ添われてK先生の接骨院を訪れました。

この日の昼、男の子は自宅で遊んでいたところ急に泣き出し、それ以来、右手を動かさなくなりました。
受傷の瞬間、お母さんは男の子から目を離していたため、どのような発生機序で受傷に至ったのかは定かではありません。

慌てたお母さんは、男の子を整形外科に連れ行って診察を受けさせました。
X線検査を行なった結果、異常は認められず、冷湿布の投与を受けるとともにそれで痛がっている部分(右遠位橈尺関節背側付近)を冷やすように指示を受けたそうです。
それでもなお痛がる様子に改善を見なかったため、同日、K先生が勤務する接骨院での受療となったようです。

(負傷原因)
不明。自宅内で1人で遊んでいるうち、急に泣き出した。

(K先生の元を受療するまでの経緯)
受傷直後に整形外科を受診。 X線検査によって異常は認められず。 冷湿布の投与を受ける。

K先生が診察した際、男の子は終始大声で泣いていました。
前述した様子だけで、K先生はやはり小児肘内障を疑いました。
鎖骨や上腕部に異常がないかも確認を怠らなかったと言います。
ただ、疼痛を訴える部位は肘にあらず、手関節(前腕遠位端部)でした。

ここで補足しておきますが、小児肘内障の病変は肘関節にありますが、疼痛を訴える部位は肘関節の場合もあれば前腕遠位端部に訴えることもしばしばです。
前腕遠位端部に疼痛を訴える患者さんの中には、肘関節部に疼痛を伴わないこともあります。

患者さん(子供)によっては、「手が痛い!」と言って前腕遠位端部を指差します。
それに対して小児肘内障の病変を説明すると、お母さんは「うちの子供は手(手首)が痛いと言っているのですが・・・」と言って、肘関節部の異常を疑う人さえいます。(^^;

K先生にとって小児肘内障の整復は初めての経験であったため、それとは分かっていながらも幾分、気が動転していたようです。

整復操作を行ったものの、整復音(クリック)は感じられなかったと言います。
患肢の挙上をもって整復確認を行ったと言います。
しかし、患肢の挙上はできたにもかかわらず、それでも泣き止まないばかりか、軽い物でも手に持たせると痛がってしまうと言います。

K先生から寄せられた相談は、「小児肘内障の患者さんは、患肢の挙上だけで整復が完了したと判断できないのでしょうか?」と言うものです。

結論から申し上げますと、小児肘内障の患者さんの整復確認は、患肢の挙上ができることをもって行ないます。
ですから、それができれば整復位が得られたと判断して問題ないかと思います。

ただ、太郎は以前、よその整骨院で小児肘内障と判断されて整復を受けたものの、それでもなお患肢を極力使わないようにしている(患肢の動きが変)として患者さんが訪れたことがあります。
この患者さんは、反復性の小児肘内障でした。
なるほど、患肢の挙上は問題なく行なえますし、疼痛を訴える部位もありません。

その時の太郎は「小児肘内障の整復を受けて、患肢の挙上もできるのだからお母さんの気のせいだろう!」などと思いながら、患者さんの手をとって小児肘内障の整復操作をもう一度、確認するつもりで行いました。
記憶が定かではないのですがその時、前腕は回内外できるものの、小児肘内障の整復に際してクリックを感じる回内角度(またはその回内角度よりややさらに回内位)に幾分の抵抗を感じ、それを感じると同時に小さな(?)クリックを感じました。

ややこしい表現で申し訳ございませんが、太郎の前に受けた小児肘内障に対する整復は恐らく、不完全であったのではないか?と思います。
でも、太郎が整復(?)を行う時点では、すでに患肢の挙上はできていました。
症状は非常に乏しく、患肢を極力使わないようにしていると言ったお母さんの訴えだけです。
その時もう少し注意して観察すれば良かったのですが、恐らく、前腕回内可動域を健側と比較すれば差異が生じていたのかも知れません。

またここでも補足になりますが、小さな子供を患者さんとして連れて来た時、お母さんの発する言葉には多くの場合、重要なキーワードが隠されています。
前述した「患肢を極力使わないようにしている」というお母さんが見た所見は、必ずや何らかの異常の存在を示唆していると言っても過言ではないでしょう。
お母さんの見た所見が必ずしも正しいわけではありませんが、お母さんの訴える話は特に重視して診察に当たるべきです。

さて、先ほどの男の子ですが、太郎が整復(?)を行なった後、途端に患肢を動かすようになった旨、お母さんが言いました。
「あっ、今まで動かさなかったのに、腕が動くようになっています!」と、その場でお母さんが言ったのです。
整復後(?)、男の子の腕の動きを見ただけで、それが正常に戻ったことを感じるお母さん。
母親というものは、子供の一挙手一投足を逃さずに見ているのでしょうね。
それだけ観察眼が研ぎ澄まされているのでしょう。

K先生が見た患者さんも、小児肘内障の整復を行った後、患肢の挙上ができるようになりました。
しかし、患肢の挙上ができるようになったものの、物を手に持つと痛がると言います。
手関節捻挫を合併していたのでしょうか?
残念ながら、手関節の掌背屈などに支障があるかは確認できていません。

K先生に太郎は、お母さんに電話をして、その後の様子を尋ねるように言いました。
そして、もし相変わらず患肢を動かさないようであればもう一度来院してもらい、再度整復を試みるべきである旨伝えました。

患肢が元通りになっている場合は2つのケースが考えられます。

1つは、整復を行った際、整復位が得られてあったものの、それまでの疼痛が余韻として残っていた場合。
これは、小児肘内障を受傷して、整復を行うまでの時間が長かった場合に起こりやすい症状です。
以前、小児肘内障を受傷してから21時間ほど経過して整復した時、その後数時間ばかり患肢をあまり動かさなかった経験があります。

もう1つは、前述したように整復が不完全であった場合。
この場合は、前腕回内および回外ができるものの、最大回内に若干の抵抗があるでしょう。
従って、もう一度整復操作を行います。
そして、前腕が最大回内できるか?、健側と比較して同じように回内できているか確認すべきでしょう。

太郎の経験ではありませんが、患肢が挙上できても不完全整復であった場合、時間の経過とともに整復されるという話も聞いたことがあります。
整復後はしばらく患肢を動かさないのですが、1日もすれば元通りに動かすとのことです。
なお、自然整復されるのは小児肘内障の整復が不完全整復であった場合だけであって、整復操作を全く行わなければ自然整復はされません。

小児肘内障の整復確認として患肢が挙上できるようになったか見るのは大変有名ですが、やはりそれだけに頼らず、前腕回内外の可動域も復元されているか確認する必要がありそうです。


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