先日のBlogでは、Hさんから寄せられたご相談を元に肘内障の発生についてお話しました。

肘内障の発生機序は一般に、腕を引っ張られることによって発生すると言われています。

子供を手前に引き寄せようとして、親が子供の手首や前腕を持って引っ張った時。
子供と手をつないで歩いていて、子供が転びそうになったり、子供がふいに異なる方向へ行こうとして、つないでいた手を引っ張った時。
子供に衣服を着せる際、袖を通した腕を引っ張った時。

肘内障の多くは、以上のように子供の腕に引っ張る力が加わって発生します。
また、これらのいずれもが、発生に際して第三者(親など)による外力が加わっています。

だったら、第三者がかかわりさえしなければ、肘内障は発生しない?

いいえ、そんなことはありませんでしたね。
第三者による外力が作用せずとも、本人の動作だけでも発生することを先日のBlogでお話しました。
この時もやはり、肘には牽引力が作用するようですが、それだけではなく、捻れの力も関与しているようでした。


さて、症例として取り上げたYちゃんは、肘内障の整復を受けた後もなお、痛みを訴えて腕を動かさなかったと言います。
でも、患肢でおもちゃを握っていたと言います。

一般的に、肘内障は整復位が得られると同時に痛みはなくなり、途端に腕を動かせるようになります。
ですから、肘内障の整復確認には、腕を挙げることができるか(バンザイができるか)をもって行われることが多いですね。

中には、整復確認を目的に、子供のやや前上方でぬいぐるみやキャンディーをちらつかせ、それを取ることができるか確認する先生もいます。
ただ単にバンザイを促しても、子供はやってくれない可能性があるからでしょうね。

バンザイをしてもらうのは、何も子供による自動運動でなくても整復確認が可能です。
幼児であれば恐らく、お母さんが膝の上に座らせるなどして抱いているでしょうから、整復確認として、お母さんに子供の手を持ってもらってバンザイをさせてもらっても構いません。
整復位が得られていない肘内障では、他動的にバンザイをさせると著明に痛がります。

ただ、肘関節の屈伸ができているからと言って、整復位が得られているとは限りません。
肘内障を受傷した場合、前腕の回外制限は強く現れますが、肘の屈伸運動が(制限されながらも)可能なことがあるのです。

これは、第15回国家試験にも出題されていますよ!(平成19年3月実施/午後の部・問題90)

肘内障で誤っているのはどれか。
1. 軽度の肘関節運動は可能である。
2. 肘関節過伸展強制で発生する。
3. 鑑別診断として鎖骨骨折が挙げられる。
4. 前腕の回外運動制限が認められる。


この問題の正解は、「2」ですね。

この問題における選択肢1は、「肘内障では肘関節の屈伸運動が障害されないことがある」という知識があるか問うものです。

「肘内障では上肢機能が全廃するのでは?」とか、「肘関節の屈伸運動もできなくなるのでは?」と誤解している人が多いからでしょうね。


太郎も以前、肘の屈伸制限を一見認めない子供で、あやうく肘内障を見落としかけた経験があります。

その子供は、お母さんが前腕遠位端部を持って引っ張ってから、その持った部分に痛みを訴えているとして受療したものです。

前腕遠位端部に痛みを訴え、肘には痛みがないと言います。
痛みによるせいか、腕を自発的に動かそうとしません。
でも、お母さんに抱きついた子供の腕を見ていると、肘は屈曲して動かせています。
手では、しっかりとお母さんの衣服をつかんでいます。


ところで、肘内障の症状には前腕回外制限というのがありますが、子供によって(多くの子供?)はなかなか確認できないんですよね。(^^;
肘関節の屈伸制限も同様です。

肘内障を受傷した子供は、痛みのせいで?、それとも接骨院(医療機関)という何か怖いところに連れて来られたという恐怖心?、はたまた白衣を目にしてかも知れませんが、パニック状態に陥るようですね。
もしかしたら、太郎の顔を見てパニック状態になっているのかも知れません。(ーー;)
「これから何をされるんだ!?」、「どんな痛いことをされるんだ!?」・・・という恐怖感からでしょうか?

パニック状態になった子供は、火事場の馬鹿力と同じで(?)、予想をはるかに上回る力を出します。
だから、検査しようと患肢を手に取ろうとしても、びくともしない!

前腕は、回外制限どころか回内外において、まるで(関節軟骨損傷にみられる)嵌頓症状(locking現象)を呈するがごとく、ウンともスンとも動かない!
肘関節の屈伸運動にしても同じ!
いずれも、子供が力いっぱいに、前腕を回内外または肘を屈伸できないように踏ん張っているわけですね。


太郎が経験したこの子供のケースでは当初、肘内障は疑っていませんでした。
これは、お母さんに抱きついている患肢の動きを見る限りの推測です。

でも、疼痛を訴えた前腕遠位端部に症状所見が認められなかったので、念のため(?)と思って肘内障の整復操作を行いました。

そうすると、整復音(click)が!
その途端、子供は疼痛を訴えなくなりました。


なお、肘内障を受傷した子供が疼痛を訴える部位は、患部(肘)とは限りません。

子供によっては前述したように、前腕遠位端部(または手関節部)に訴えることも少なくありません。この時、患部である肘には疼痛を訴えないことさえあります。
肘内障は肘に病変があるにもかかわらず、一般に「手が抜けた!」と言われる由来でしょうね。


そのような経験を経た今、太郎は、上腕骨顆上骨折などは例外として、肘内障ではなさそうな子供であっても肘や前腕に疼痛を訴えて受療した場合は、お決まりのように肘内障の整復操作を行うようになっています。(^^;


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