鎖骨の脱臼は、外傷性脱臼のうち約5%を占めるといわれています。

鎖骨の脱臼のうち約90%は肩鎖関節上方脱臼といわれますが、今日はあえて症例としては少ない胸鎖関節脱臼に着目してお話を進めたいと思います。

おさらいになりますが、胸鎖関節脱臼は「〜以脱臼」「後方脱臼」「上方脱臼」の3つに分類されます。
この中で「〜以脱臼」がもっとも多発し、その多くは完全脱臼といわれています。

理論編教科書ではその発生機序として・・・
1) 肩または腕に対して働く後方への過度の介達外力によって起こる。
2) 物を投げるなどの動作の際の筋力作用によって起こる。
・・・と記されています。

このほかに、「図説 骨折・脱臼の管理()」(DePalma)では胸鎖関節脱臼の発生機序として、【図1】のようなものが挙げられています。

胸鎖関節脱臼の発生機序



【図1】胸鎖関節脱臼の発生機序


「転倒した際、片方の肩をつくようにして転ぶことが多い」とこの本では記載されているのですが、スポーツ外傷では、このようにして倒れることが少なくないでしょうね。

片方の肩をつくようにして転んだ際、もう片方の肩(上になった方の肩)に、(スポーツでは)相手選手が倒れこんできたとします。

この際に、胸鎖関節脱臼が発生しやすいといわれているのですが、さて、あなたならどちらの胸鎖関節が損傷されると推測しますか?

【図1】では、左肩を地面につくようにして倒れています。
そこに、上になった右肩の上に、相手選手が乗ってきたわけです。

このとき脱臼が生じる胸鎖関節は、地面に近い左側であるとされています。

DePalmaによれば、【図1】を掲げながら・・・
患者は、一方の肩から転倒することがもっとも多い。
他の人が患者の他方の肩の上に倒れ、外力は地面に近い方の胸鎖関節に吸収される。受傷時の肩の位置と外力のベクトルにより、鎖骨は前上方、前下方あるいは後方の3方向のいずれかに転位する。
・・・と記されています。

外力は上になった右肩の方から働くのですが、介達外力として作用が及ぶのは外力が働いたところに近い(上側の)胸鎖関節ではなく、遠い(下側の)胸鎖関節というのです。

これは、左肩を下にして転んだ患者さんの身体は、上になった右肩の方では前後や上下にある程度動かせる(外力を逃がせる)のに対して、下になった左肩の方は地面でいわば固定されているかたちとなり、外力を逃がせるだけの余裕がなくなっているからと考えられます。

DePalmaに記された発生機序と関連があるのかどうか定かではありませんが、太郎が経験した胸鎖関節損傷の患者さんもまた、側臥位になった際の下になった方の胸鎖関節に損傷が生じています。

太郎が経験した患者さんは56歳の肉体労働者で、夜に寝ようとして床に横になった(右側臥位に寝ようとした)際、いくぶん勢いがついていて、右肩を床につけると同時に右胸鎖関節部に痛みを覚え、太郎の接骨院を訪れたものです。

この患者さんの鎖骨内端部は、健側に比較してやや突出していました。
とはいえ、脱臼というほどのものではありません。

この患者さんとは別に、無自覚に胸鎖関節部に疼痛を訴えて来院するケースも時としてあります。
鎖骨内端部に圧痛を訴えたり、腹臥位において胸鎖関節部が床に当たって痛いなどの訴えを認めます。
いずれも、前述した胸鎖関節損傷の患者さんのように、健側の胸鎖関節と比較すると鎖骨内端部がやや突出しています。

太郎の経験上、この症状は中高年層の肉体労働者に多発するように思えるのですが、このことについて文献には記載がありません。

太郎が経験した、胸鎖関節部に疼痛を訴えた患者さんの経過はあまり良くなく、症状が緩和するまでに日数を要しがちです。
いずれも肉体労働者で、患部の安静を保つことも難しかったこともその理由の一つでしょうが、この部位の固定はテーピングなどで固定しても、十分な固定が得にくいようです。

それでも経時的に、損傷された胸鎖関節部で結合組織によって癒合するのか、ある一定の(?)時期が経過するといつしか疼痛がなくなってきます。
鎖骨内端部の前方突出は残ったままですけどね。

【参考文献】
「図説 骨折・脱臼の管理()」【絶版】
DePalma/Connolly 阿部光俊監訳
廣川書店/第3版/昭和59年3月



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