高校生から大学生にかけての年代(16〜22歳)の女子では、下肢に痛みを訴えて来院することが多いようです。

受傷機転を聞いていると、そのほとんどがハイヒールなど踵の高い靴を履いていて、亜急性に発症しています。

疼痛部位は母趾MP関節(内側または底側)を主にその他の足趾MP関節(底側)、足関節前方、アキレス腱部、前脛骨筋部、膝関節部とさまざまですが、いずれも踵の高い靴を履くことに起因しているようです。

また、太郎の治験上では初期の疼痛は末梢部に始まるものが多く、症状の進行に伴って中枢(膝関節周辺)に及ぶように思われます。

足趾MP関節部や足関節付近など末梢部に痛みを訴える程度では症状はまだ、疼痛や局所的な発赤などにとどまりますが、疼痛が膝関節付近にまで及んでくると、膝は次第に反張膝を呈していくようになります。

反張膝







【図1】反張膝


膝関節は、まっすぐ伸ばした状態(伸展)が0度で、曲げる(屈曲)方向には130度程度屈曲させることが可能です。
まっすぐ起立した状態であれば0度になるのが一般的ですが、女性の中にはまっすぐ起立すると過伸展の状態となっていることもしばしばです。
そのように、膝関節を伸展位にして0度以上に過伸展できる状態となった膝を反張膝(「はんちょうひざ」または「はんちょうしつ」)と呼びます【図1】

膝の過伸展がわずかであれば(文献によっては10度程度までであれば)支障を来たさないものの、あまり過伸展位ともなれば筋のバランスが取れなくなって疼痛を引き起こしたりすることもあります。

反張膝を形成する要因には、先天性のものや後天性のものをはじめ数多くのものがあります。
中でももっとも多い原因は、足や足関節の底屈による尖足に由来したものといわれています。

ハイヒールを履いた時の足関節は、いわば底屈位に固定された状態といえますね。

通常、歩行するにあたっては、足関節には背屈(伸展)運動が要求されます。
【図2】を見る上でも、歩行周期における立脚相、遊脚相のいずれにおいても、正常な歩行には足関節の背屈運動が必須となっています。

ところが、ハイヒールを履いてしまうと、足関節は底屈位にギプス固定されたのと変わりなく、一生懸命に背屈を試みてもせいぜい0度(直立した状態)程度です。

歩行周期

【図2】歩行周期

また、ハイヒールを履いたままですと、立位を取る際でも足関節は底屈したままです。
通常の立位での荷重は足趾球、小趾球および踵の3点を中心に分散されますが、ハイヒールを履いた立位では母趾MP関節や母趾頭部など、足底でも足先の方に荷重が偏ります。
従って、ハイヒールを履いた状態での荷重は、通常より前の方にかかることになります。

ここで簡単な実験をしてみましょう。
ちょっとお行儀が悪いのですが、本を重ねて7〜8cmの高さにします。
その本の上に、両方の踵だけを載せて立ってみましょう。
ハイヒールで立った状態と同じですね。

普通に立ったときよりも、荷重が足趾MP関節付近にかかっているのがお分かりでしょうか?
ハイヒールを日ごろ履かない男性では、足関節を底屈し、MP関節で支えて立位を保持しようとするのは、できなくはないものの、不安定感がありますね。
特に、その肢位で膝をピンと伸展させると不安定感は増すでしょう。

踵の下に本を入れていないときと比較して、重心が前に移動したのが分かりますか?
踵の下に本を入れて足関節底屈位で立ったり、本をなくして足関節中間位で立ったりして、それぞれを比べてみましょう。

重心が前に移動したというのは、立った姿勢でおへその辺りを見て、おへその位置が前に移動したということです。

また、踵の下に本を入れて立ち、足底への荷重のかかり方を感じてみましょう。
膝をピンと伸ばして立ってみたり、膝を少し曲げても立ってみましょう。

さて、足関節が底屈位のままで歩こうとすると、重心の位置を前方に移動させてバランスを保とうとします。
膝が、過伸展位になろうとするわけです。
結果として現れるのが反張膝。

近ごろの若い女性は足が細くて長く、それを強調するためにか(?)、これからの季節は特にハイヒールなどが流行し始めます。

亜急性に足趾MP関節付近に痛みが発症し始めた頃は、いわば前兆。
これを見過ごしてハイヒールを履き続けると、反張膝をもたらす可能性だってあるのです。
なお、ハイヒールによって発症した反張膝は、ハイヒールを履くことを辞め、正しい歩行を指導することによって比較的スムースに治ります。
とは言え、それに至るまでには前述した箇所を中心に、荷重バランスの異常を訴えるシグナルのように痛みが発生し、時にはフランスヒール骨折など、急性的に発症する外傷のトリガー(引き金)ともなりかねません。

【参考文献】

「膝の痛みと機能障害(原著第3版)」(*)
 レネ・カリエ著 荻島秀男訳/第3版第6刷/医歯薬出版/4,200円+税/2002年9月

「膝痛 知る 診る 治す」
 宗田大/第1版第1刷/メジカルビュー社/8,500円+税/2007年10月

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