先日、「足関節捻挫の診察の進め方」でお話した女子中学生A子ちゃんについて、今日は異なる視点からお話を進めましょう。

A子ちゃんは太郎の接骨院を受療する4日前に受傷して、近所にあるB接骨院を受療しました。

A子ちゃんの傷病が、前距腓靭帯のみならず、前脛腓靭帯まで損傷していたことは先日のBlogでお話しました。

ひとことで捻挫といってもその病態はさまざまで、程度の軽いものから重いものまであるでしょうね。
A子ちゃんの呈する跛行や、損傷した靭帯(前脛腓靭帯)をみる上でも、A子ちゃんの傷病は捻挫の中でも比較的重い方に位置づけられるかも知れません。

一般的に、前脛腓靭帯を損傷した場合、捻挫の程度は比較的重い方に位置づけるべきだと太郎は考えます。
なお、ここでお話している捻挫の程度は、いわゆる第1度損傷(微細断裂)、第2度損傷(部分断裂)、第3度損傷(完全断裂)をいっているのではありません。
単に、呈する症状をはじめ、治癒に至るまでの経過などを踏まえていう捻挫の重傷度です。

受傷から4日を経過した患部には、少なからずの腫脹を呈していたとはいえ、著明なものではありません。
また、皮下溢血も認められませんでした。

初検時に腫脹が認められたのかどうかはA子ちゃんに聞いてもはっきりとしませんが、前脛腓靭帯の損傷を疑う場合は、最低でもテーピング、程度によってはプライトンなどによる副子固定を施した方が良さそうです。

B接骨院での初検時当初から、歩行荷重に疼痛を覚えて跛行を呈していたといいますから、同接骨院ではテーピングを施行したものと思われます。

しかし、それでもなお、日を追うごとに痛みが増してきたといいます。
それを不安に感じて太郎の接骨院を受療したようです。

患者さんというものは、ちょっとしたきっかけを元に、接骨院(柔道整復師)に対する信頼をなくしてしまうものです。

開業柔道整復師であれば、接骨院に対する患者さんの信頼を得続けることが大切です。

今回A子ちゃんが太郎の接骨院を受療したのは、B接骨院を受療したA子ちゃんの、同接骨院に対する信頼が傾いてきたことに一因がありそうです。

初検から4日経過して痛みが増しても、A子ちゃんがそれでもなおB接骨院に対して信頼を寄せているのであれば、続けてB接骨院を受療するものと考えます。

それでは何が、A子ちゃんの信頼をなくしてしまったのでしょうか?

いうまでもなく、それはA子ちゃんの足の痛みが、B接骨院での初検時よりも増してきたことにあります。

さて、B接骨院に対するA子ちゃんの信頼は、A子ちゃんの足の痛みが増強してきたことにあるのだから、これは不可抗力でしょうか?

そうではないでしょう。

まず、前距腓靭帯捻挫に加えて前脛腓靭帯捻挫も合併していること(捻挫の中でも重傷度が比較的高いこと)に気づいた上で、その旨をしっかりと患者さんや保護者に説明することが大切です。

また、再検日以降に受療してもその都度、症状所見や今後の見通しなどを説明しておくべきです。

子どもによっては、保護者に付き添われて受療する場合があります。

子ども(患者さん)の年齢にもよりますが、子どもに対しては子どもに分かる言葉で、必要最小限度の情報を伝えます。(例えば、損傷部位を指で示すとともに、走ってはいけないなど)

同時に、保護者に対しては、できるだけ詳細に症状所見を説明した上で、治癒までの見通しを伝えます。

保護者の人たちは、子どもさんのケガについて心配なのは当然です。
多くの保護者の人たちは、骨損傷の有無について心配を募らせています。
中には、X線診断を希望される保護者の人もいます。

保護者の人がX線診断を希望される場合は、明らかに骨損所見が認められないケースであっても、保護者の希望を優先して、依頼状を作成(対診)してあげるのがお勧めかと思います。

何年も前、太郎の元を受療した子どもさんのお母さんは、明らかに骨損所見を認めなかったため対診せずに施術を継続する太郎に、受療の都度、「骨は大丈夫でしょうか? レントゲンを撮らなくても良いでしょうか?」と繰り返し訴えました。
確かこの患者さんは1週間も施術しないうちに治癒したのですが、日を追うごとに症状が軽くなっていっているにも関わらず、X線診断を希望されたのです。

施術を終了した日(治癒日)になってようやく、「あ〜、やっぱり骨は大丈夫だったんですね。レントゲンを撮らなくても良かったのですね」と、おかあさんが安心した顔を見せてくれたのは今でも記憶が鮮明です。

このおかあさんは、太郎の接骨院に子どもさんを通わせ続けてくれましたが、施術を終了するその日まで、子どもさんのケガが不安で仕方なかったのだろうと思います。

施術終了日のおかあさんの安心した様子を見て太郎は、初検日に一旦対診して骨損所見がないことを診断してもらった上で施術を行っていた方が、おかあさんにしてみればもっと早いうちから安心して子どもを通わせることができただろうと感じました。

明らかに骨損所見を認めない患者さんを対診するのは気が引けるかも知れません。

でも、整形外科では「どのような不測の事態にでも備えるため、見た目では明らかに骨損所見が認められなくてもX線診断は必ず行うものだ」と整形外科の先生から聞きました。

前述したような明らかに骨損所見を認めない患者さんを対診しようとする場合は、依頼状に、「著明な骨損所見が見当たらないのですが、保護者がX線診断を希望しておりますのでご高診のほどお願いします」と記載しておけば良いでしょう。


お話がちょっとそれてしまいました。

A子ちゃんとその保護者が、受傷時に受療したB接骨院への通院を中断して太郎の接骨院を受療した理由の一つには、B接骨院の先生の説明不足にあったようです。

その証拠に、A子ちゃんの足を見た後、A子ちゃんとその保護者を前に太郎が説明を行ったところ、「B接骨院ではそのような説明をしてくれなかった」と不満をもらしました。

B接骨院でも恐らく説明を受けたのでしょうけれども、説明を受ける人たちが理解できる言葉(用語)で、またその人たちが必要としている情報量を満たす必要があります。

前述したように、患者さんが子どもさんである場合は特に保護者の人が心配を募らせていますから、成人の患者さんに対して行う説明よりもより丁寧に詳しく行う必要があるといえるでしょう。

A子ちゃんやその保護者に対して行った説明は、だいたい以下のようなものだったでしょうか。

・ 一般的な内反捻挫によって損傷される前距腓靭帯の損傷のみならず、脛骨と腓骨を引き寄せている前脛腓靭帯も損傷していること。
・ 前脛腓靭帯の損傷を伴った場合は一般的な捻挫よりも治癒までに日数を要すること。
・ 歩行したり立っているだけでも距骨からの突き上げで前脛腓靭帯には引っ張られるストレスが加わること。
・ 程度が強ければ、遠位脛腓関節に離開を伴うこと。(脛骨と腓骨を互いに寄せ合うように圧迫すると雑音を生じるが、A子ちゃんの場合はそれがほとんど認められないこと)
・ 程度が強ければ、プライトンとテーピングの併用や、プライトンまたはギプス固定もあり得ること。
・ 現在の腫脹の様子から判断して、テーピング固定を行うのが適当であること。
・ 今後の経過を見てあまりにも思わしくない場合は、プライトンとテーピングの併用による固定に切り替える可能性もあること。
・ 歩行荷重時の痛みが和らぐまでには1、2週間、治癒するまでにはおおむね3、4週間を要すること。
・ 歩行荷重時の痛みが和らぐまではスポーツ活動を控えることは元より、歩行もできるだけ控えることなど。


以上のようなことを、この人たちに分かるような用語(例えば「スジ」などという表現)やゼスチャを用いて説明しました。

このように、患者さんに応じては、十分な説明(インフォームド・コンセント)を行うことによって患者さんやその保護者が求める情報を満たしてあげることが必要です。


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