骨折の存在をX線によって知るのは医師の手法です。

対して私たち柔道整復師は、骨折の存在をX線に頼ることなく、視診や触診によって判断しなければなりません。

見るからに手や足に変形を認めたならば、それは何も柔道整復師に限らず骨折を疑うことができるでしょう。

中には、見た目では骨折かどうか判断がつきにくいものもしばしば遭遇します。

このような時、あなたは何に一番主眼を置いて、骨折の存在を見極めますか?

疼痛は、人によって感じ方がさまざまです。
Malgaigne(マルゲーヌ)骨折痛と呼ばれるように、骨折以外の外傷に伴う疼痛よりレベルが異なると言われています。
しかしながら、患者さんの訴える疼痛に主眼を置いても、それだけでは骨折の存在を見極めることは難しいでしょう。

腫脹ではどうでしょうか?
骨折にみられる腫脹は、骨折を伴わない外傷に比較して著明に出現すると言われています。
上腕骨外科頸骨折や顆上骨折、橈骨遠位端部骨折、下腿骨骨折などが完全骨折で、しかも転位を呈しているものであれば腫脹も著明です。
しかしながら、不全骨折や転位傾向が軽度なものでは、完全骨折ほど著明な腫脹が認められないことが多いですね。(初検時のお話)

骨折の固有症状には、軋轢音があります。
軋轢音の存在は、骨折の存在を示唆します。
しかしながら、軋轢音が認められないからと言って骨折の存在を否定することはできません。
不全骨折はもちろん、完全骨折であっても噛合骨折などでは軋轢音を触知することができません。

多くの柔道整復師が、骨折の存在を判断する指標の一つとするのは圧痛ではないでしょうか?
圧痛は骨折に限らずみられるものですが、骨折にみられる圧痛は、骨折以外の外傷にみられるそれに比べて著明で、Malgaigne圧痛と名づけられているほどです。

圧痛も、前述した疼痛と同じで、患者さんそれぞれによって感じ方が異なるのでは?と思われますね。
確かに、過敏な患者さんには圧痛が著明にみられ、我慢強い(鈍感な?)患者さんでは著明でないかも知れませんね。

中には、症状を大げさに見せようと(?)、わざと痛がる患者さんもいるかも知れません。
従って、圧痛をもって骨折の存在を判断しようとする場合は、まず「(1)本当に圧痛が存在するのか?(患者さんが過敏に反応していないか?)」を判断し、次いでその圧痛が「(2)骨折の存在を示唆する圧痛(Malgaigne圧痛)なのか?」を見極める必要があるでしょう。

本当に圧痛が存在するのかどうか見極める方法は、その圧痛点を押圧した時の患者さんのリアクションを見ます。
リアクションに疑いを感じる場合は、その圧痛点を覚えておき、それ以外の部位で圧痛点がないか確認します。そして、また先ほどの圧痛点の部位に戻ってきて、もう一度圧痛のリアクションを確認します。
最初は著明な圧痛を訴えたのにも関わらず、その他の部位の圧痛を確認してから後にもう一度確認した場合、最初ほど著明な圧痛を訴えないこともあるものです。

さて、実際に圧痛の存在を確認した場合は、その圧痛が骨折の存在を示唆するものかどうか見極める必要があります。
骨折の存在を示唆する圧痛は独特なので、慣れればすぐ見当がつくようになります。
これもまた、患者さんの反応を見ながら判断すると良いでしょう。

いずれにせよ、日ごろの施術から、いろんな圧痛を確認しておくことによって、普通とは違う圧痛に遭遇した場合に分かるものです。

圧痛のほかに骨折の存在の判断指標として、介達痛があります。

骨折を疑う部位よりも遠位にある骨に軸圧や叩打を加えてみて、骨折部位に痛みがひびくかどうか見るものです。

骨折の存在を示唆する判断指標をいくつかお話しましたが、これらのうち1つだけをもって判断するのではなく、複数の指標をいろんな角度から確認すべきであるのは言うまでもありません。

なお、今日のお話の中では、骨折にみられる特有な疼痛をMalgaigne骨折痛、骨折にみられる特有な圧痛をMalgaigne圧痛と表現しました。

柔道整復学の教科書でもいまだにMalgaigne骨折痛に関する記述が残されているところですが、医学(整形外科学)の世界でMalgaigne骨折痛はもはや死語になっていると言っても過言ではありません。

整形外科の分野で骨折に伴う疼痛をMalgaigne痛と標記されていたのはおよそ30年前のことで、近年の医学書には記載されていません。

従って、医師免許を取得されて概ね20年未満の先生には、Malgaigne(骨折)痛という表現が伝わらない場合があります。

ですから、依頼状や紹介状などに「Malgaigne(骨折)痛」という表現は用いない方が良いと思われます。


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