肩関節は、反復性脱臼に移行しやすい関節として知られているところです。

反復性脱臼とは、外傷性脱臼に続発するもので、軽微な外力や筋力などによって脱臼を繰り返すようになったものをいいます。
その多くは、次のような理由から発症します。

・初回の脱臼に際して治療を中止するなどして固定期間が不足した場合
・脱臼を阻止する骨突起の骨折があった場合
・筋や腱付着部の裂離骨折があった場合


とは言え、太郎がこれまでに見てきた肩関節脱臼のほとんどは、反復性脱臼ではありません。
正確に数えたわけではありませんが、肩関節脱臼として受療した患者さんのうち、反復性脱臼で受療した患者さんは20%に満たないように思います。

と言うことは、反復性脱臼に移行する患者さんは少ないということでしょうか?
いえいえ、そういうわけではありません。

反復性脱臼に移行した患者さんは、思いのほか多いものです。
ただ、反復性脱臼に移行した患者さんの多くは、それによって再脱臼を発生させないように日ごろから(無意識のうちに?)気遣っている結果、再脱臼する症例数が絶対的に減ってきているものと思われます。

反復性脱臼の発生機序として冒頭では、軽微な外力や筋力によって起こるとお話しましたが、この「軽微な外力」や「軽微な筋力」とは実際、どのような外力(筋力)を想像されますか?

これもまた、太郎の数少ない治験例をもとにしたものですが、反復性脱臼の発症は、投球動作にいうコッキング期またはアクセレレーション期の肢位に際して起こるものがほとんどです。

投球動作と疼痛障害部位




【図/投球動作と疼痛障害部位】
左から順に、(1)ワインドアップ期、(2)コッキング期、(3)アクセレレーション期、(4)フォロースルー期。
図中の赤で示した×印は、各投球動作に際しての疼痛障害部位。

(2)コッキング期における肩関節は過伸展、外転、外旋位がとられ、肩の前方部分(肩関節の関節包前方、上腕二頭筋長頭腱、滑液包など)に緊張が生じ、頻回の繰り返しによって病変が発生しやすくなります。

また、(3)アクセレレーション期は、1期および2期の2つの時期に分けることができます。

1期は、肩、肘が前方に出て、前腕と手が後方に残ります。
この時期に、肘関節の外反ストレス(肘の内側の牽引、外側の圧迫)が強制されて病変が生じやすくなります。

2期は、ボールのリリースまでの投球動作にあたり、肩はスピードをもって内方へ回旋され、前腕や手がちょうど、鞭(むち)状にしなって前方にスナップされます。
なお、この時の肩の内旋・内転動作は広背筋、大胸筋が行います。

太郎の元を受療した反復性肩関節脱臼の発生は、ボールを投げた時に起こったものがあります。
この時の発生は、患者さんの訴えを聞く上では、アクセレレーション期(2期:ボールをリリースした瞬間)に起こったものもあれば、中には上肢を挙上したコッキング期に起こったものもあります。

また、患者さんの中にはボールを投げようとしたのではなく、単に日常生活の中で上肢を挙上し、いわば前述したコッキング期のような肢位をとっただけで発生したものも少なくありません。

床に足を投げ出して座った姿勢(長座位)で、肩を伸展させて手掌で支える肢位をとって発生したものもありましたが、これは上肢を挙上して発生するものに比較して格段に少ないようです。

さて、反復性脱臼に陥った患者さんのほとんどは、どのような肢位において再脱臼が起こるか分かっています。

中には、上肢を挙上すると脱臼するからといって、日ごろから上肢を一切挙上させない人もいます。

このように、反復性脱臼に陥った場合でも、意識的に、または無意識のうちに再脱臼が起こらないように気をつけているため、反復性脱臼として起こる肩関節脱臼が比較的少ないのかな〜と、太郎は思う次第です。

さて、反復性脱臼となってあるかどうかの見極め方については、次のBlogに委ねることにしましょう。(^^♪

【参考文献】
「スポーツ指導者のためのスポーツ外傷・障害」
市川宣恭 編集/南江堂/改訂第2版第12刷/2002年10月/2,816円(税別)

上記の参考文献は絶版(?)となっているのか、中古本でしかないようです。


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