前回のBlog「肩関節−反復性脱臼が起こるタイミング」では、反復性脱臼として発症する肩関節脱臼は投球動作でいうコッキング期やアクセレレーション期に起こることをお話しました。

肩関節脱臼を受傷して来院される患者さんの多くは、過去にも肩関節脱臼を受傷したという既往があります。

前回のBlogでもお話しましたが、肩関節は、反復性脱臼に移行しやすい関節です。
その反復性脱臼とは、外傷性脱臼に続発するもので、軽微な外力や筋力などによって脱臼を繰り返すようになったものをいいます。

ということは、過去に1度でも肩関節脱臼を受傷したことのある患者さんが、再び(2回以上)脱臼した場合は皆、反復性脱臼ということができるのでしょうか?

答えは「No」です。

過去に肩関節脱臼を受傷したことがあると訴える患者さんに、前回に脱臼した時期を聞いてみるとさまざまな回答が得られます。

もっとも多いところでは、2、3年前に脱臼した既往歴があるというものです。
中には、7年以上前に脱臼したという人もいます。

なお、これらの人たちが過去に肩関節脱臼を受傷した回数は、1回〜5回とさまざまです。

過去に肩関節脱臼を受傷したといっても、これほども前に受傷したのであれば、反復性脱臼として発症したとは考えにくいでしょうね。

また一方で、数か月前〜1年以内に肩関節脱臼を受傷したという人もいました。

これらの人たちにおいても、過去の肩関節脱臼の受傷回数は1回〜3回とこれまたさまざまです。

肩関節脱臼の既往がある患者さんが肩関節脱臼を受傷して来院した場合、この脱臼は反復性脱臼に移行しやすい旨を説明すると、多くの患者さんは、自分の肩が反復性脱臼に移行していないか尋ねてきます。

脱臼整復直後はもちろん、整復後1か月以上は経過しないと実施できませんが、反復性脱臼に移行してあるかどうか見極めるには、画像のような検査法が有効です。

反復性脱臼の見極めテスト





一方の手で患者さんの手を持ち、もう一方の手で患者さんの肩関節後面を支えておきます。
そして、ゆっくりと、患者さんの上肢を画像のように挙上させていきます。
投球動作におけるコッキング期の肢位ですね。
肩関節は約90度外転させて、投球動作(コッキング期)となるように肘を90度屈曲させたところで肩を外旋します。
さらに、肩関節に水平伸展を強制します。

この時に行う上肢の挙上動作はいずれも、他動的に行うのがポイントです。
すなわち、被検者は脱力した状態です。

明らかに反復性脱臼に移行した患者さんであれば、上肢をゆっくりと挙上させると、肩関節に水平伸展を強制する以前に、脱臼しそうな不安感を訴えます。
また、このような患者さんでは、上肢の挙上を手早く行うだけで再脱臼を発症するケースもありますから、検査はゆっくりと行うことがポイントです。

また、中には、上肢を挙上させて水平伸展を強制すると、不安感を訴えるケースもあります。
このような場合も、反復性脱臼に移行していると考えて良さそうです。

なお、上記の検査では、検者が患者さんの手を持って行います。
それは、患者さんの自動運動によって上肢を挙上してもらっても、検査結果が陽性を示さないことがあるからです。
中には患者さんの自動運動による上肢の挙上のみで不安感を訴えるケースもありますが、この場合は患者さんも自分の反復性脱臼を自覚しています。

この検査法を用いて、陽性を呈した場合(不安感を訴えた場合)は反復性脱臼に陥っていると判断して良いでしょう。

また、例えこれまでに何度脱臼を繰り返していても、この検査法において陽性を呈さない場合は反復性脱臼に陥っていないと判断できます。

ただ、この検査の実施は、今まさに脱臼して整復を終えた患者さんはもちろん、脱臼整復後の加療中の患者さん(後療段階にある患者さん)に対して行ってはいけません。
この検査法はいわば、反復性脱臼を誘発させようとするものです。
脱臼の整復直後の患者さんや、脱臼整復後の加療中の患者さんに対して行えば、恐らく陽性を呈するばかりか再脱臼を招きかねません。

一度、肩関節脱臼を受傷した患者さんが、反復性脱臼に陥っていないか見極めるためにこの検査法を実施する場合は、少なくとも、脱臼後1か月以上を経過してから行うべきでしょう。

なお、今日のBlogでお話した反復性脱臼の見極め検査法は、これまでの太郎の臨床経験をもとにしたものです。
従って、医学書に掲載された理論をもとにしたものではありません。m(__)m

また、これまでに太郎が経験した反復性脱臼はいずれも肩関節前方烏口下脱臼で、今回の検査法で有効だったものはいずれも烏口下脱臼だけです。
肩関節前方鎖骨下脱臼でも同じく有効であろうと考えられますが、鎖骨下脱臼では反復性脱臼の治験例がありません。

また、検査における肢位からもお分かりなように、当該検査は肩関節前方脱臼における反復性脱臼に対してのみ有効であると考えられます。
前方脱臼以外の脱臼は、反復性脱臼は愚か治験例さえもありません。m(__)m


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