中学校の野球部に所属する13歳の男の子A君が、右肘に疼痛を訴えて来院しました。

前々からときどき痛みを覚えていたものの、日曜日の練習試合でボールを投げると同時に疼痛が一気に増したといいます。
なお、A君は主にピッチャーを担当し、時には外野も守るといいますが、今回の疼痛はピッチャーとして投球動作を行った際に出現したといいます。

お察しのとおり、A君は右肘内側に疼痛を訴えています。
圧痛は、内側上顆から屈筋群近位部にかけた複数のポイントに認めます。
しかし、肘の外反ストレス検査には痛みを訴えませんし、腫脹や熱感も認めません。

施術室内で投球動作を行ってもらっても、その時には疼痛を伴わないようです。
でも、ボールを持たずにシミュレーション的に投球動作を行ってもらったせいか、その時のフォームは「手投げ」のように見えます。

投球フォーム






【図1】肘が上がった良いフォーム(a)と肘が下がった悪いフォーム(b)
aは肩関節が軸となり、肘への負担は少なくなります。
一方、bは「手投げ」になり、肘・肩関節ともに負担がかかることになります。
「スポーツ医科学ハンドブック」


野球にはそれほど詳しくない太郎ですが、正しいフォームを説明しておきました。(^^;

投球動作



【図2】投球動作
左から順に、(1)ワインドアップ期、(2)コッキング期、(3)アクセレレーション期、(4)フォロースルー期。
図中の×印は各動作における疼痛障害部位を示します。
「スポーツ指導者のためのスポーツ外傷・障害」


A君は、アクセレレーション期の初期に疼痛が強くなるといいます。
これは、内側型の野球肘に見られる所見です。

一般に、投球動作ではアクセレレーション期に肘関節の外反が強制され、内側側副靭帯に牽引力が作用します。
過度の投球動作の反復によって、内側側副靭帯自体またはその起始部である上腕骨内側上顆部の障害をもたらします。

A君がアクセレレーション期において疼痛が強くなるのは、その動作によって肘関節に外反が強制され、損傷部位に牽引力が作用するためと考えられます。

A君の内側上顆に認められた圧痛は、それほど強いものではありませんでした。
しかし、この部位の圧痛があまりにも強い場合をはじめ、年少者の場合では上腕骨内側上顆の骨端核に異常を認めることがありますので、対診(X線検査)を行うことも視野に入れるべきです。

なお、野球肘は一般に内側型から始まり、病変の進行に伴って外側型へと進展していきます。
外側型の野球肘については次回のBlogに委ねますが、野球肘は早期治療が大切で、内側型のうちに問題を解決することが望ましいといえます。

従って、競技を行うに当たっては、治療および予防のためにも、肘関節の外反防止を目的としたテーピングを施行するべきでしょう。

【参考文献】
「スポーツ医科学ハンドブック」
財団法人 神奈川県体育協会 編集/医学書院/第1版第1刷/2000年1月
3,400円+税
「スポーツ指導者のためのスポーツ外傷・障害」
市川宣恭 編集/南江堂/改訂第2版第12刷/2002年10月
2,816円+税


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