肩鎖関節の損傷(脱臼や捻挫)は、スポーツ外傷や交通外傷(交通事故によるケガ)として発生するものが多い傾向にありそうです。

学校のクラブ活動など、とりわけラグビーや柔道などのコンタクトスポーツに多発する傾向にあります。

スポーツ外傷や交通外傷以外でも、日常生活上における転倒などによって肩鎖関節に損傷を生じさせることもあります。
けれども、そのような原因で肩鎖関節損傷が起こった場合は、スポーツ外傷や交通外傷として起こったものよりも軽症となる傾向にありそうです。

「スポーツ外傷や交通外傷では、外力の程度が大きいし、スピードがあるから、その分、それ以外の外傷よりも重症となりやすいのでは?」
・・・ですって?

なるほど。
そういうふうにも考えられそうですね。

でも、この理由は、肩鎖関節の損傷が発生するときの外力にもありそうです。

【肩鎖関節脱臼の発生機序】

直達外力によるもの・・・転倒・転落時に、肩峰への外力によって発生。
介達外力によるもの・・・手掌や肘をつくなどの外力によって発生。

「柔道整復学−理論編」 第4版=P.220 ・ 改訂第5版=P.262


肩鎖関節脱臼が起こるときの原因として、教科書では、直達外力による場合と介達外力による場合の2つの場合に分けて、以上のように記されています。

右肩鎖関節前面(関節部の傾斜を示しています)




上の画像は、右肩鎖関節を前面から見たものです。
これに示すように、肩鎖関節は、外側上(肩峰側)から内側下(鎖骨側)に向かって傾斜をなしています。

以下に示した画像は、転倒するなどして肩(肩峰)に直接外力が働いた様子を示しています。
これが、肩鎖関節部に直達外力が働いた場合の様子です。

直達外力による肩鎖関節脱臼の発生







肩峰に働いた外力は、肩の斜め上から働いたように示しています。
この外力の方向は、先の画像に示した肩鎖関節における傾斜に平行で、肩峰に働いた外力は肩鎖関節に対して剪断力(せんだんりょく=引き違いの力)として作用しています。

肩峰端が内下方に押し込まれると同時に、肩鎖関節に働いた剪断力は鎖骨外端を外上方へと追いやります。

鎖骨外端を外上方へと追いやる力は、烏口鎖骨靭帯(CCL)を緊張させ、その程度によってはCCLを断裂させてしまいます。

直達外力によって発生する肩鎖関節脱臼は、肩峰端を内下方に押す力が働いて発生しました。

対して、介達外力による肩鎖関節脱臼は、肩峰端を上方へ押す力が働いて発生するといえます。

介達外力による肩鎖関節捻挫






介達外力によって発生する肩鎖関節損傷では、腕は、一般に軽度屈曲して外転しています。

手掌や肘をついて加わった介達外力は、上腕骨の骨幹を伝わって()、肩関節を越えて()肩峰に作用するほか、肩甲骨を上内方へと移動させます()。

その結果、烏口鎖骨靭帯は弛緩します()。

外力が持続すると、肩鎖関節包や肩鎖靭帯の線維が、引き延ばされたり(伸延損傷)、部分的な断裂にいたります()。

これが、肩鎖関節に介達外力が働いた場合に進んでいく損傷の様子です。

前述した()の段階では、肩鎖関節捻挫が発生したところです。

この段階では、烏口鎖骨靭帯は弛緩しただけで、損傷にはいたっていません。

これが、肩鎖関節脱臼へと発展するためには、先に記した()の損傷が起こっても、まだなお外力が持続している(残っている)必要があります。

先の画像に示したイ任蓮肩鎖関節包や肩鎖靭帯が伸延損傷したり、部分的な断裂が起こりました。

それよりさらに外力が持続すると、肩鎖関節に脱臼が発生します。

まず、肩鎖関節包や肩鎖靭帯は完全に断裂してしまいます()。

介達外力による肩鎖関節脱臼





その結果、肩鎖関節は不安定となります()。

この時点で肩鎖関節は脱臼していますが、烏口鎖骨靭帯は依然として弛緩したままです。

肩鎖関節の連結がはずれてしまうと、鎖骨は、自由に動けるようになります()。

それでもなお、烏口鎖骨靭帯は無傷です()。

この場合、肩鎖関節包や肩鎖靭帯は完全断裂し、関節としては不安定となっています。
しかし、烏口鎖骨靭帯に損傷を伴っていませんので、Tossy分類(肩鎖関節損傷の分類)の第2度、すなわち肩鎖関節は不全脱臼ということになります。

肩鎖関節損傷の分類(Tossyの分類)



さて、今日のBlogでは、肩鎖関節に対して直達外力が働いて損傷が進んでいく様子と、介達外力が働いて損傷が進んでいく様子についてお話しました。

これらからみてもお分かりなように、烏口鎖骨靭帯の断裂を伴いやすいのは直達外力が働いた場合で、介達外力によるものでは烏口鎖骨靭帯の断裂はむしろ伴いにくいといえるでしょう。

2枚目の画像に示したような、肩峰を内下方へと押す直達外力は、道を歩いていて転倒するよりも、頭から落ちる(肩から落ちる)ような姿勢で転倒した場合に起こります。

それだけに、スポーツ外傷や交通外傷などでは起こっても、一般的な日常生活では起こりにくいといえそうですね。

従って、直達外力による肩鎖関節損傷はスポーツ外傷や交通外傷において起こりやすく、このような外力で起こった場合は烏口鎖骨靭帯の断裂を伴う肩鎖関節脱臼になりやすいといえるでしょう。

一方、日常生活で転ぶなどして起こった介達外力による肩鎖関節損傷は、烏口鎖骨靭帯の断裂を伴わない肩鎖関節捻挫(Tossy第1度)や肩鎖関節不全脱臼(Tossy第2度)になりやすいといえるでしょう。

【参考文献】

「柔道整復学−理論編」第4版 (絶版)
全国柔道整復学校協会教科書委員会 編集/南江堂

「柔道整復学−理論編」改訂第5版
全国柔道整復学校協会教科書委員会 編集/南江堂/2009年4月
7,300円+税

「筋骨格系のキネシオロジー」
Donald A.Neumann 原著/嶋田智明・平田総一郎 監訳/医歯薬出版/第1版第7刷/2008年10月
10,000円+税

「図説 骨折・脱臼の管理(1)」 (絶版)
DePalma・Connolly 著/阿部光俊 監訳/廣川書店



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