「正論」編集部の彷徨記

日本を想い、日本を愛する―。オピニオン誌の最前線を彷徨する雑誌「正論」編集部員が本音を綴ります。

雑誌「正論」は1973年10月1日に誕生しました。雑誌「正論」は何を訴えているのか。その答えとなるのが、創刊第4号に文芸評論家の佐伯彰一氏が寄せた「国民とは何か―定義するための覚書」の一節です。「一体『国民』とは何か。/ぼくなりの定義としては、時間的なタテ軸を、歴史的、文化的な連続性をまず強調したい。・・・途切れざる連続性にこそ、日本の文化、文学の特質があり、日本人の精神生活の際立った特徴をなしている」日本という国を拓き発展させてきた父祖に感謝し、敬い、その偉業を学んで子孫に責任を持って伝えていく役割を国民1人1人が意識すること。この「時間的なタテ軸と連続性」を意識することは、保守の根本的な立場です。弊誌は、この「時間的なタテ軸の連続性」を意識する立場を編集方針の「定義」として守り続け、これからも「国民」と共に、歴史をめぐる闘いの最前線に立ち続けていきたいと思います。

「静かなる有事」として確実に忍び寄る人口減少と地方の衰退。経済の縮小や社会保障制度の破綻などをもたらすこの国難に打開策はあるのか。第34回土光杯全日本青年弁論大会(フジサンケイグループ主催、積水ハウス特別協賛)が6日、東京・大手町のサンケイプラザホールで開かれ、若者たちが熱弁をふるった。大会テーマは「人口減少社会と地方再生」。論文審査を勝ち抜いた弁士11人のうち、最優秀賞の土光杯、優秀賞の産経新聞杯、フジテレビ杯、ニッポン放送杯、岡山出身の土光敏夫氏にちなんで新設された特別賞の岡山賞に輝いた5人の主張の全文を紹介します。


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最優秀賞土光杯 岡山県立倉敷天城(あまぎ)高校2年 松下天風さん(18) 
「高校生が考える日本の未来」(全文)

日本は現在、少子高齢化の時代を迎え、人口の減少と地方の過疎化が進んでいます。

昨年の出生数は100万人を割り、2050年には日本の人口が1億人を下回ると予想されています。超高齢化社会の到来、社会保障費の増大、労働力の低下、消える市町村など、日本の未来は暗い話ばかりです。

しかし今、これらの問題に僕たちのような若者も真剣にとりくまなければ、日本の将来に明るい夢を描くことはできません。

僕がアメリカに留学していたころ、友達やホストファミリーに日本の少子化問題について話し、解決策を聞いてみると、多くの人が移民を受け入れることを提案していました。アメリカは移民によって国が発展してきたという歴史があるからです。確かに、移民の受け入れをすれば労働力不足を簡単に解決できるかもしれません。しかし、アメリカとは違い、日本では移民を受け入れても、犯罪の増加や社会秩序の崩壊など、別の問題を引き起こす恐れがあり、根本的な人口減少問題の解決策にはならないと思います。

そこで僕は、安易に移民に頼らず、国民が子供を持つことに幸せを感じ、安心して子育てができる社会の実現こそ、人口減少を食い止める一番の対策だと思います。

その実現のために、僕は3つ提案したいことがあります。

第一の提案は、AIやロボットなど、人間に代わって労働力となる技術の開発を進めていくことです。日本の高度な技術力をもってすれば実用的な人工知能やロボットを大量生産できるようになり、単純な労働や事務作業はすべて機械にまかせられるようになります。例えば、自動車の自動運転技術が使われるようになれば、タクシードライバーやトラックの運転手などの仕事も必要なくなります。そして、失業した労働力を農業や水産業、林業、サービス業などの労働力が不足している分野に移行させます。また、育児や高齢者の介護も、仕事の一部をロボットに分担することが出来れば、現在問題となっている保育士や介護士の不足を補えるでしょう。AIやロボットの導入で、仕事を効率化することが出来れば、労働時間の短縮によって人々の心に余裕が生まれます。実際に、僕がアメリカで通っていた高校の先生は、授業にオンラインで生徒と繋がれるシステムを導入したところ、以前より仕事が効率化され、時間に余裕ができたので、第5子の出産を決めたそうです。最近では結婚しない若者も増えていますが、働き方に余裕があり、子供を持つ将来に希望がもてるようになれば、結婚率も上がるのではないかと思います。

第二の提案は高齢者の活用と社会保障費の負担増です。アメリカでは、日本よりも元気に働いている高齢者を多くみかけました。おそらく医療費も年金も国に頼ることが出来ないから仕方なくという部分もあるかもしれませんが、人口減少という国難を乗り越えるために高齢者には生涯現役という目標を持ってもらいたいと思います。現在の日本では、無駄な医療費、生活保護も莫大な額になり、それらの不正受給も多くみられます。医療も生活保護も本当に必要な人だけに公正にいきわたるようにするには、社会保障費や医療費の自己負担を上げるべきだと思います。当然、病気の治療をしたくても経済的に苦しく、困っている人々は国や市町村が補助すべきだと思います。だからこそ、そういった人々を救うための社会保障制度が、悪用されているという現状を変えなければならないのです。今のままの制度を維持していてはいずれ国が破綻します。高齢者の自己負担分を増やし、必要以上に社会保障制度に甘んじている現状を打破し、「働かざる者食うべからず」の原則で正直者がバカをみない公正な制度にすべきです。

最後に、若者が大都市に集中するのを防ぐため、地方に移住しても大都市と同じサービスが受けられるような町づくりを提案します。インターネットや人工知能を活用して、

全国各地に住みやすく、コンパクトな「ハイテクシティー」をつくります。地方でも大都市と同じようなサービスが受けられるようになれば、ゴミ問題や道路の渋滞のような都市問題もなく、安い物価や土地代といった魅力がある「地方」に人々が移っていくでしょう。

また、三世代同居を促進し、親が働いている間も祖父母が育児に協力できるようにします。若者が働き盛りになっても、家族や地域住民に、育児を協力してもらえるようになれば、出生率も上がり、少子化の解決に繋がると思います。

さらに、地方の活性化のために、各地方に残る伝承や伝統文化を再興し、それらを観光資源として活用すれば、観光面での発展も期待できます。地方創生を促進するためにも、まずは若者が地方に移住したいと思えるような魅力ある地方都市の構築が不可欠です。

よく、日本は国土も狭く資源もない国だと言われます。しかし、日本には耕作放棄地や空き地など、開発の余地がある全く活用されていない土地が多くあるし、資源のなさを補って余りある技術力があります。

日本にないものを指摘するより、今、日本にあるものを十分に活用していくべきです。

日本の将来を明るくし ていくためにも、国家財政の改革や、世界に誇る科学技術の活用によって、日本が現在抱えている社会問題を解決していくことが重要です。

そして、これからの日本の将来を担っていく我々、若者が中心となって、さらに未来の子供たちが、日本の将来に夢を持てるような社会を作り上げていくべきです。


優秀賞産経新聞社杯 慶応義塾大学経済学部1年 児玉達朗さん(19)
 「地方銀行と地方創世の共同成長」(全文)

皆さんは、陸王と言うドラマをご覧になりましたか?陸王は経営危機に陥った中小企業が、創意工夫によって立て直す企業再生ストーリーです。話の中では、地方銀行、所謂地銀は、企業に従業員のリストラを迫る意地悪な存在として描かれていました。気になった私は、銀行員である父に聞いてみました。「普段からこんなえぐいことしているの?」、と。すると父は言いました。「もっと企業や地元に寄り添った考え方をしている」、と。

実際に、地方銀行は地方自治体や地元企業に協力し、地域の成長に大きな役割を担っています。まち・ひと・しごと創生本部の2015年の調査によると、地銀の約7割が専門組織を立ち上げ地方自治体と連携しています。またみずほ銀行の調査によると、地銀は他の金融機関に比べて企業に対して支店長レベルで対応している割合が極めて高く、企業と密接な関係を築いている金融機関は地銀だと分かります。さらに中小企業の約5割が地銀をメインバンクとしており、地銀は官民に大きな影響力を持っています。

中央からの画一的な政策では地域創成には不十分です。自治体による村おこしや移住手当、地元企業による雇用の促進や産業の活発化など、地域発の政策はとても重要なのです。そして、それら地域発の政策は地銀に支えられています。現状も地銀は支援を行っていますが、地方を創生する為には更なる支援が必要です。

しかし、その地銀は危機的状況に置かれています。2017年度の3月期決算では、なんと6割での地銀で収益の悪化が確認されたのです。また、日銀の発表によると、今後5年で地銀が債務不履行に陥る確率は4%台後半でした。リーマンショック直後でもこの確率は1%台であり、現在地銀はリーマンショック時以上の危機的状況にあるのです。こうして地銀が減収を続け、やがて倒産してしまえば地域発政策の多くは水の泡となってしまいます。

地銀が減収している状況を打破する事は、地方創生の前提条件です。早急に解決しなければなりません。

地銀が減収した理由は、貸出利益の大幅な低下です。有価証券利益は微増していますが、圧倒的までに貸出利益が大きく減少しているのです。貸出利益減少の原因は、マイナス金利政策による利息の低下と地域経済の衰退による貸出額の伸び悩みです。顧客を増やす為には利息を下げなければなりませんが、利息を下げても思ったように貸出金は増えないのです。また、有価証券については現在金融庁が規制を行っているため、今後の有価証券利益の増加は見込めません。

以上のような利子と貸出量の低下を受けて、銀行再編の動きがあります。

銀行再編は、複数の地銀が一つになることで経営規模の巨大化による経営の効率化、競争力の強化を図るものです。この地銀合併により確かに減収による損失を抑える事が出来ます。

しかし、合併、特に地域を超えた合併は地方創生に悪影響を及ぼす可能性があります。地銀はその地域や企業の特性に合わせて融資し、地域の情報に精通し信頼を勝ち取ってきました。それが他の地銀と合併するとなると、地域密着型であるという強みを失ってしまいます。このような状態になると、地方創生のための地域発の政策や事業を支援することが難しくなってしまいます。

そのため、地銀合併だけでなく、地域創生を直接支援することができる政策を打たなければなりません。

そこで必要なのが、地元企業や地方自治体に対するコンサルの強化です。コンサルとは、地銀が助言や事業計画を行い、地域を成長させ将来的な貸出金の増加を目指すものです。

このコンサルは企業からの需要も高いものとなっています。このグラフは、2015年度の金融庁の調査では、企業がメインバンクを決定する時に重視するのはコンサルであるという回答は、利子低下よりも4倍近い割合をもっていました。つまり、地方創生のために地銀はコンサルを行うことが求められているのです。

しかし、地銀がコンサルの強化に取り組むには大きな壁が二つあります。一つは情報の問題です。2015年の金融庁によるヒアリング調査では、地銀が提供している情報と、企業側が欲しい情報に差があることが判明しました。地銀は地域情報や金融情報などは十分に提供できているのですが、業界情報などの分野に関しては全く企業の需要に応えられていなかったのです。

二つ目に、そもそも地銀にノウハウが無いと言う問題もあります。近畿財務局が地銀に対して行ったアンケートでは、コンサルができない理由として最も多かったのは銀行員にノウハウがないという回答でした。つまり、コンサルの強化には、情報収集や行員にノウハウを身に着けさせるために初期投資が必要なのです。静岡銀行や鳥取銀行等一部の地銀は、情報やノウハウ獲得の為に企業に行員を積極的に派遣しています。その結果、初期投資を十分に回収できる成果、例えば新規事業に対する融資等があったと報告されています。しかしその初期投資がネックとなって、コンサルの強化を積極的に行う地銀は多くありません。

収益の改善と更なる地域貢献の両立のためには、銀行再編だけではなくコンサルの強化も必要不可欠です。コンサルを推進する為に、政策を打たなくてはなりません。

そこで、地銀の地域貢献度ランキングを毎年発表し、地域貢献度に応じた税制優遇を提案します。評価の基準は既に金融庁が作成している、地銀の地域貢献度評価シートを改正したものを使用します。企業理解をしているかなどのコンサルに関する項目の達成度を計算し、累計達成度の高さでランキング化するのです。実際にこのシートが作成された事で、地銀は自身の地域貢献度を意識するようになっています。この政策でシートをランキングにすることで、その流れは更に加速します。また、税制優遇により地銀はコンサルに投資しやすくなり、その上で地銀間でのコンサルを競争させることができます。

コンサルにより企業が成長し、地域発の政策が活発になります。そして銀行も金利や融資の増加をさせることができるのです。現在行われている銀行再編と私が提案する地域貢献度ランキングによって、収益の改善と地域貢献の両立が実現できるのです。

地銀が地域を成長させ、それにより地銀も成長する。地域と地銀は一蓮托生の仲となり、相互成長するようになるでしょう。地方創生の為に。



優秀賞フジテレビ杯 会社員 青木優介さん(32)
 「未来のために覚悟を決める」(全文)

2人の子供たちを寝かしつけた夜。妻とともに食事をとっていると3人目をどうするかと会話になりました。

結婚時には『少なくても3人は欲しいよね』と互いに話しをしていましたが、実際に子育てをして、体力的にも金銭的にも余裕がなく、果たして3人目を育て切れるのか、不安で気持ちが揺らいでいるのも事実です。

職場で他のパパさん、ママさんに『3人目ってどう考えています』と話題をふると、我が家とおなじようにあまり色よい返事が得られませんでした。

結婚していない同僚の中には、

「一人のほうがお金も時間も自由に使える。結婚や子育てはコストパフォーマンスが悪い」

そう言っている人がいますが残念ながらその一面は否めません。

日本の人口維持に必要な出生率は2.07といわれています。対してここ数年の出生率は約1.4です。

他の先進国でも軒並み出生率が低迷している中、ロシアの出生率がV字回復をしたとニュースを耳にしました。この起爆剤となったのが『母親資本』と呼ばれるものです。

子供が2人生まれた世帯には年収と同等、世帯によっては2倍になる金額を国から得られるというものです。

キャッチフレーズは「子供を二人産めば家が買える!」

この多子世帯への経済的な動機付けによってロシアの出生率はわずか15年で1.17から1.8まで回復したそうです。

日本でも全く同じとまではいかないまでも導入することは可能だと一部の専門家も言っています。

私自身こういった思い切った政策が導入されたら3人目を悩むことは少なくなります。

また結婚、子育てはコストパフォーマンスが悪いと認識を持っている人の考えを変化させることもできると感じています。

ではどうして少子化が問題だと言いながらこういった思い切った政策が中々打ち出されないのでしょうか?

私は「日本の民主主義はシニア世代の方々によって保たれているからだ」と感じています。

まず政治家の年齢に関してです。平均年齢は53歳。20代、30代の割合は11%。

子育て活動中という政治家の数は少なく、どちらかというと親の介護をする年代が多くなっています。

次に地元において政治家の活動を支援するスタッフ。

選挙や日々の活動を手伝っているスタッフは会社を卒業されたシニアの方が大半です。

最後に有権者の割合。30代までが30%なのに対して60歳以上のシニア層はそれよりも多い40%となっています。

このように選ばれる政治家、それを支えるスタッフ、そして選ぶ有権者にも若い世代の数は圧倒的に少ない。

日頃の付き合いや自分の境遇から若い世代の持つ課題よりもシニア世代の課題が優先順位として上になる。これはある意味仕方がないことかといえます。

少子化を解消する手立てを立案する。この段階に至るためには、若い世代の存在感を増やし、シニア世代の方々から日本の未来を創るというバトンをうまく受け取る必要がありそうです。

ではどうすればいいでしょうか?

若い人でも立候補しやすいように供託金の金額を引き下げたほうがいい、働いている人も傍聴できるように地方議会の開催日程を土日、夕方などにずらしたほうがいい、世代間の一票の格差を解消するために一票の価値を調整したほうがいい。

会社員には義務で社会活動をさせたほうがいい。

様々な方法が話合われていますが、それと同時に自分たちが住んでいる社会、未来は自分たちがつくっていんだと意識をもった人を少しでも多くすることが大事だと考えています。

だからこそまずは私自身が地域や職場で積極的に動いてみようと思いました。

「子育てをしているから」、「都内まで通勤しているから」とできない理由を話される方には私も同じ境遇ですができますよとやれることを証明し、またかつての自分のようにやりたいけどあきらめている人にはこういうことならできるのではないでしょうかと道を示してあげられると思ったからです。

地域においては通勤前の30分、代議士の方の手伝いをしています。駅前で通勤される方に対してへのあいさつや活動報告書を配布してます。30分だけしかできないけど受け入れてくれるかなと当初は不安に感じていましたが、朝の時間は特に人手が少ないらしく歓迎され、心配は杞憂に終わりました。最近では通勤される方から声をかけられることも増えてきました。話しをしている中で私が都内まで通勤しているとわかると、「いままでできない言い訳をしてきたけど、できることを今一度考えてみる」と言ってくださる方もいます。

職場では政治や安全保障、地域社会に関してもっと語り合える雰囲気を作ろうとしています。

「地域のことを知ると故郷ではないけど愛着がわいた。自分も何か貢献できることはないかと考えるようになった。」

語り合える人も少しずつ増えてきました。

ここまで勇ましく話をしてきましたが、逆風により地域や職場で動くことをやめようと思ったことがあります。

しかしあなただったから聞いてみようと思った、やってみようと思ったいう周りの声によって踏みとどまることができました。

私は「世界最古の国日本が、未来永劫にわたって存在し続けてほしい」と願っています。

これを実現させていくためにも、私は日本の未来を自分事としてとらえられる人が一人でも増えるよう、逆風を恐れず、今後も行動し続けていきたいと思います。


優秀賞ニッポン放送杯 立命館大学法学部4年 小野寺崇良(たから)さん(22)
 「故郷に想う」(全文)

昨年、安倍首相は「国難」として、北朝鮮による脅威と少子化を挙げました。少子化の要因の一つである、都市への一極集中によって地方の衰退は進み、高齢化と過疎化で、地域の文化や、家族の絆は崩壊すると危惧されています。

私は、目的としての「地域共同体の保護」ではなく、方法としての「共同体文化の“原点“化」と、そのように実感ができる教育が、解決の一助となると考えます。

「歴史は繰り返す」との言葉があります。日本が現在直面する国難も、例外ではありません。

時は、ぺリーが来航する50年近く前である1807年、既に我が国は対外的な脅威を迎えていました。

それは、度々出現したロシア船の存在です。ロシア船の船員たちは樺太や択捉、利尻などで略奪を行い、後に「北の黒船」とも称されるこれらの暴挙に、江戸幕府は対応できずにいました。

この事態に、私の尊敬する学者、蒲生君平は、『不恤緯』という書物を記し、対応策として北方防衛の強化を、幕府に提言しました。ですが、対策として「国防だけ」を語るわけではありませんでした。

当時、多くの地方の農民が、都市へ移住を続けていたことで、都市部へ人口が集中し、地方の農業人口減少で、常に飢饉が発生するリスクを抱えていました。ロシアへ対抗できる国力を回復するためには、地方の活性化が、蒲生君平の一番の対策でした。

その一文を紹介します。

「苟も民の肯て其の土を離れざらんことを欲せば、必ず、先づ、之をして、以て、其の孝悌の情を成し、而して、其の喪祭の禮を遂ぐるを、教えしむるに如くは莫し」

各地域に住む人々を、都会へ流出させないようにするためには、「孝悌の情」、つまり父母への尊敬と孝行をする心、そして「喪祭の禮」、先祖を敬い墓を守り、地域の祭りを行うこと。これらを教えるべきだと説きました。

「自分は、先祖が守ってきてくれたこの土地で生まれ育った。親孝行をし、父祖伝来の地を守り、先祖の墓や親を大事にしよう。これが私の原点だ。自分勝手にそれを捨てるなんて、すべきではない。」

当時の情勢を打破するには、このように感じてもらえる、教育が重要であると、根本からの解決策を説いたのです。

「人口減少や地方の疲弊は国難であり、国力の低下につながる。対外的危機において、単に国防だけではなく、まずは「自国の足元」を固めなければならない。」

そう考えるのは、江戸時代も現在も同様ではないでしょうか。

地方の活性化や、そのための教育は、ただ、地域共同体の保護だけに有効なのではありません。繰り返す歴史を教訓に、危機を乗り越えてきた先人に学び、問題の根本に立ち返って、今に活かすことも重要ではないでしょうか。

昨年、私は、宮城県の祖父母のもとへ帰省をしました。

祖父母の集落には、氏神が祀られる祠があり、毎年秋になると、家々が持ちまわりで祭主を務めて、祭りを守ってきました。各家の親戚一同が、集落へ帰省して、この日ばかりは集落の一員として参加します。

現在はたった数十人もいない集落ですが、この祭りが200年以上続いてきました。親から子へと、祭りの作法や、「神楽」の舞が継承され、祭りの名簿には江戸時代からの私の先祖の名が記されています。

地域の文化と歴史に育み、育まれてきた我が家の歴史を目の当たりに感じたとき、この地域が、家が、「私の原点」なのではないかと感じられるようになりました。

しかし、車で、電車で、飛行機で。自身の故郷を離れ都会へ出て、何かあればすぐ実家へ帰れる。

交通インフラの発展で、現代では、必ずしも、自身の生まれ育った地域に定住する必要がなくなってしまいました。

ですが、盆や年末年始の帰省ラッシュの様子を見ると、現在の日本社会でも、盆の墓参りや、正月の帰省は、人々の間に息づいた「習慣」「慣習」であることがわかります。

私は、宮城県に生まれ育ち、中学三年生で、東日本大震災を経験しました。「絆」、が流行語となったように、困難に際し、地域の人々や家族、「故郷の力になろう」、と協力し合う多くの人たちによって、我々一人一人が支えられていることを、強く実感し、目の当たりにしてきました。

地方に人々が集まるには、まずは、盆や正月だけではない、「故郷へ帰ろう」、「故郷に帰って、何か力になろう」、そう人々に思わせるだけの、日々の「慣習」を一つずつ復興し、都会へ出た若者が地元へ帰る機会を増やしてゆくことが重要ではないでしょうか。

さらに、歴史に学び、根本に立ち返れば、父や母、先祖がいなければ私たちはいません。

「地元の文化や、先祖の存在は私の原点だ。自分にとって故郷に帰ることは原点回帰の機会になる」、再びそう思える「教育」が、地域社会存続の、一つの大きな力となるのではないでしょうか。

ふと思い返すと、私にとっての「原点」である、墓に手を合わせ、祭りを手伝うようになったのは、親の教えからでした。

「神様やご先祖さんが守ってくれてるんだぞ。ちゃんと御挨拶しなさい。」

これは、初詣や先祖の墓参りに行く多くの人々にとって同じ思いではないでしょうか。

しかし、核家族の増加や、氏子意識の低下から、存続の危機に陥る神社が数千社を数え、墓苑には無縁仏が増える現在の社会では、家庭教育にも限界があります。

日本人の「文化習俗」や、「自身の家の歴史」を、学校教育の場において、「地域の祭り」や、「行事への参加」による体験学習や、「自分で調べ、考える」アクティブラーニングの一環として、学ぶ機会を増やし、地域社会とさらに連携したカリキュラムを作ることが必要ではないでしょうか。

地域や、先祖や、家族を大切にする行いが、「慣習」として再び息づくことが、都市へ流出する人々の「原点回帰」の機会を増やし、それが、再び地元へ復帰するための「足場」となってゆく、そうした、「方法としての地域文化や親孝行」の活かし方があるはずです。

日本の再生の為に取り戻すべきは「親や先祖への尊敬」であり、「地域の神への畏敬(いけい)の念」ではないでしょうか。

ここに、偏狭なナショナリズム」も「極度な愛国心」もありません。ただ、祖先を敬い、故郷(ふるさと)を想う心があるだけです。



特別賞岡山賞 主婦 坂田寛子さん(32)
 「人づくりによる、まちづくり」(全文)

「人口減少社会」この言葉から皆さんは何を連想するでしょうか。

若者が急に減り、医療・年金の仕組みが制度破綻

労働者が減り、経済が縮小

都市へ人が移動し、地方が特に影響を受けている

とても大きくて、解決策の見えない問題。こんなイメージではないでしょうか。

そのため国では、移住促進や納税の地域分散の対処をしています。人口も増やそうとしています。

ただ、考えてみてください。限られた人口や税金を分けるのでは、いずれ限界が来るのではないでしょうか。人口を増やすことにも時間がかかります。

実は、変化する社会事情に対して、「柔軟な対応」ができていないこと。これが本質的な課題ではないでしょうか。

分けるのではなく、量を増やすのではなく、質を上げること。

私が地方再生で大切だと思うことは、「人づくり」です。

つまり、ひとりひとりが理想を描き、柔軟に対応する事が求められることではないでしょうか。

我々、日本人は変化に対して、理想を描き、柔軟に対応してきた民族です。

今年で150周年を迎える、明治維新

日本が滅びてしまうかもしれないと言われた三大国難の一つペリー来航から、日本を近代化に導いたのは、国のトップや、役職者だけではありません。下級武士、農民までも身分問わず参画して、ひとりひとりが日本を考えて行動しました。

それは維新の先頭に立った明治天皇が、国民に呼びかけた、五箇条の御誓文の中にも残っています。

「上下心を一にして、盛に経綸を行うべし」

身分の上下や立場を問わず、心を一つにして積極的に国を治め整えましょう。という意味です。

まさに私たちの先祖、先人たちがひとりひとり理想を描き、柔軟に対応したから、国が変わったのです。

地方再生も行政主導だけではなく、民間主導で成果を上げている事例があります。

私が住む香川県高松市の中心部には、丸亀町商店街という全国有数の商店街があります。400年余りの歴史を持ち、総延長約2.5キロ、店舗数157件。100万人に満たない県の人口で1985年頃のピーク時には年間20万人の交通量がありました。しかし2006年には交通量が半数に落ち込み、このままシャッター街になるのでは、と心配されていました。しかし、現在では国や自治体、海外から視察が来るほど地方再生の成功事例と認められています。

まさに民間人ひとりひとりが理想を描き、柔軟に対応した結果です。丸亀町商店街の再開発に取り組まれた商店街振興組合理事長さんから話を聞きました。

一般的に、商店街とは、商売を営む店舗が集まった地区を表します。建物自体も商店所有、商店ごとの独立採算制。隣接する商店がライバル同士になることもあり、並びや区画に戦略的な意図を持っていません。商店街の賑わいというのは、消費者が集まることによる偶発的なものです。これが一般的な商店街です。

ただ、丸亀町商店街は、商店街の固定観念を変えて、新しい形態を作り出しました。商店街全体を管理運営する法人を設立し、バラバラだった商店街を、まとめたのです。全国に例を見ない画期的な取組みです。

具体的には、まず商店街全体の理想を描きます。商店街の一階に戦略的に店舗を配置、上の階に住居を作ることで、消費者ではなく、生活者を呼び戻し、医療や生活用品が徒歩圏内で手に入れられる環境を作りました。

最も画期的だったことは、既存の条例から柔軟な解釈を導き出したことです。

定期借地権。これは「一定期間土地を借りるシステム」を導入し、土地所有者と利用者を分けて運用しています。わかりやすい例でいうと、公の道路にベンチが置いてあるのです!

「えっ、それってすごいことなの?」思うかもしれません。

実は、条例の解釈が難しく、前例もない。土地所有者の利権もあり、計画を始めた段階では、自治体や、同じ商店街の人もほとんど賛成しない状況で、止まっていました。

「商店街の中に、休憩できるベンチがほしい」利用者のニーズがあるのに「前例がない」と止まっていたんですね。

多くの人は、自分の手に負えない事が起こるとあきらめてしまい、描いた理想から条件の中で実現できるよう小さく変更します。ただ、丸亀町商店街では、理想を小さくすることなく、柔軟に対応しました。約20年の歳月をかけて、協力者を増やし、結果、地方再生の成功事例として認められています。

福沢諭吉の言葉に「立国は公ではなく、私なり」とあります。

地方は、ひとりひとりが尊い存在です。「理想を描き、柔軟に対応」できる人が全国各地域、また若手世代にいることで地方を再生できます。

どうすれば「理想を描き、柔軟に対応できる人」になるのか。

「人から学ぶこと」が必要です。先人や歴史の偉人の生き方、考え方、人生で大切にしている物は何か。触れていくことです。地域の活躍している社会人からも直接話を聞いて学ぶことです。そのとき何を考え、どう決断し、やり抜いたのか。

私自身も香川県で就活生や若手社会人に、人から学べる講演会を提供しています。「自分の地元にこんなすごい人がいるのか!」と地元に誇りを持ち憧れが生まれます。

皆さんも立場にとらわれず、まずは自分の人生から、理想を描き、柔軟に対応してください。一つ形になれば、輪を広げて地域の理想を描き、善くしていくことができます。一人の力は小さいですし、遠回りに見えるかもしれないけれど、人づくりで、一人から地方の未来を作っていきましょう。



1月8日付産経新聞1面に掲載をいたしましたが、将来を担う青年が弁論を競い合う「第33回土光杯全日本青年弁論大会」(フジサンケイグループ主催、積水ハウス特別協賛)が7日、東京・大手町のサンケイプラザホールで開催いたしました。当日お越しいただきました来場者の皆様、ありがとうございました。

今大会から出場年齢資格が35歳までとし、そして、発表に補足的に画像を使用したプレゼンテーション形式の弁論を導入するといた運営を図りました。

今回のテーマは「どうする? 混沌(こんとん)の世界情勢」。トランプ米政権の誕生など国際情勢が不透明さを増す中、日本が進むべき方向性などについて事前の論文審査を通過した10人が約400人の来場者の前で熱弁をふるいました。

最優秀賞の土光杯は「日本精神復活のために」の演題を掲げた会社員、清水崇史さん(35)が獲得しました。清水さんは、台湾の発展やアジア諸国の独立に尽力した戦前の日本人の取り組みを紹介。戦後、他者のために尽くす「日本精神」が失われていることに危機感を示した上で、「次の世代に立派な先人たちのことを伝えていく義務がある。次へ次へと灯(とも)していけば、気づけば国をも照らすことになる」と訴えました。

優秀賞フジテレビ杯には「『地の塩、世の光』たらん」の演題で同志社大学経済学部2年の野崎英子さん(21歳)が、ニッポン放送杯には「ICT技術と文壇の時代の安全保障」の演題で弁護士の大江弘之さん(29歳)が、そして、産経新聞社杯には「日本を飛び出して、世界で日本を発信しよう」の演題で松下政経塾の佐野裕太さん(30歳)がそれぞれ受賞しました。入賞者にはトロフィーのほか、副賞(最優秀賞は30万円、優秀賞は10万円の旅行券)がそれぞれ贈られました。

また、エキシビジョンマッチとして、台湾往復旅行券、図書カードが当たる抽選会の他、「日本の国連安保理常任理事国入り」の是非を問うディベートマッチも行われました。

土光杯弁論大会は、昭和を代表する財界人で、行政改革に晩年の人生をささげた故土光敏夫・臨時行政調査会長の功績を記念して毎年開かれています。

審査委員は、審査委員長の日下公人・日本財団特別顧問のほか6人です。

そして、フジテレビFNNニュースでも取り上げられました。以下のURLをクリックしてください。

http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00346417.html


受賞者の論文要旨は27日付の産経新聞特集面にて掲載いたしますので、ぜひご覧ください。

(写真は最優秀賞土光杯を獲得した清水崇史さん)

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【好評につき10月も開催!第12回「大東亜戦争を語り継ぐ会」】のお知らせ


月刊「正論」では、一昨年より靖國神社遊就館ホールで元日本軍人の方々の体験を聞く内容で「大東亜戦争を語り継ぐ会」の開催を重ねてきましたが、今回は 90歳を超えた元日本軍人で海軍エースパイロットであったの方をお招きし、当時の戦場での貴重な体験を、ジャーナリストの井上和彦氏のリアリティーあふれ るトークによって引き出します。

貴重なお話ですので、お子さん、お孫さんとご一緒にお越しいただければ幸いです。
皆様のご来場を心よりお待ち申し上げます。


日時:平成28年10月10日(月・祝)
12時30分受付開始、13時開会、15時25分閉会予定
※全席自由
会場:大阪市中央公会堂大集会場(大阪市北区中之島1-1-27)
http://osaka-chuokokaido.jp/map/
京阪電鉄中之島線「なにわ橋駅」1番出口より徒歩1分
地下鉄御堂筋線「淀屋橋」1番出口より徒歩5分
堺筋線「北浜」19番出口より徒歩3分
主催:産経新聞社 月刊「正論」
協賛:大阪冶金興業株式会社
入場料:事前予約2000円、当日2500円(税込)
お申し込み方法:定員1000名に達し次第締め切り
「10月語り継ぐ会参加希望」と明記し、郵便番号、住所、氏名、電話番号、チケット枚数を明記し、以下の要領でお申し込みください。
【はがき】〒556-8666(住所不要)産経新聞開発「語り継ぐ会」係
【FAX】06-6633-2709
【メール】kikaku@esankei.com ※表題に「10月語り継ぐ会参加希望」と入力
入場料のお振り込みのご案内をお送りします。ご入金確認後、チケットを発送します。
問い合わせ:産経新聞開発 TEL06-6633-6834(平日10時~17時)

元軍人の方にお越しいただくのですが、高齢のため当日の体調の具合によって、講演内容が一部変更する場合がございますので、どうぞご了承ください。

皆様のお申し込みを心よりお待ち申し上げます。

12回大東亜JPEG

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