2017年06月21日

抗がん剤治療後に子どもを持てる可能性を残すためのガイドライン

このブログは過去の闘病の記録なので、すべての記事をアップした後は、あまり更新するつもりはなかったのですが、先日気になるニュースがあったので、少し追記をーー


2017/6/19のニュースで、抗がん剤治療の副作用で、がん患者が治療後に子どもを持てなくなるケースを防ぐ為、日本癌治療学会が具体的な対策手順をまとめたガイドラインを発表したと聞きました。

正直、これまでガイドラインが無かったという事実に驚愕しました。

ニュースでは、抗がん剤の副作用で子どもが出来なくなる可能性があることを医師に告げられず、治療後に不妊でとても辛い思いをされた方が紹介されていて、涙が出そうになりました。

なにしろ、ニュースで「凍結した精子や卵子を使って体外受精を行うことで、子供ができる可能性」についても言及していたのですが、ちょうどその時にダイニングテーブルで絵本を読んでいた、日々元気いっぱいに成長している私の息子は、まさにそうしてこの世に生を受けたのですから。


夫の場合、抗がん剤治療をした大学病院の担当医に治療開始前の精子凍結を勧められ、不妊治療専門病院の担当医に、可能な限り多くの精子を採取し、なおかつそれを分割して凍結保存しておくことを勧められ、結果として最大5回分の体外受精が可能な状況を整えることができたのです。

しかし当時、夫と同じ病気に罹った方に直接聞いた話やネット上の闘病記などを見て、「精子凍結する人、しない人、凍結しても1回分だけの人、いろいろあるのね」と思った覚えがあるのですが、将来子供が欲しいと思った時の為に、いつ何をすべきかを知らなかった人がいたのかもしれない、精子凍結の必要性や具体的な指針をお医者様から示してもらえなかった方がいたのかもしれないと、今になって思います。

実際のところ、お医者様が、まだ生まれてもいない患者の子どもの事よりも、目の前の患者自身の命を最優先にするのは当然で、患者の方もまた、とにもかくにも早く治療を開始して生き残ることだけしか考えられないというケースが多いのではと思います。

かく言う我が家も、夫が病気だと分かった時に、夫が生きるか死ぬか、それだけで心も頭もいっぱいで、それまで当たり前のように口にしていた「将来」が全く見えなくなりました。

しかし、幸いなことに、私たちは精巣腫瘍の担当医から凍結精子の話を聞き、不妊治療の担当医に現実的かつ具体的な対策を示され、更にネットで精巣腫瘍の寛解後に子供を授かった方の話をみて、やっと治療後の未来に少しだけ気持ちを持っていくことができたのです。

そう、私たちは、精子凍結による体外受精という具体的な対策を知る事により、後に本当に子供を授かれたという事だけでなく、治療を行う上でのモチベーションも高めてもらったのです。

ただ生き残るという以上に、出産や子育てといった未来への可能性を持つことが、患者の治療への意欲を更に高める、まさに私たちはそれを経験しました。


今回ガイドラインが作られたことによって、それがニュースとなって一般的に知れ渡ったことによって、我が家のように、治療後にこれだけの幸せを手に入れられるがん患者の方が増えることを心から願います。


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seiso_syuyo_wife at 23:22|Permalink

2017年05月13日

最後に、医学の進歩への感謝を

精巣腫瘍という大きな病気に見舞われながらも、いま私たち夫婦は元気に2人の子供のパパ・ママとして生きています。

入院中、前向きになろうと口では言いながら、本当は後ろ向きな考えが心から離れなかったあの頃。

1ヶ月後の予定すら怖くて口にできず、「将来子供ができたら」なんて話しながらも、そんな生活をリアルに思い描くことが出来なかったあの頃。

あの頃の私たちに、今の家族の姿を見せて励ましてあげたいと心から思う毎日です。


BEP療法も体外受精も、日本では1980年代前半から行われ始めた新しい医療です。

どちらも心身の苦労を伴い、体外受精については批判的な意見も世間に残っています。

そして、どちらもまだ40年弱という歴史の短さから、それより長い年月を超えての影響度というのは不明です。

例えば、顕微授精で生まれた子供の生殖能力への影響や、BEP療法を受けた男性の予後50年や60年といったスパンでの影響や、その男性から自然妊娠で生まれた子供の70年や80年といったスパンでの影響などは、前例がほぼない(まだない)ので、良くも悪くも今後どのような新説が出てくるか分かりません。

しかし、その医療を受けなくてはならなかったのだから、リスクも覚悟の上で幸せをつかみ取りに行くしかないのです。

BEP療法を受けていなければ、夫は今はもう生きていないかもしれません。

体外受精をしていなければ、上の子は生まれてこなかったかもしれません。
(治療後数年で精子は戻ったけれど、健康な体であっても妊娠できるとは限りません)

でも、夫も私も上の子も下の子も、いま元気に幸せで暮らしています。
結果論ですが、これが私たちの「正解」だったのです。
少なくとも、今現在においてはこれが「100点」です。

病気になったのが30年以上前だったなら、この幸せはありませんでした。

ですから、私たちは今日の医学に心から感謝をしています。

そして、これからも更に進歩し続ける医学が、精巣腫瘍で悩み苦しむ多くの人々を、私たちと同じように幸せにしてくれることを切に願っています。


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seiso_syuyo_wife at 00:14|Permalink

抗がん剤治療後の体外受精か自然妊娠かの判断

抗がん剤治療後に精子が自然な状態に戻った場合、自然妊娠に期待するか、それとも敢えて凍結精子で体外受精をするのか、判断に迷うところだと思います。

まず、体外受精はとてもお金がかかりますし、女性の心身への負担が大変大きいものです。

何もトラブルが無いとしても、毎日病院に通って注射を何本も打ったり、採卵や受精卵の移植手術を受けたりという肉体的な負担もあれば、仕事をしていると早退やお休みをたくさん取らなくてはならずストレスを感じたり、更には私が経験したOHSSやその他の合併症になるリスクもあります。

それに加え、凍結すれば精子の質というのは当然下がりますし、そもそも「精巣腫瘍という病気を持っている状態で採取した精子に問題はないのか?」という疑問もあります。
(これについては問題ないというのが医学的見解のようです)

しかし、体外受精でしか子供を授かる見込みが無いのであれば、それに踏み切るしかありません。

それに対して、抗がん剤治療後に精子が正常に戻った場合には、「果たして抗がん剤の副作用は大丈夫なのか?」という疑問が生じます。

一般的には、薬が体に残っている間は正常な精子が出来ず、治療後2~3年もすれば薬は完全に体から抜け、だからこそ活きている精子が出来るようになると考えられるようです。

ただ、どれも100%の話ではありません。
もしかしたら、自分には当てはまらない話かもしれません。

なので、体外受精か自然妊娠か、どちらに挑戦するかは自己判断なのです。

私たち夫婦は、治療終了から1年後に体外授精で妊娠、4年半後に自然妊娠をしました。

1人目の時は、治療後何年すれば精子が正常な状態に戻るか分からず、年齢的にも待っている猶予は無いと考えて体外授精に踏み切りました。

2人目の時は、すでに精子が正常に戻っていることが分かっていて、「自然妊娠した場合の赤ちゃんへの薬の影響」を心配しましたが、ここはやはり「薬の影響があるならそもそも妊娠に至らないのでは」という考えから、まずは自然妊娠にチャレンジし、ある一定期間トライしてダメだったら、もう一度顕微授精を行うかを検討することにしました。

そして、幸いにも自然妊娠し、元気な赤ちゃんを出産しました。

凍結しておいた残りの精子は、2人目の子供が無事に生まれた数か月後、凍結の期間延長のタイミングが来た際に病院に破棄をお願いしました。

我が家は子供は2人までと決めていたからです。

それでも、2人目の妊娠中に1回だけ凍結保存の延長をしました。

妊娠したと言っても出産に100%はありませんから、無事に元気な赤ちゃんが生まれてきてくれるまで、万が一に備えた保険というか、なんとなく願掛けのような気持ちで凍結精子を残しておいたのでした。


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seiso_syuyo_wife at 00:08|Permalink