大学2年生の川人ゼミ夏合宿で、外務省の前田振一郎さんのお話を伺い、世の中にはすごい人がいるんだなあと衝撃を受けたことを思い出します。6年後、まさか自分が話すことになるとは・・・とうてい前田さんの話には及びませんが、今言えることを精一杯話させていただきました。


1 自己紹介
  皆様。こんにちは。川人ゼミ卒業生の井上貴至と申します。
  2004年に入学しまして、現在、社会人4年目。総務省というところで、地域づくり、地方行政のプロとして働いています。

2 僕が総務省で働く理由
  僕は、川人先生と同じ大阪に生まれ、育ったのですが、(この中に、大阪出身の肩方はいますか?)中学生くらいの頃から、なんで大阪はこんなに緑が少ないのか、大阪には大学生が少ないのだろうか、路上生活者がたくさんいるのだろうか、空港が3つもあるのだろうか、どうして大阪の企業は東京に本社を移すのかというようなことが、ずーっと疑問でした。

  大学に入ってからも、こういう疑問・関心がどんどん膨らんできまして、例えば、商店街の振興策を考えるゼミに入ったり、あるいは、札幌のYOSAKOIソーランや帯広の北の屋台を研究したり、YOSAKOIソーランは、例えば、名古屋のど真ん中祭りとか表参道のスーパーよさこいとか全国に波及していますが、帯広の北の屋台を真似したところはあんまり成功していない、その違いは何なのだろうかと考えたり、あるいは、路上生活者の炊き出し、見回り、法律相談をしたりしていました。

  そうした中で、地域づくり、地方行政への思いがますます高まって、地域づくり、地方行政を一生の仕事にしたいと選んだのが総務省でした。
  地域づくり、地方行政に関わる仕事はたくさんありますが、その中で総務省を選んだのは、総合行政としての魅力や、尊敬する先輩がたくさんいらっしゃったこともそうですが、一番の理由は、総務省は、霞ヶ関だけでなく、市町村、都道府県という現場の最前線で働く機会に、とても恵まれていることです。

  川人ゼミの皆さんもそうでしょうが、僕も大学時代、川人先生のお話、川人ゼミのフィールドワークを通じて、現場の重要性を痛感しました。
(皆さんは、どんなフィールドワークが印象に残っていますか?)現場から学ぶという思いは、これからも大切にしたいです。


3 これから働く学生へのアドバイス~煮詰められた情熱を仕事にしよう~
  これから働く皆さんにひとつアドバイスしたいことは、「煮詰められた情熱」をぜひ仕事にして欲しいということです。「煮詰められた情熱」ってなんだよと思われるかもしれませんが、少しだけ聴いてください。

 今、興味を持っていることがあるならば、その興味をどんどん突きつめてほしいで
す。ゼミの先生でも、まわりの友達でも、どんどん相談すればいいし、あるいは、本を読みこんでもいいですね。その興味に関するイベントや集まりもたくさんあります、そういうものにどんどん参加すればいいです。


 そういう活動を続けていると、俺はこれに興味があるぞと言い続けていると、また、まわりの友達もたくさんのチャンスをくれます。僕も、大学時代に先ほど申し上げたような活動を続けていますと、例えば、川人ゼミの同級生から、総務省の職員の方が、東大でゼミを開くから「いのうえ君もどう」と誘われて、一緒にゼミを受講したりしました。

 興味を突きつめる中で、ひょっとすると、様々な葛藤があるかもしれません。あるいは、他のことに興味がうつるかもしれません。それでも一向にかまいません。興味を突きつめるという過程を繰り返して見つかったほんとにやりたいこと、「煮詰められた情熱」こそ、ぜひ仕事にしてほしいです。

よく「好きなことを仕事にしよう」といわれますが、言葉が不十分だと思います。好きなことを煮詰めて、突きつめて、それでも好きなこと、「煮詰められた情熱」こそ、仕事にしてください。

 中学校や高校の運動会では、「フライング」は禁止ですが、社会では、「フライング」は大歓迎です。なにも就職活動の時期になって、働くことや自分の興味について考え始めなければならない、なんてことはありません。どんなことでも、興味があるなら、ぜひ「フライング」して「煮詰めて」ほしいです。

 仮に、今、興味を示すものがない、自分自身の興味が分からなくても、心配する必要はありません。皆様の周りには、真剣に面白いことに取り組んでいる人、この人と一緒にいると面白いなという人がたくさんいると思います。ぜひ、自分自身の興味が分からないという人は、真剣に面白いことに取り組んでいる人、その人の活動を、夢を応援してください。面白い人と一緒に活動してみてください。ひとりで考え続けてもなにもうまれませんよ。面白い人と一緒に活動する中で、必ずや自分自身のやりたいことも見つかってくるはずです。


  余談ですが、川人ゼミのOBにも、面白い人は、たくさんいます。例えば、川人ゼミの後輩の(皆さんから見れば先輩ですね。)安部敏樹君が立ち上げたリディラバという団体は、「社会の無関心を打破する」ということをテーマに、面白いスタディーツアーを次々に企画していて、僕自身、とても注目しています。

また、同じく川人ゼミの後輩の鈴木悠平君も留学を延長して、宮城県の石巻市に住みついて、ボランティア活動を続けていますが、彼が立ち上げたLAST ONE MILE PROJECTで、僕も早速、現地で活動しましたし、東京でも、川人ゼミ同期の堀越直人と一緒に、アイデアを出したり、人の紹介をしたり、いろいろやっています。夏休み、良かったら一緒に行きましょう。

  被災地の復興ということでいいますと、これからお話しする福田かおるちゃんともいろいろやっていますが、川人ゼミの皆さんと、社会のために、それがたとえ小さな一歩であったとしても、社会のために活動することが、今、一番楽しいことです。

4 僕の「煮詰められた情熱」~好きな街で働ける社会を作りたい~
  総務省は、社会人1年目に各都道府県に赴任する伝統があります。僕は、愛知県に赴任しました。愛知県のお話を少しだけしようと思います。

  愛知県といいますと、名古屋とか豊田とかのイメージが浮かぶかもしれませんが、長野県・静岡県の県境に、愛知県の一番右上ですね、豊根村という村があります。合併する前は人口140人弱、ハーフマラソンを走りますと、ほんとに観客が3人とか5人しかいない、そういう限界集落ですが、
(皆さん、限界集落ってどんなイメージがありますか?)寂しいとか、産業がないとか、高齢化が進んでいるとか、そういうマイナスのイメージばかり浮かぶかもしれませんが、実際に何度もそこに足を運びますと、「豊かな暮らし」「濃厚な文化」が根付いていることを実感します。

蜂を追いかけて甘露煮にしたり、肉厚の椎茸、何センチもある椎茸を炭で焼いて、醤油を一滴垂らしていただいたり、とれたての鹿肉を生姜につけて炒めたり、もうこれがほんとに美味しいんですね。

そして、高原の空気がほんとに清々しい、とても軽いんです。ほんとに気持ちいいです。

11月には、花祭りといって、夜の18時から朝の8時まで14時間踊り続ける祭りもあります。踊り続けると、てえほへてほへというお囃子が、ずーっと耳に残ります。2・3週間、寝るときに目をつぶると、てえほへてほへというのが聞こえてきます。良かったら、皆さん、今度、一緒に行きましょうか。


 僕は、こういう「豊かな暮らし」「濃厚な文化」をぜひ残していきたいです。ふるさとの大阪もそうですが、それぞれの地域には、文化や歴史、食事が根付いています。「豊かな暮らし」「濃厚な文化」を支えるために、「好きな街で働ける社会を作る」ということが、僕の「煮詰められた情熱」です。「好きな街で働ける社会」をつくるために、地方行政の果たす役割はとても大きいと思っています。

 今も、霞ヶ関で国の制度を考える一方、愛知県やお世話になった地域の皆様から、日々、自分の街を良くするための、例えば自治基本条例をつくりたいけどどうしようとか、いろいろな相談を受けています。関係性を築き、関係性を広め、関係性を深めながら仕事をすすめていくことが、仕事の醍醐味です。


5 まとめ
  今の仕事の具体的なお話は、なかなかお話しする時間がありませんでしたが、最後に、川人先生がいつもおっしゃられている4つの考え、「現場主義、自主性、国際性、多様性」と、川人ゼミの仲間を大切にして、素晴らしい学生生活を送られることを祈念いたしまして、僕の講演を終わらせていただきます。
  ご静聴どうもありがとうございました。