大分県臼杵市の前の市長の後藤國利さんに、「森」を御案内していただきました。

PC110146

日本の標準的な杉林。外からぱっと見ると、青々としていますが、中に一歩入ると・・・

PC110143

なんと内側には、枝が一本も生えていません!!

道路に面した側は光があたりますが、杉林の中は鬱蒼として光が届かないから。


「いのうえくん、こういうのは杉林ではなく、詐欺林(さぎばやし)というんだよ。」

「(小林よしのりの漫画に出てくる)びんぼっちゃまみたいですね。前だけスーツで後ろは裸。」

PC110144

胸高断面積(※)が1ヘクタールあたり80平米を超えて、中には光がほとんどあたりません。草が生えないから、土壌が流出します。栄養がなく、杉も細いまま。いわゆるもやし林、線香林です。

※胸高断面積は、胸の高さ(約1.3メートル)における半径の二乗×円周率πで求められます。半径5.65メートルの円(100平米)を描いて、その中の杉の胸高断面積をはかり、100倍すれば、1ヘクタールあたりの胸高断面積(合計)です。

PC110148

今までの日本の森は、補助金をもらっての切り捨て間伐。道をつくるときも、20年後、30年後の長期的収穫を見据えず、そのときだけ通れればいいやという発想。急な斜面かどうか、水の通り道がどこかを無視してつくるので、2.3年も経たないうちに、崩れてしまいます。豊かな土壌がまた流出します。

PC110154

森が荒れ、土が荒れ、国土が荒れる。こうなると人も住めなくなる。家を建て替えて、補修工事をして、トータルでいくらかかるのでしょうか。

PC110170

県有模範林。”模範的な”道の崩れ方です。

PC110165

後藤國利さんの自慢の森(旧三重町)。遠くから見ても、一本一本の杉がしっかり生長していることがよく分かります。

PC110166

十分に間伐しているので、中までよく光が届きます。広葉樹が自生していて、土も元気です。これで、胸高断面積が1ヘクタールあたりおよそ45平米。今までの感覚からすると、ここまで伐って大丈夫かなと思いますが、これでようやく健全な共生林が育成されます。

一緒に視察した臼杵市の地宝公務員の方が、「いつも災害復旧のために行く現場とは全然違う。これほど明るい、歩きやすい森もない」と感激されていました。

PC150180

健全な共生林を作るためには、将来を見据えた適切な間伐が必要。そして、間伐を続けるには、密度が高い路網が必要です。

路網のつくり方について、その道の大家「大橋慶三郎」さんがまとめた本『作業道 路網計画とルート整備』。豊富な事例で、丁寧に書かれています。

全体の地形をよく見て、考えた上で・・・


・水の流れを考える。谷筋の場合は、敢えて道に溝をつくり、谷から集まる水が溝を流れるようにする。


・法面(のりめん。斜面の高さ)は、1.4メートル以下。


・できるかぎり尾根を利用する。


後藤國利さんの森も、大橋慶三郎さんの指導のもと、20年・30年かけて、密度が高い路網(1ヘクタールあたり200平米以上)を整備しています。1ヘクタールあたり200平米以上ですと、道まで一番遠いところでも50メートルもないので、(実際は林道で入り組んでいるのでもっと短い。)間伐した木をすぐに自動車で運ぶことができ、収益性が格段に上がります。補助金をもらわなくても、間伐で黒字がでているそうです。

そして、路網が整備されているので、経営者や管理者もすぐに森を見にいくことができます。見ることでたくさんの情報がはいります。観察が一番の保養です。



今、森林政策は大きく変わろうとしています(森林・林業再生プラン)。これまでのような切捨て間伐には、原則として、補助金が支給されなくなり、施業の集約化が求められます。また、森林整備計画を作成する市町村の役割が大きくなります。

こうした状況で何を目指すのか、後藤國利さんの森はひとつの道筋を示しています。ともすれば手段としての計画の策定や施業の集約化が目的化したり、結果としての数字に過ぎない木材自給率の向上にばかり目を奪われてしまいがちですが、こうしたときこそ本物を見てほしいです。林業に、山村振興に、行政に携わる全ての人が見てほしいです。