11月28日、「一票の格差」が最大4・77倍だった7月の参議院議員通常選挙について、史上はじめて「無効」判決が出された。

最近の参議院議員通常選挙の定数是正については、人口がそこまで多くない2人区の議席を1つ削減し、その分を東京・神奈川などの大都市部に割り振ることで対応してきたが、その限界がはっきりと示されたことになる。

人口60万人弱の鳥取県も含めて、全都道府県に最低1つの議席を配分する現行制度のもとで、一票の格差をできるかぎり小さくしようとすると、人口1300万人強の東京都には22議席、人口900万人強の神奈川県には15議席・・・を配分しなければならないが、こうした場合、参議院議員の定数は大幅に増えることになる。

(現行の参議院議員通常選挙の都道府県選挙区は全国で146議席だが、436議席(3倍近く)必要になる。)

また、この場合でも山梨県と鳥取県には1.47倍の格差が生じるし、そもそも1人区と22人区が並立する選挙制度は、いびつである。

理想の選挙制度ってなんだろうか。もちろん選挙制度にパーフェクトは存在しないのだが、求められる条件から考えてみた

一番大切な条件として、<1>民意が反映されること
これは①一票の格差が少ない、ことに加えて、②死票(選挙区における落選者への票)が少ない、さらに③選挙時の公約が実際の政治に反映されるということが求められる。

そして、<2>意思決定ができること
例えば、かつてのイタリアは少数政党が乱立し、それぞれの政党が離合集散を繰り返すことで、不安定な政治状況が続いたが、これはよくない。

だから現在のイタリアは完全比例代表制だが、第1党が定数の54%に満たない場合には、定数の54%を第1党に無条件に配分することで、政権の安定を図っている。

日本の衆議院議員総選挙の小選挙区制も、思想はほとんど変わらない。比較第1党が圧倒的な議席を獲得することで、政権交代と、交代後の政権の安定を期待している。

しかし、小選挙区制では、選挙区で1人しか当選できないから、死票が多くなり、多様な民意が反映されにくいという問題がある。

<1>民意が反映されること、<2>意思決定ができることという条件を満たすため、「一院制、定数100人、全国完全比例代表制、名簿拘束式(政党名を投票)」はどうだろうか。

全国完全比例代表制なので、①一票の格差は存在しないし、②死票も極めて少ない。
そして一院制で、定数100人ならば意思決定もしやすい。

今の日本には衆議院議員が480人、参議院議員が242人存在するが、480人+242人の会議で物事が決まるとはとうてい思えない。

(もちろん、そうした弊害を避けるため、委員会制度を採用して、個々の法案等の審議は専門の30人程度の委員会で行うことが原則だが、国会議員全員が集まる本会議での討論も少なくなく、どうしても一方通行のやりとりになりがちである。

また、国会議員が480人+242人もいると、個々の議員がパフォーマンスを求めることも少なくなく、国会議員が連携して一緒に物事をつくろうという雰囲気は生まれにくい。)

今の日本では、個々の国会議員の力が強く、所属する政党の考え方と個々の国会議員の考え方が必ずしも一致しないことも珍しくないが、それが政治をいたずらに複雑にしているし、③選挙時の公約が実際の政治に反映されない原因にもなっている。

政党名だけを投票する制度になれば、各政党は、まず理念・考え方をしっかりと決めて、その理念・考え方を実現するために一番ふさわしい人(実行力がある人・発信できる人など)を政党の名簿に記載することになり、今のように、所属する政党の考え方と個々の国会議員の考え方が一致しないということも解消される。

この場合、全国が選挙区となり、多額の選挙費用が必要になることから、一定の得票を得た政党には、選挙費用を国費で負担することや、政党の政策能力を高めるため各政党に法曹資格者等を配置することも考えられる。

いずれにせよ、高裁レベルとはいえ、衆議院選挙も参議院選挙も「無効」判決が出たのだから、弥縫策ではなく、選挙制度に求められる条件からしっかりと議論してほしい

確かに、アメリカの下院は小選挙区制をとっているが、世界には完全比例代表制で政党名を投票する国も少なくないし、アメリカの場合は、地域によって、黒人が多い、ヒスパニックが多いなど格差が大きく、小選挙区制だからといって民意が反映されにくいわけでは必ずしもない。

日本にはどういう選挙制度が合うのだろうか。日本の文化や歴史も踏まえて議論することが求められている。