007年に町内唯一の高校が閉校になった鹿児島県長島町。長島町と同様に、域内に高校や大学がない自治体は、既に全国の約1/4、数にして400を超えています。


それらの自治体で共通の現象は、16歳~24歳の人口が凹(くぼ)んでしまうこと。まさに、杯(さかずき)型社会です。


よく、日本の年金問題では、3~5人の現役世代で1人の高齢者を支える「騎馬戦型」、1人の現役世代で1人の高齢者を支える「肩車型」などが言われますが、杯型社会はそれらよりもある意味深刻です。


一番の問題は、杯型社会では、高齢者ばかりになり、往々にしてチャレンジが少なくなること。


チャレンジする・成長するということは、今の自分とは異なるものを受け入れるということですが、人間は、年や経験を重なると、異物を受け入れる力が弱くなり、チャレンジが難しくなってしまいます。


そのときに重要なのが、若い世代が新しいチャレンジをすること。そのチャレンジを見て、「俺たちも頑張ろうか!」高齢者にもチャレンジが連鎖していきます。また、子供たちも「あの人、かっこいいな!」というところから可能性や選択肢が広がってきます。

だからこそ、地元に若い人が少なくなった杯型社会には、外から若くて優秀な人材を引っ張ってくる、若い人材の活躍の場をつくることが、何よりも求められます


長島町のさまざまな取組は、いつもその点を強く意識しています。


☆都会の大学生が、地元の中学生に勉強のやり方や将来のキャリアデザインを伝える獅子島の子落とし塾

☆高校生や大学生が、長島町に滞在して、CMやドキュメンタリーを制作するメディアキャンプ
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☆高校生が、地元の生産者のご自宅にホームステイして、さまざまな体験をしながらその生産者の公式ホームページを作成する島TECH

☆高校生が、起業アイデアを考えるだけではなく、長島町でインタビュー調査などをすることで、サービス内容を練り上げていくスタートアップベース
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☆大学生が、政策立案だけではなく、長島町に滞在して実現までコミットできるまで帰れません


☆「田舎暮らしはキャリアアップ!」日本の自治体で初めてインターネット求人大手ビズリーチの新しいサービス「スタンバイ」を活用した地域おこし協力隊の募集
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という取組は、まさに若い人材のチャレンジを支える一環です。そうしたチャレンジを見て、地域の中でも、例えば、これまで養殖業を営んでいた人が加工業にも取り組むなどさまざまなチャレンジが生まれてきています


こうした展開を全国に広げていきたいと、僕は強く思っています。


ところが、高校生や大学生が田舎に来るためには、どうしても旅費がネックになってしまいます。今、長島町では、地方創生の交付金を活用したり、町長や議会・住民の皆様の理解で若者を呼ぶための旅費を計上していますが、これから続けていく・そして全国に広げていくためには、仕組化することが大切です。


航空会社やJRのような長距離公共交通機関も、地域支援の一環として、地域でしっかり活動する学生には、閑散期の旅費を大幅に値下げするなどの支援をしてほしいですし、地方創生でも交付金だけではなく、若者の移動に対する投資をしっかりしてほしいです。


小さな市町村に官僚らを派遣する地方創生人材支援制度を提案した立場として、人材支援制度の次の展開の一つとして、このことは地方創生担当大臣始め幹部にもしっかりと伝えていきたいです。


今、子育て政策を充実させても、すぐに人口構造には反映されないので、中期的な人口減少は避けられませんが、(ただし、長期的には人口を安定させることは可能です。長島町では子宝お祝い金、ぶり奨学金などの地域を挙げて子育てを応援する仕組みで、昨年8月、町始まって以来の自然増になりました。)町のことが大好きになり、町のために何かをしたいなという人を増やしていくことは十分に可能です。


また、若者も机の上で地域づくりの事例を学ぶだけでなく、地域の中に入り込んで、さまざまなプレーヤーとコミュニケーションしたり、あるいはそもそもの課題を考えたりすることが、大きな成長につながりますし、そうした能力は、これからのICT化・ロボット化・機械化が進む社会において、きっと生かされるはずです。


若者とともに、地域もチャレンジし、成長していく。今、杯型社会に一番求められることではないでしょうか。旅費の支援などそのための仕組みづくりも進めていきたいです。


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