(※2月に一度あげたものを、9月に改訂した内容として加筆修正しました)

9月9日から第34回目の欧州野球選手権がオランダのホーフトドルプで開催されます(2年置き)。
出場するのは、前回大会上位10チームと、予選を勝ち上がってきた2チーム。




6チームずつ2グループで総当たり→それぞれ上位3チーム同士で総当たり(隣の上位3チームと対戦し、1次リーグの上位3チームとの成績も持ち越して合算)→1位と2位で決勝

という対戦方式。

大会が近付いてきてから書こうと思ってもなかなか面倒になって書けないので、今のタイミングに書いちゃえ、ということです。

facebookのページを見てた方は知ってるはずですが、こちらのページでは毎日1カ国ずつ紹介していってました。まあこれを全部一気に読むのも労力を要するだろうと。


組み合わせはこんな感じ。

グループA

・オランダ

・チェコ

・ドイツ

・ロシア

・イギリス

・スウェーデン(Bプールから昇格)


グループB

・イタリア

・スペイン

・フランス

・ベルギー

・ギリシャ

・クロアチア(Bプールから昇格)


この大会現在は3部制で行われております。今ここで話しているヨーロッパ選手権本大会=1部。この一つ下のカテゴリーの大会、さらにもう一つ下のカテゴリーの大会まであります。偶数年に1部(本大会)と3部が行われ、奇数年に前年の一部の下位2チームや3部の上位2チームを加えて二部大会が行われるという形式ですね。

・2014ヨーロッパ選手権Cプール(3部) 結果

1)イスラエル ※翌年開催されるBプールへ昇格
2)スロベニア ※同上
3)ルーマニア
4)アイルランド
5)フィンランド
6)ラトビア
7)ハンガリー
8)ノルウェー


Cプールは本来ここにいるべきではないイスラエルが全勝。
WBC予選と違ってユダヤ系アメリカ人で占められるような構成ではないですが、国内にも一定の競技人口があり、米国から移住してきた選手も多いイスラエルがB復帰を飾りました。
隣国のイタリア、欧州最高峰イタリアンベースボールリーグのチームで正ショートとしてプレーしていた経験を持つヤコブ・トロベックが牽引するスロベニアが2位となっている。



・2015ヨーロッパ選手権Bプール(二部) 結果

○クロアチアラウンド
1)クロアチア ※翌年の本大会進出
2)スロバキア
3)ウクライナ
4)ブルガリア
5)スイス
6)スロベニア ※Cプールへ降格





○オーストリアラウンド
1)スウェーデン ※翌年の本大会進出
2)オーストリア
3)イスラエル
4)リトアニア
5)ベラルーシ
6)ポーランド ※Cプールへ降格




この2つの大会が、今大会の予選として開催されていました。

概要の説明はだいたい終わったと思うので、ここから本題の12カ国の紹介に入っていきます。ちょっと量が多いのですがそこはご容赦願いますね。。

最後に前回大会の戦績を付けてますが、あくまで参考までに。層が薄い国はどの試合を捨てて、主力投手をどこ相手に使うかでかなり結果が変わってきたりする、という点もこの大会の特徴の一つですから。




○スウェーデン代表

ヨーロッパ選手権本大会常連国であり、北欧では傑出した実力をもつ。
前々回2012年のヨーロッパ選手権ではドイツ、チェコに続く6位という好成績を残し、2010年大会ではこの大会で優勝するイタリアから大金星を奪っている。

2005年、2009年にはワールドカップにも出場するなど、位置づけとしてはドイツ、チェコ、フランスといった国に続く欧州7-8番手あたりだろうか。

しかしながら、前回大会(2014年)は11位と低迷。10位以内に与えられるシード権を逃し、15年にはヨーロッパ選手権Bプール(予選)に出場した。予選でも危なげない戦いというわけではなく、特に予選決勝のオーストリア戦は9回に大逆転という苦しい試合だったのが印象的だ。
7-8番手という位置づけも既に揺らいできているのかもしれない。


選手は主にスウェーデン国内のリーグでプレーしている選手でほとんど構成されるが、上位リーグであるドイツのブンデスリーガに籍を置く選手もちょこちょこいるのが以前からの特徴と言えそう。
また、スウェーデン系アメリカ人の選手も要所要所に配されており、以前代表監督を務めていたデニス・クック監督も2度のワールドシリーズ出場経験を持つスウェーデン系の元メジャーリーガーだったりする。

ただ、スウェーデン出身のマイナーリーガーをいまだ輩出しておらず、WBC予選に出場しているフランスやチェコのような国とはそういったところから、一歩遅れをとっているという印象を抱かせる。

スウェーデン投手陣を担ってきたのは、野球一家で知られるクラッソン一族のホアキム・クラッソンとヤコブ・クラッソンの兄弟2枚看板。

特に兄のホアキムは前述の2010年欧州選手権イタリア戦で6回2失点と好投し勝ち投手になったキャリアを持ち、アメリカのコミュニティカレッジやドイツでのプレー経験を持つベテラン右腕。
今回はホアキムの方は世代交代もあってか選出されなかったが、今度はドイツのハンブルグでプレーしているヤコブの方に金星を導く投球に期待したいところ。

他にはナックルボーラーやアンダースローといったバラエティの豊富さが特徴的だが、全体的な球威不足が欧州選手権の上位・中位クラスと比較すると浮き彫りになる。



打線で長年看板選手として活躍しているのは、外野手のピーター・ヨハネセン。
欧州最高峰のリーグであるイタリンベースボールリーグでもプレー経験を持ち、現在はドイツ・ブンデスリーガのマインツで活躍している左の好打者である。
最も国際レベルの投手との対戦経験を持つ選手であり、2009年に地元スウェーデンで開催されたワールドカップでは現在韓国を代表するクローザーとして活躍しているソン・スンナク(現ロッテジャイアンツ/13年WBC代表)から本塁打も放っている。
マイナー経験のある大ベテラン、スウェーデン系アメリカ人内野手のアダム・ソルギも今回代表の顔として復帰している。


シードを逃した前回を考えるとまずは手堅く10位以内を狙いたいところだが、イギリス、フランス、ベルギーといった5-8番手を争う国々とも本来互角に戦える実力を持っているだけに、それ以上の成績にもやはり期待したい。

・前回大会戦績(2014)

対イギリス ●1-7
対イタリア ●3-12
対ベルギー ●0-11
対フランス ●3-8
対ドイツ  ●8-12
対クロアチア●10-11
対ギリシャ ○2-0




○クロアチア代表

予選突破とシード漏れ(11位以下)を繰り返している野球のクロアチア代表。言いかえると、ヨーロッパ野球における10-12番手くらいの国と言えるだろうか。

2009年のワールドカップでは日本と対戦し、大谷智久(現ロッテ)から一時同点の3ランホームランを放つ展開に持ち込んだことは印象深い。
元巨人の門奈哲寛が2004年にクロアチアリーグのナダ・スプリットでプレーしたことでも知られる。

東欧ではチェコに続く国と言う位置づけだが、長年現在のポジションを脱することはできていない。
特に前回大会は最初の2試合の19失点(対オランダ)、18失点(対スペイン)を始め7試合中5試合で二桁失点と根本的な実力不足を感じさせた。
試合を作れるような投手はメキシコ出身のベテランエース、ジェームズ・サマーズ(ロシア戦9回3失点)だけ。勝利挙げたのはそのロシア戦と11-10の乱打戦を制したスウェーデン戦の2つだった。

サマーズと同じく帰化選手であるエルネスト・ペレイラ(ベネズエラ出身、元中日育成)の2人に対する依存度が高かったことがこれまでのクロアチアの積年の課題と言われてきた。


二人が高齢化していることもあって、不安視された昨年の予選。
サマーズは引退してGM兼代表監督になっており、ウクライナ、スイス、ブルガリア、スロバキアなど、ヨーロッパの中堅グループが集う難しい組に入ってしまう。

決して予選を勝ち上がるのは楽ではない状況だったが、予選決勝でスロバキアを退け、見事無敗で再び本大会切符を獲得。
ペレイラもメンバー入りはしていたが決勝では先発せず、クロアチア野球の成長を感じさせる予選突破だった。
ちなみにペレイラは今大会ではロースターにも入っていない。


昨年は予選突破のほかに、クロアチア出身者初のMLB傘下選手が誕生というニュースも入ってきた。
18歳のアントニオ・ホルバティッチがタンパベイ・レイズとマイナー契約。
5月にクロアチアで行われたMLBのトライアウトでは89マイルを計測した右腕で、予選でも投手兼三塁手として出場している。


昨年末の台湾ウインターリーグでもクルノ・ゴイコビッチが130キロ中盤のムービング系という球威ある速球を披露しており、守備面さえしっかりすればこれまでとは少し違ったクロアチアの戦いが見られるかもしれない期待を抱かせる。

目標はシード権を獲得できる10位以内となってくるはず。格上相手にも互角に戦えるレベルの投手は何人かいるだけに、野手陣のフォローが不可欠となってくるだろう。

・前回大会戦績(2014)

対オランダ ●2-19
対スペイン ●2-18
対チェコ  ●2-13
対ロシア  ○10-3
対ギリシャ ●0-10
対スウェーデン ○11-10
対イギリス ●0-9


○ロシア代表

2001年には予選リーグでオランダを破るなどの好成績を残しヨーロッパ選手権準優勝。2年後のワールドカップでは林智勝(現中信兄弟)らを擁するアマチュア台湾代表を破るなど、ヨーロッパ二強であるイタリア、オランダに続く勢力の一つとして名を連ねていた。

ただ、2000年代中盤あたりから失速が始まり現在はヨーロッパ選手権出場を逃す、あるいは出場しても10位以下の成績しか残せない、という現状にある。五輪種目から野球が外れた影響が大きかったのでは?という見方が多い。

前回大会は一応8位という記録が残っておりギリシャから1勝しているが、クロアチア、ギリシャ、ロシアの3チームが勝敗が並んだ得失点の関係で最上位に来ただけであり、実質的にヨーロッパ野球において10位-12位くらいという位置づけは変わっていないと見ていい。実際、クロアチアにも敗れている。


こういった現状にある一方、一定のレベルに達している投手をちょくちょく輩出している部分がロシア野球の数少ない光明の一つだろうか。

現在ロシア代表のエースをつとめる左腕のアンドレイ・ロバノフは2011年まで4シーズンミネソタ・ツインズのマイナーでプレーしており1Aアドバンスドで2010年には好成績を残している。
彼の弟であるニキータ・ロバノフも80マイル台中盤-後半を計測するとされ、現在代表ではプレーしていないがニコライ・ロバノフ(前述のロバノフ兄弟とは血縁関係にない)もツインズ傘下で数年前までプレーしていた。彼らの他にもU18代表の左腕アントン・クズネトソフやデニス・レオノフなど80マイル後半クラスの若手投手が台頭してきているとされている。

比較的球威のある投手がコンスタントに出てくるのはロシア野球の大きなアドバンテージである。

そういったピッチャーを抱えながら成績が低迷していることも一つの事実であり、守備力や打力と言った野手陣、投手陣も全体的な層の厚さには難があるということの裏返しであるとも言えそう。野手と投手の垣根が低く、投手登録の選手が普通に野手で出場したりするあたりにもそれを感じさせる。


一度はヨーロッパの上位に食い込んでいた国なだけに、その時期と比べて何が足りないかは自覚しやすい環境にあるはず。
現状と当時の違いを照らし合わせながら少しでもかつてのような戦いができるチームに近づいていきたいところだ。


・前回大会戦績(2014)

対チェコ ●0-5
対ギリシャ ○14-1
対スペイン ●0-12
対クロアチア ●3-10
対オランダ ●1-12
対ベルギー ●2-12


○ギリシャ代表

野球の歴史自体は長い国が多いヨーロッパだが、ギリシャ野球の歴史は欧州野球のなかではかなり浅い。
そもそも、野球の協会が作られるきっかけ自体が2004年のアテネ五輪開催だったりする。

五輪開催が決まり、97年にようやく野球連盟創立。
突貫工事気味にアテネ五輪にむけてほぼギリシャ系アメリカ人で構成されたチームを編成し、前年2003年の欧州選手権では準優勝。

五輪では金メダルを獲得するキューバには1点差の好勝負を演じたほか、イタリアから大会唯一の勝利を獲得。

日本とも7回まで0-2と接戦だった。
当時のメンバーには二刀流で当時は大学生だったニック・マーケイキス(現ブレーブス)が居たことを知ってる人も多いだろう。

五輪で使われた球場が取り壊しになってしまったのは状況を考えると致し方ないが、決してオリンピック野球がギリシャで行われたことは無駄だったわけではない。

その後は国内リーグも誕生し、サッカーやバスケットボールの強豪クラブで知られるパナシナイコスにも野球チームが生まれるなど、少しずつであるが裾野は広がりつつあるようだ。

ただ、現状国内のリーグレベルはまだまだといったものだと思われ、代表チームはギリシャ系選手に対する依存度は高い。

大会のグレードや時期などによって集まってくる選手の質は変わってくる。
現役マイナー選手らを揃えられたアテネ五輪のようなチームを編成するのはなかなか難しいが、元マイナーや元独立、カレッジあたりでのプレー経験を持つ選手が中心となってくる。

前回大会はクロアチアに快勝した1勝のみ。得失点の関係で免れたが、予選送りになってもおかしくない成績。
元々失点が多い一方、乱打戦に持ち込むことも多かったギリシャの野球だが、ただ単に失点が多いだけのチームになってしまっていた。

現在の中心投手がアテネ五輪に出場している大ベテランのピート・シカラスという状況なのは、新しいギリシャ系選手のリクルートがうまくいっていないということなのかもしれない。
五輪競技ではなくなったことを考えると、元々下地のないギリシャの野球連盟の経済力が厳しいことは容易に想像がつく。

とりあえず今大会もきっちりシード権を得ることが目標となってくるはず。地道に発展してきたギリシャ野球の未来に繋がる結果を残したい。


・前回大会戦績(2014)

対スペイン ●3-15
対ロシア  ●1-14
対オランダ ●0-11
対チェコ  ●2-17
対クロアチア ○10-0
対イギリス ●4-10
対スウェーデン ●0-2


○イギリス代表

ヨーロッパ野球の勢力図を見るに、やはり西欧の国が他のスポーツ同様強い傾向にあるが、そこに当てはまらないのがイギリス野球。
ただ、イギリスは自国発祥ではないスポーツはメジャーな競技でも(たとえばバスケットボールやバレーボールなど)意外と強くない点を考えると、野球もそれらと同じような理由にあるのかもしれない。

代表チームは両親が同国出身だったり、イギリスで生まれ幼少時にアメリカやカナダに移り住んだといった経歴の選手が多い。
国内リーグもしっかりオーガナイズされたものが行われているが、代表クラスはアメリカ・カナダか欧州の他のリーグでプレーしているケースが大半である。


どういった大会でも「イギリス系」カナダ・アメリカ育ちの選手が代表の中核を占めるため、選手の選択の幅は広く、大会のグレードによって集まる選手のレベルは変わってくる。

2007年に行われた欧州選手権は北京オリンピックの予選も兼ねていたため、レベルの高い選手が揃いまさかの準優勝(協会の資金不足でせっかく出場権を得た世界最終予選を辞退したあたりが悲しい現実)。
ロンドン五輪で野球が実施されなかったことはイギリス野球にとって大きな損失だったが、MLB公式戦のロンドン開催の話が浮上するなど、先行きは決して暗いものばかりではなく、国内の野球環境も整備されてきている。


話はそれてしまったが、通常のヨーロッパ選手権レベルの大会だとだいたい8位前後くらい(前回9位)に収まるのがイギリス代表。
直後にブルクッリンで行われるWBC予選のイギリスとはまるっきり違うチームだが、共にイギリス野球を盛り上げる存在として結果を残したい。

予選にも繋がるような戦いに期待したいところである。

・前回大会戦績(2014)

対スウェーデン ○7-1
対フランス   ●5-9
対ドイツ    ●0-9
対ベルギー   ●0-5
対イタリア   ●0-13
対ギリシャ   ○10-4
対クロアチア  ○9-0


○ベルギー代表

長いヨーロッパ野球の歴史の中で、かつてはイタリア・オランダに続く3番の国として名を連ねていた伝統国ベルギーの野球だが、他国の成長もあり相対的にポジションは下がってきてしまい、ヨーロッパ選手権本大会の出場を逃すケースまで出てきてしまった。

このままヨーロッパの野球の成長に反比例するかのように沈下していくものかと思われたが、ここ数年で復活の兆しを見せている。

特に前回大会の活躍は印象的だった。

初戦ではイタリア代表のリケッティ、クレパルディといった実力派投手を攻略し乱打戦に持ち込み、2戦目は地元のドイツ相手に8回までリードする展開。
スウェーデン、イギリスといった同格相手には快勝し、前々回(2012)大会同様フランスには1点差の惜敗。

WBC予選参加国に入っていない国では最も国際舞台で戦えるレベルにあると言っていいパフォーマンスだった。

特に隣国でありヨーロッパ最強の国でもあるオランダの影響が強く、主力選手の一部はオランダリーグで活躍している。

前回大会ドイツ戦で7回1失点と好投したエースのケニー・ファンデンブランデンは今年オランダリーグでリーグ1位の防御率を記録。

代表の正セカンドであるベンジャミン・ダイルもオランダリーグの強豪ネプチューンズで中心選手として活躍している。


また、MLB傘下でプレーする選手を輩出できるようになった点も象徴的だろう。

ドイツで活躍する二刀流のトーマス・デウォルフ(元メッツ傘下)に続いて、現在は外野手のサム・ビューレンスがトロント・ブルージェイズ傘下でプレーしている。


ヨーロッパ選手権にはWBC本大会出場が決まっているオランダ、イタリアのほかに、予選から出場するドイツ、フランス、チェコ、イギリスといった国が出場する。今大会も彼らと互角な戦いを繰り広げることで、自分たちもWBCに出場するに値する存在であることを証明したい。

・前回大会戦績(2014)

対イタリア ●7-12
対ドイツ  ●2-6
対スウェーデン ○11-10
対イギリス ○5-0
対フランス ●4-5
対ロシア ○12-2



○フランス代表


ヨーロッパの中堅国。チェコやドイツの後ろあたりにつけている国と言えるだろうか。
米国の影響が強い欧州野球において、フランス野球は日本の野球とのかかわりが深い珍しい存在でもある。
2014年には元フランス代表監督である吉田義男氏の名前を冠した地元の国際大会で、都市対抗王者として参戦した西濃運輸を破るという快挙も残した。

編成としては国内リーグの選手をベースに、ケベックのフランス系、カリブにあるフランス領の選手ら独立リーグやマイナー経験者を加えるといった形になるものと思われる。

ピッチングスタッフで第一に挙げられる選手で言えば、昨年3月の欧州選抜でフランス唯一の来日メンバー入りを果たしたオーウェン・オーザニッチ。
130キロ後半のストレートとスライダー、チェンジアップを軸としたテンポの良いピッチングスタイル。アメリカ育ちで、オーストラリアプロ野球でもプレーしたインターナショナルな経歴を持つ。
年末の台湾ウインターリーグでは一人別格のピッチングを見せており、制球の良さ、キレ味鋭い変化球はアジアのプロ選手にも通用していた。
前回大会でも格上のドイツ相手にアップセットに導くなど、絶対的な存在である。
ただ、彼以外ではなかなか国内組では国際レベルの投手は見当たらないというのが現状だったりもする。投手層の薄さが現在のフランスの最大の弱点であり、ワンランク上とされるドイツやチェコとの差となっている部分はここである。
しかし、3月のWBC予選では光明も見えた。昨年台頭した20歳のヨアン・バウゲレード(ルーアン)が初の国際大会となった同大会で最速87マイルを計測するなどポテンシャルを見せつけている。今シーズンも成績は安定しており、オーザニッチに続く投手として、そして待望の国産の国際レベルで通用する投手として期待がかかる。

野手に関しては、四国ILの高知でもプレーしたトーゴ系のフレデリック・アンヴィや、カリブのフランス領サン・マルタン出身のレネ・レベレット(元ツインズ傘下)あたりがロングヒッターとして期待される選手だろうか。

守備面ではカナダでのプレー経験があるマックス・レフェブレ(ルーアン)や元群馬のフェリックス・ブラウンといった守備力の高い内野手が控えており、こちらの方で心配する部分は少なそうだ。外野守備には不安が残るが・・。

地道に発展してきてはいるものの、イタリアやオランダの背中が遠いという現状は吉田監督時代から変わっておらず、MLB傘下への選手の輩出も滞るなど、停滞してきているという印象が強い。そんな閉塞感を打ち破る戦いに、今大会は期待したい。

・前回大会戦績(2014)

対ドイツ ○3-2
対イギリス ○9-5
対イタリア ●2-12
対スウェーデン ○8-3
対ベルギー ○5-4
対チェコ  ●3-14
対オランダ ●5-14
対スペイン ●5-10



○チェコ代表

ドイツとともにオランダやイタリアに待ったをかける欧州の新興国。マイナーリーグに多くの選手を送り出し、年代別の世界大会にも積極的に参加している。ユース世代の代表では、オランダやイタリアとほとんど差がないと言っていいが、成人代表では二強&スペイン(この3カ国は成人代表では本国出身者以外の選手が代表に入ってくる)、そしてメジャーリーガーを輩出しているドイツらに続く欧州5番手格の国という格付けが、現在のチェコ野球の評価になる。

1試合単位では前々回大会でオランダを破ったりするなどアップセットを見せることも。今年3月のWBC予選では地元メキシコ相手に1点差の大善戦を見せた。


2007年の北京五輪プレ大会では坂本勇人やT-岡田、前田大和といった当時のファームの若手選手で編成された日本代表相手に延長に持ち込む善戦を見せ、多くの人を驚かせたことで知られる。


投手陣では、マレク・ミナリーク(元パイレーツ傘下)やWBC予選でメキシコに好投したヤン・ノバク(元オリオールズ傘下)など、90マイル以上のスピードを計測する投手も多く輩出している。
そういった投手を軸に、伝統的にサイドスローや球筋の汚い投手など多彩な投手も輩出しており、球の力がある投手と組み合わせる形で、投手起用の最適解を探したいところ。


攻撃面ではWBC予選のメキシコ戦でホームランを打ったマテイ・ヘイマ(ドラシ・ブルノ)やフィリーズ傘下でプレーしたヤコブ・スラデック(コトラルカ・プラハ、元石川)といったマイナー経験のある大柄なロングヒッターが並び気が抜けない打線という印象だ。

強肩捕手のマルティン・セルベンカ(インディアンズ傘下)、投手も兼任するショートのマルティン・シュナイデル(ドラシ・ブルノ)、後方の打球処理も安定しているセンターのヘイマらを軸としたディフェンス面は欧州レベルでは安定しており、守りがウイークポイントとはならないだろう。

昨年行われたU18ワールドカップでは16歳ながら191センチという長身に到達していた4番マレク・クルップがアメリカのエース・バーグナーから二塁打を放つなど、国際レベルの好投手相手にもパワフルなバッティングを披露。日本戦で先発した16歳のオンドレイ・フルコも195センチの長身から130キロ超える速球を投じる怪腕ぶりを見せている。黄金世代といってもおかしくないこの世代の選手たちの見せる可能性から、チェコ野球の未来に向けての期待感も高まっている。

非常にポテンシャルが評価されてきたチェコ野球だが、欧州5番手と言う立ち位置にはそろそろ飽きてきたころ。3月のWBC予選では、メキシコやニカラグアと大善戦。ブレイクスルーの足がかりとなる戦いも見せた。
ヨーロッパでの戦いでも、これまでとは違う結果を残すことに期待したい。それが期待できる戦力は十分有している。

・前回大会戦績(2014)

対ロシア ○5-0
対オランダ ●0-7
対クロアチア ○13-2
対ギリシャ ○17-2
対スペイン ●2-9
対フランス ○14-3
対イタリア ●1-9
対ドイツ  ●2-5




○スペイン代表


ヨーロッパ野球における位置づけは、オランダ、イタリアに続く勢力としてドイツと共に肩を並べている存在。
ただ、自国出身の選手を中心に戦うドイツと違い、スペインの戦力の大半はキューバやベネズエラといった中南米出身選手によって支えられており、国内の野球の地位なども二強やドイツとは隔たりがあるという印象だ。
特に前回WBC本大会に初出場したときのスペイン代表は、スペイン本国出身の選手が一人しかいなかった。


中南米出身で、マイナー時代に十分なキャリアを積むことができなかった選手がスペインに流れ着くことが多く、国籍も取得する。したがって代表チームの層は欧州レベルでは厚い。

投手陣で中心となるのは昨年の侍ジャパン戦にも欧州選抜の一員として登板したベネズエラ出身のレスリー・ナカー。
国内リーグでは毎年圧倒的な数字を残している右腕で、昨年はイタリアリーグの強豪サンマリノでもプレーした。
ツーシーム系のボールとカット気味のスライダーを中心とするピッチングスタイルだ。

彼と代表の両輪である同じくベネズエラ出身左腕のリカルド・ヘルナンデスも国内で圧倒的な数字を残したあとにイタリアリーグに移籍するなどステップアップ。共に13年のWBCにも出場している。

また、今回はWBC予選などではスペイン代表でプレーしていた元楽天のライナー・クルーズも代表入りした。

野手陣で中心となるのは、同様にベネズエラ出身選手である内野手のオスカー・アングロ。
国内リーグでは毎年のように2位に1割以上の差をつけて首位打者を獲得し、前回の欧州選手権では4本塁打を記録。
ショートストップとしての守備やスピードにも優れ、スペインで才能を開花させた選手の代表格と言っていいだろう。

2010年にスペインリーグのサントボイでプレーし、イタリアリーグを経て昨年ホワイトソックスとマイナー契約を結んだジュニオール・ゲラは今季ブルワーズでローテーション投手として活躍していることに象徴されるように、マイナーで十分なキャリアを積めなかったものの、スペインで才能を開花させ再びステップアップしていく中南米出身の「掘り出し物」が眠っているところでもあるのがスペイン野球。ヨーロッパの国際大会にはスカウトも多く訪れるため、今大会でもステップアップを果たす選手が登場するかもしれない。

一方で、スペイン国内出身からも才能のある選手は少なからず登場するようになってきている。



2014年には高知ファイティングドッグスでプレーしたホルヘ・バルボア(バルセロナ)は四国ILのトライアウトで153キロ計測した剛腕。
制球に難があるなど、高知でのプレーは一年限りとなってしまったが、復帰後の国内での成績は上向いてきておりスペインのポテンシャルを感じさせる投手の一人だった。

台頭してきた国内出身選手に、スペインからさらなるステップアップを虎視眈々と狙う中南米出身の帰化選手。この両者が組み合わさって構成されるスペイン代表がどういった成績を残すのか、今大会も注目したい。

・前回大会戦績(2014年)

対ギリシャ ○15-3
対クロアチア ○18-2
対ロシア ○12-0
対オランダ ●7-19
対チェコ ○9-2
対イタリア ●4-6
対ドイツ ○4-3
対フランス ○10-5


○ドイツ代表

ヨーロッパ野球をリードするイタリア、オランダに続くナンバー3の国。
2013年にはドナルド・ルッツ(レッズ)、そして今年ツインズのレギュラーに定着したマックス・ケプラー(ツインズ)と、メジャーリーグでプレーする選手も輩出するようになった。
メジャーリーグに選手を輩出した国としても、ヨーロッパで3番目の国ということになる。

前回大会はフランスにアップセットを許し、ライバルのスペインにも敗れたことが響いて5位という不本意な成績に終わった。

投手陣で中心となるのは、マーカス・ソルバック(ダイヤモンドバックス傘下)になるだろうか。昨シーズンは1Aで11勝を記録している。
かつで五輪予選で台湾に好投したことで知られる軟投派左腕のアンドレ・ヒューズ(ゾーリンゲン)、昨オフはオーストラリアプロ野球で修行を積んでいる150キロ長身右腕のヤン・ニクラス・ストッケリン(マインツ)らで構成される先発陣はまずまずと言える
リリーフにこれと言った存在がいないこと、投手のタイプは制球が粗い単調なタイプが多くバラエティに欠ける点が少し気になるが・・。

打線に関してはメジャー経験もあるルッツが故障、ケプラーはメジャーロースター内にいるため、選出はかなわなかった。
ルドウィグ・グラサー(レーゲンスブルク、元エンジェルス傘下)、シモン・ゲーリング(ハイデンハイム、元ツインズ傘下)ら、マイナー下位級の経験を持つプルヒッターがラインナップに並ぶのが特徴だ。

そのほかの脇を固める選手もそれなりに駒は揃っているが、唯一の懸念材料は正遊撃手の不在だろうか。

堅守のショートとして長年ドイツ代表を支えたジェンドリック・スピアーからフェードアウトして以降、守備に安定感のある国際レベルのショートは台頭していなかったが、今大会でそのスピアーが復帰。逆に言えば、彼にいまだに頼らなければならない現状が、内野守備は二強と差が付いているという課題を象徴していると言える。
WBC予選でショートを守った18歳のナディール・ルジャティフィ(レッズ傘下)あたりが若手だと候補になってくるだろうか。

ドイツとして目標となってくるのは悲願の決勝進出。
そのためには、堅実に取りこぼしなく勝ち星を重ねていき、かつイタリアかオランダどちらかにリーグ戦で勝利しなければならない。
全ての戦力のバランスが整った状態で戦わなければ、それは難しい。


ヨーロッパ選手権はここ3大会連続でイタリア対オランダというおなじみのカードになってしまっている。二強に待ったをかけるような躍進に期待したい。

・前回大会戦績(2014年)

対フランス ●2-3
対ベルギー ○6-2
対イギリス ○9-0
対イタリア ●1-5
対スウェーデン ○12-8
対オランダ ●4-10
対スペイン ●3-4
対チェコ  ○5-2

○イタリア代表

昨年行われたプレミア12では、国内リーグの選手を中心に戦ったイタリア代表。まあWBCのルールではないのでそうするほかなかったのだけど。
五輪やワールドカップの実績を考えると、それでも準々決勝は可能な範囲の目標だったように思えたが、結果は5戦全敗。結果以上に内容でも厳しいものがあったと言わざるを得ない。特にライバルのオランダ戦でコールドの大敗を許した試合は忘れがたい屈辱と言ってよい。


原因としては、アレックス・リディ(元マリナーズ)やホセ・エスカローナ(リミニ)、チアゴ・ダシルバ(元サンマリノ)といった選手らがWLを優先し出場できなかったこと、国内の帰化選手に強力な投手が減ってきたことなどが挙げられるだろうか。

ヨーロッパ王者への返り咲きを目指す過程においては、やはりイタリア出身投手の奮起で投手陣に厚みを加えることも不可欠になってくる。
昨年U18とプレミア両方に選出されたルドビコ・コベーリ(フィリーズ傘下)のようなピッチャーを積極的にこういった場でも使って行きたい。ただ、イタリア国産の投手の不足は特にライバルオランダと比べると深刻である。


やはり軸になってくるのはWBCでも活躍したダシルバになってくるだろう。

野手陣では、昨年台湾WLで高打率を残して開花のきっかけをつかんだセバスティアン・ポーマ(サンマリノ)がイタリアリーグでも.369というハイアベレージを残し首位打者を獲得。外野手としての守備力も高く、代表は未経験だが、ユーロで国際試合の雰囲気を経験し、WBC選出にも繋げたい。

そして今大大会では久々にイタリア人初のメジャーリーガーであるリディが欧州選手権で代表入り。
主砲として格の違いを見せつけることに期待がかかる。
投手力の高いオランダとの戦いに向けて、日常的に国内で実績のある外国人投手と対戦しているアドバンテージを生かして、ある程度打ち勝つ野球が求められるだろうか。


WBCに向けて、イタリア国籍を持ったイタリア系選手の試運転の場という側面もある。
今はメジャーで活躍するクリス・コラベロ(ブルージェイズ)も米独立リーグ在籍時代、13年WBC前年の欧州選手権をイタリア代表としてプレーしている。今大会では、プレミア12に続いて選出されたフリオ・ルーゴ(インディアンス傘下)がそれに当たるだろうか。

ただ、やはり最大の目標は欧州王者というタイトルの奪回だろう。プレミア12の屈辱を晴らし、WBCに繋がるパフォーマンスに期待したい。

・前回大会戦績(2014年)

対ベルギー ○12-7
対スウェーデン ○12-3
対フランス  ○12-2
対ドイツ  ○5-1
対イギリス ○13-1
対スペイン ○6-4
対チェコ  ○9-1
対オランダ ●0-5



○オランダ代表

オランダ代表には2つの今大会に向けた命題がある。
前回大会に続く連覇でヨーロッパ野球の覇権を守ることはもちろんのこと、翌年に開催されるWBC本大会にむけた強化である。

特に投手陣はWBC本大会レベルでは層の厚さは前回は十分とは言えず、国内組からも新しい選手の台頭が望まれる。今大会でその候補となる投手をピックアップし、WBCに向けて試運転することもやっておきたいことの一つだったりする。


投手陣で大黒柱となるのは、WBCなどでもおなじみとなったベテラン左腕のディエゴマー・マークウェル(ネプチューンズ)。老獪な投球術は世界レベルで通用することを証明しており、ヨーロッパを代表する左腕と言っていいだろう。

今回期待したいのが、ラース・ハイヤー(パイオニアーズ)。
一昨年までマリナーズやカブス傘下のプロスペクトとして期待を受けていた投手で、昨シーズンからオランダに復帰した右腕。

昨年オランダリーグでは「まずまず」といった成績に終わり、球威不足を露呈。プレミア12の代表からも落選してしまっていた。
ただ、昨年末のアジアウインターリーグではやはり元プロスペクトという片鱗を感じさせる投球を見せており、国内リーグでのパフォーマンスは今年向上。ヨーロッパ選手権にも選出されれば、国際試合の水にも慣れさせておきたいピッチャーの一人である。実力派ながらもオランダ代表としてのプレー歴が短いマイク・ボルセンブローク(レーゲンスブルク)にも同様のことが言える。


リリーフ陣では右投手はパワー型のピッチャーが揃っていると言っていい。
ベリー・ファンドリエル(ネプチューンズ)や本来は先発がメインのオーランド・イエンテマ(ネプチューンズ)、元楽天のルーク・ファンミル(ネプチューンズ)など、短いイニングならある程度計算できるパワーピッチャーが名を連ねる。おそらく、国内組をベースに編成される代表チームとしては現在が最も投手陣が充実しているのではないだろうか。

一方で左投手のコマ不足は代表の積年の課題だったりする。プレミア12ではジム・プロエガー(ユトレヒト)という変則気味の左腕が選出されていたが、この大会でも選出。WBCに向けて国際大会の経験を積む場となりそうだ。

野手陣に関しては9月開催ということもあり、プレミア12同様海外でプレーするマイナー選手を軸に構成されることになりそう。

ロングヒッターのクルト・スミス(元カージナルス傘下)やカリアン・サムス(元マリナーズ傘下)、メジャー経験のあるロジャー・バーナディーナ(メッツ傘下)らWBCでもレギュラーだった選手を軸に構成される打線はヨーロッパ野球のレベルを超えていると言っていい。


近年のオランダ代表の強さの秘訣の一つは、代表が「常設」に近いところにある。欧州選手権とプレミア12とWBCをさほど変わらない陣容で戦えるのは大きなアドバンテージだ。

WBCに繋がるチームの下地を作りながら、ヨーロッパ王者というタイトルの死守。さらには今大会は地元開催だったりする。
地元の後押しを受けながら、2017年に弾みをつけるような戦いに期待したい。


・前回大会成績(2014年)

対クロアチア ○19-2
対チェコ   ○7-0
対ギリシャ  ○11-0
対スペイン  ○19-7
対ロシア   ○12-1
対ドイツ   ○10-4
対フランス  ○14-5
対イタリア  ○5-0