「詩人回廊」

日本の短編小説の特殊性について「韻律のある近代詩、日本語の制約にはばまれて、大した発展を見なかったので、小説家は叙情詩を書きたい衝動を、やむなく短編小説に移してしまった。短編の傑作と呼んでいる多くは物語的構成をほのかにもった散文詩である」三島由紀夫「美の襲撃」より。文芸同志会は「詩人回廊」に詩と小説の場をつくりました。連載小説も可能です。(編集人・伊藤昭一&北一郎)(連載を続けて読むにはタイトル上の筆者の庭をクリックします)。

2015年04月

第25回伊東静雄賞一次選考田中俊廣氏選評(抄)(栞)より

IMG_20150405_0001_1<第25回伊東静雄賞の「栞」には作品選評や贈呈式の内容などが掲載されている>≪参照:詩人・伊東静雄を偲ぶホームページ
  〜ことばと向き合う〜
 詩は様々な対象をモチーフとする。いずれにしても、ことばがそれらにどのように向き合うか、その真摯さが作品の質や真価を形成する。
 今回は1380篇を読んだ。正直、これだけの数を一つひとつ読解していくと、どつと疲れてくる。頭が混沌としてくる。一人ひとりのことば、心や感情、価値観と対話しているからである、ことばは人である,それぞれと面接しているような心持でもある。
 作者はどれほど誠実に対象やことばに向き合っているのかなあ、と疑念が生じてくることもある。単に、感情や私的価値観をぶつけているものも少なくない。作品は自己慰安ではない。自己確認、あるいは発見であるべきだ、つまり、客観的視点を必要とする。作品は自己表現であるが、読者との協働作業である。読み手がいなければ作品は成立しない、相手へのコミュニケーションでもある。
 第一次選考は、例年のように、高塚かず子さんとそれぞれ50篇を選び、付き合わせた。まず、共選のものを佳作とし、残りは一篇ずつ読み合い話し合いながら決定していった。
  奨励賞の八重樫克羅さんの「しのたまご」は、綿密な構成の中から再生へのモチーフが立ち上がってくる。「子(し)のたまわく」ー「しのたまご」ー「死の卵」ー「詩の卵」という、音韻の類似性を活用しながら、悲嘆から生命への躍動を企図している。詩の生成の根幹とシステムの解剖図のようであり、その過程を辿るスローモーション映像のようでもある。
  同賞のいわたとしこさんの「水の位置」は、3・11東日本大震災をモチーフにしている。生命や故郷を奪っていった津波の不条理と惨禍を、感情を抑えて静かなタッチで描いている。いや、冷静であろうとするが、抑制の行間から悲嘆が溢れ出ていると言えようか。配偶者を亡くしたのであろう。その喪失感は深い。その悲痛さを「津波てんでんこ津波てんでんこ」などの「黒.膏葉」が、一層リアルに掻き立てている。
  他にも、米村敏人「挨拶」、川島清「真空」、石下典子「八月のおむすび」、大城さよみ「木の名」、佐々木薫「ユウバンタ」、松尾ススム「栞」、森川雅美「天上譚」に惹かれた。

第25回伊東静雄賞一次選考高塚かず子氏選評(抄)(栞)より

IMG_20150405_0001_1<第25回伊東静雄賞の「栞」には作品選評や贈呈式の内容などが掲載されている>≪参照:詩人・伊東静雄を偲ぶホームページ》  
〜 光源としての詩〜
 第25回伊東静雄賞応募作品は、一編ずつの世界と向きあいながら、みずからに問うことも多く、一次選考を終えました。奨励賞の「しのたまご」入重樫克羅さん、詩の本質に迫った作品です。じかに話しかけられているような訴求力が、まっすぐ響きました。「水の位置」いわたとしこさん、2011年3月11日に「早く逃げろ。俺は大丈夫だ」と叫んで海に消えた夫。私的な体験を昇華させて作品を紡ぎ続け、普遍性を獲得なさいましたね。
 「編む」壱岐梢さん、「矢」野田桂子さん、森、蝉、原野、狐、生きとし生けるすべてのいのちと響きあう生命感覚が鮮やかです。
 「渚にて」山本まことさん、「約束の日」水木萌子さん、「その池について」月岡一治さん、「ひとこと」桜木小夜さん、「火炎樹とヵメレオン」おぎぜんたさん、ことに心に残った作品です。
 詩を書くということは、日常の文脈では語れない世界の追求、更につきつめれば、言葉では表せない生命の深淵から言葉を紡ぐ営為ではないかと私は感じています。
 先日、『第九回菜の花フォーラム』に参加しました。『菜の花フォーラム』は、伊東静雄研究会の主催で、毎年開催されています。第一部の「伊東静雄と故郷」は、音楽と語りと詩の朗読で構成されていました。諌早図書館視聴覚ホールにぎっしりと集った人々のなかの一人として聴き入っているうちに、詩がたしかに精神の光源となっていることがひたひたと実感できました。伊東静雄という詩の作品は、生死や時の流れを超えて、読者の心のなかで光を発しています。
(第25回伊東静雄賞(伊東静雄顕彰委員会主催)の「栞」より)

「詩人碁会」春の合宿!優勝者は片瓜和夫さん

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<「詩人碁会」の春の湯河原合宿トーナメント対局で優勝した片瓜和夫五段(左)と郷原宏世話人。杉の宿にて。片瓜さんは詩人と指圧治療師の資格をもつ「詩士」で、福島へのボランティア活動など多忙のなか参加し勝ち抜いたという>
 碁の好きな詩人たちが集まる「詩人碁会」恒例の春の合宿が4月19〜20日、神奈川県湯河原町の娯楽民宿「杉の宿」で行われた。
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<準優勝の清水正吾さん(左)と郷原世話人。背後の壺と掛け軸の「風」が風趣を生んでいる。清水さんは、詩誌「幻竜」の発行者でもある。大きな版形と幻の竜を源流とするところに評価が高い>
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<敗者復活戦を勝ち上がって総合3位に入賞の新井知次六段(左)と郷原世話人>
 参加者は男女合わせて15名。置碁制のトーナメント戦の結果、片瓜和夫五段が清水正吾五段に中押し勝ちして初優勝。敗者復活戦では新井知次六段が勝ち上がって総合3位に入賞した。夜は特別料理「大舟盛り」を囲む酒宴「詩の碁の言う会」で、にぎやかに議論をたたかわせた。
P4190067P4190059P4190058<参加者のサインと対局風景>
 なお、10月には東京・市ヶ谷の日本棋院で「詩人碁会」秋の大会を開く。参加希望者は世話人の郷原宏さんに連絡してくださいとのこと。参加者の棋力をおおまかに判定して、ハンディなどを設定しているようだ。
P4190057P4190055P4190056<対局風景。湯河原「杉の宿」娯楽室にて>

第25回伊東静雄賞の以倉紘平氏選評(抄)

IMG_20150405_0001_1<第25回伊東静雄賞の「栞」には作品選評や贈呈式の内容などが掲載されている>
 平成26年度第25回伊東静雄賞(伊東静雄顕彰委員会主催)は、奨励賞に茨城県の克羅さん「しのたまご」と、横浜市のいわたとしこさん「水の位置」の2作に決まった。 最終選考委員の以倉紘平氏の選評を抄録する。
  詩は思いの深さから生まれる=八重樫克羅氏「しのたまご」は、小さな愛娘を亡くした母親の回想という形をとっていて、あどけない子供の言葉が、作品の核になっている。笑と涙を兼ね備えた思いの深い傑作である。〈謹厳な水戸ッぽの父親〉に命じられて、毎朝五歳の息子が論語の粟読をする。時々怠けることがあると〈小さい妹が不服そうに注意したものでした〉と母親の回想は始まる。
 〈おにいちゃんきょうはしないの? しのたまご…」〉。小さな兄が大きな声でお経のように唱える〈子日はく…〉を〈しのたまご〉と聞き取った、妹のあどけない無邪気な言葉に、家族は恐らく幸福な和やかな笑いに包まれたに違いない。たんなる同音異義語の問題ではない。〈しのたまご〉がく死の卵〉から〈詩の卵〉に孵化するには、死者との長い対話、人生の長い熟成の時間が必要だったのである。
 いわたとしこさん「水の位置」は、東北の大震災で津波に家屋と夫を奪われた妻の喪失の悲しみをテーマにした作品である。作品の本質はウタである。心の調べが、思いの深い音楽になっている。
  この作品の〈わたし〉は、何もない空っぽの風景の中に佇んでいる。〈もどり来た故郷〉には、家屋や家財だけではない。愛する人も姿を消したのである。空っぽを埋めるのは、記憶と想像力だけである。〈壁に刻まれた水の位置〉という言葉があるが、崩壊して流失した壁に、書葉が刻まれてあったはずはなく、すべて作者の想像力の営為である。生と死を分ける境界の意味で使われているのである。この喩(象徴)は、日常と非日常を分ける、激変した世界を分かつ線であり、印しである。
 今回の応募作品数は、1380篇、昨年より405篇多かったそうである。
 北野茨氏「気高い魂」と佐々木蕪さん「ユウバンタ」は特に優れていると思った。受賞作とほとんど遜色のない出来栄えであった。他には、吉田武雄氏「シルエット」、石下典子さん「八月のおむすび」、月岡一治氏「その池について」、亀井真知子さん「きりん」、うえじょう晶さん「ソーキ汁」、大西規子さん「天の庭から」等が印象に残った。
<第25回伊東静雄賞の「栞」より>

ムラーアートの町ーMission-District  江素瑛

Balmy Alley!0001_1Balmy Alley0001_1
サンフランシスコのミッション地区
大通り 小巷 トラック 駐車場 車庫 店の中 どこを歩いても 惹かれて目に焼きつくものは 壁一面の迫ってくる大きな壁画 
Cypress-0001_1
PATRICIA RODRIQUEZ 及びGRACIELA CARILLOなど及びボランテア壁画家によるアート
派手な 大胆な 鮮やかさ エロ的 情熱 過激な 喜楽哀楽を素直に表現する純粋さ 自由奔放 原始的な色彩が町中に氾濫 略奪行為の歴史の痕跡も残る 多民族を抱えるアメリカこそのアート 

素通りするのは地元住民だろう
その身近な存在は生活の一部 遠く遥かな彼方から招かれてきた観光客だけが 足を止め カメラを構え ひとりで黙々と眺めて瞑想 あるいは通訳の熱心な解説耳を傾ける 
LILAC0001_1Mission24streetOSAGE0001_1Balmy Alley!!!0001
そこに出会った壁絵は
メキシコ アフリカ ベトナン ラテン系アメリカ 中国 韓国 日本の 社会風俗 愛情 戦争 政治批判 宗教信仰 ET風刺 日本の言わず見ず聞かず猿も取り入れた 風や雨や露や日照りに晒し 町の風景の中 壁画は私に向かって喧々諤々

偶々壁画になった車庫と思われるドアを覗くと
町工場のように散らかしている絵道具 板 大工道具 それらしい制作者たちは 私の好奇心に視線投げてくる

一日中寒暖晴雨不安定のサンフランシスコ
日の出る前霧が町を籠る 午後のやさしい陽光に当てられ ただで見られる町のムラーアートに堪能 時間の余裕さえあれば・・・壁絵も天気の変化 日照り具合に顔が変われるだろう 

サンフランシスコの壁絵とは 雲泥の差
日本のところどころに見られる 人間のエゴによる壁のいたずら絵は ただのはげ口に終わりそう 壁絵画のアートが見られる日本になる日がいつか来るだろうか
(2015年4月4日) 

第26回伊東静雄賞公募は新選者を迎え8月31日締切

IMG_20150405_0001_1<第25回伊東静雄賞の「栞」には作品選評や贈呈式の内容などが掲載されている>
 第26回伊東静雄賞の公募が開始されている。
 第25回伊東静雄賞(伊東静雄顕彰委員会主催)の「栞」には、奨励賞受賞作や作者紹介、選考委員の選評などが掲載され、賞の設立の精神に沿った編集になっている。現在、第26回伊藤静雄賞を公募している。これまでは、一次選考委員に高塚かず子、田中俊廣氏、最終選考委員に伊藤桂一氏、以倉紘平氏が担当していた。そのなかで一次選考委員では高塚かず子氏が退任し、平野宏氏と交代している。最終選者においても、伊藤桂一氏が退任、井川博年氏に変わった。≪参照:詩人・伊東静雄を偲ぶホームページ≫ 
 以倉紘平氏と田中俊廣氏は従来通りそれぞれ選考委員を担当する。
 今年の第25回「伊藤静雄賞」の奨励賞の受賞者の八重樫克羅さん(作品「しのたまご」)は、1938年横浜生まれで、NHKの番組「中学生日記」や「教養特集」などの番組制作に携わり、退職後茨城県に居住。詩誌「ERA」同人。詩集「イーハトーヴの幸福な物語」がある。
 同じく奨励賞受賞者のいわたとしこさん(作品「水の位置」)は、1931年朝鮮生まれ。防衛施設局に勤務したのち、(財)日本児童家庭文化協会」の相談員を勤め、離職後詩を書き始める。「象」「京浜文学」同人。
 同賞の選考者の伊藤桂一氏は、作品「水の位置」を高く評価。その一部では「この作品は、作者が3年前の津波の日の記憶を取り戻すために、夫の生命を奪った海辺を訪れ、<記憶のなかで二人が暮らした家を組み立てる>等、そうしないではいられない切実な思いが描かれている。その思いは、今や彼女の<命>の原点とでもいうのだろうか? 生き抜くための強い力となっているように思えるのである」と評している。
■関連情報=第24回伊東静雄賞は谷元益男さん「滑車」に決まる〜「栞」より

第25回伊東静雄賞は奨励賞に八重樫克羅さん、いわたとしこさん

IMG_20150405_0001_1<第25回伊東静雄賞の「栞」には作品選評や贈呈式の内容などが掲載されている>
 平成26年度第25回伊東静雄賞(伊東静雄顕彰委員会主催)は、応募総数1380篇に達した。優秀作は該当なし、奨励賞に茨城県の克羅さん「しのたまご」と、横浜市のいわたとしこさん「水の位置」の2作に決まった。
 贈呈式は3月29日に開催され、詩人・文芸評論家の倉橋健一氏による「伊東静雄の詩と生きた時代」の記念講演が行われた。
 現在、第26回伊東静雄賞の公募が開始されている。≪参照:詩人・伊東静雄を偲ぶホームページ
 なお、選者として第1回から担当してきた詩人で直木賞作家の伊藤桂一氏(97歳)が第25回をもって退任することになった。また、第12回から第1次選考をしてきた高塚かず子氏も退任する。
 


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草木塔 -3−           種田山頭火4

生を明らめ死を明らむるは仏家一大事の因縁なり(修証義)

生死の中の雪ふりしきる

木の葉散る歩きつめる
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