歴史的に芸術文化の内容が変わらないことと、地球上の人口が激増してきたことは、前に述べた。その原因には、疫病の治療と予防に関する医学 の発達普及があることはいうまでもない。同時に通信と文化の発達もめざましかった。
 それらは農業生産の効率を上げ、人類の飢えからのリスクを減らし、富の増大をもたらした。そして、それは人口の増大と同時に、経済的成長をもたらしているからである。
 それを数字で見ると次のようになる。
 世界の実質GDP(1990年の米ドル価格換算)
1600年〜1700年=増加1.12倍(年率成長0.11%)/1700年〜1820年=増加1.87倍(同0.52%)/1820年〜1870年=増加1.60倍(同0.94%)/1870年〜1900年=増加1.93倍(同1.93%)/1900年〜1950年=増加2.71倍(同2.01%)/1950年〜2000年=増加6.88倍(同3.93%)
  1870年には1.11兆ドルであったGDPが1900年には1.97兆ドル。1950年には5.34兆ドルとなり、2000年には36.69兆ドルになる。<Angus Maddison(1926〜2010年イギリス経済学者)のデータから野口文高(株)DZFフィナンシャルリサーチ・アナリストによる。>
 特に、20世紀後半、世界経済は年率3.9%の高成長を遂げた。この社会的な富の増大が世界にひろがったことで、社会に変化をもたらした。
 歴史的な段階を省略して身近な例でみると、従来は自分の生活を維持するだけで精一杯であった人々が、生活の余裕をもった。衣食住を充実させ、いわゆる可処分所得の増大をもたらしたのである。
 そこから、かつては子供が生活の維持に必要な生産的労働力として社会参加してきたものが、その必要性も場もなくなったのである。
 そして増大した可処分を消費するだけの形で、社会参加する時代になったのである。そうした社会の変化は、はじめて社会的な存在を家事労働に従事することから始めた世代と、「はじめてのお使い」で社会に参加した世代に分化してあらわれている。いわゆる世代間ギャップである。
 家の稼ぎに貢献して、親からその存在感を認められた世代。
 それとは逆に「お使い」という消費行動をすることで、外部の人間から、消費者としておもてなしを受けて育った世代。
 この社会的な存在の認定の過程の違いが、世界観の違いに出てきているのではないか。
《本論は、下記著作の続編です。参照: 「文芸同志会」のひろば
0301118 005<「なぜ「文学」は人生に役立つのか」伊藤昭一、表紙・佐藤みーこ(送料別500円)文芸同志会発行>
 作家・菊池寛には「日本文学案内」(ポプラ社・昭和十三年発行)という著作がある(現在は絶版)。この本には、―「文学」はどのように人生に役立つのか―という問題意識に満ちた内容になっている。本稿では、そのなかの文学論「“作家凡庸主義」の主張を中心にして、文芸同人誌、個人誌による、現在の文芸同人誌のカラオケ化現象の本質について考察する。構成:菊池寛の文学論【作家凡庸主義】/【文芸同人誌の原理とポストモダン】/菊池寛の小説「無名作家の日記」より/菊池寛の文学論【素直な心】/菊池寛の「決断主義」など――。