妻から、近所で食品などの宣伝販売があるからと一枚の広告ビラを渡された。
 内容そのままの「ライブストア」なる店名。百円で米二キロなどが買えるのである。
 一月末日のオープンに行く。朝十時の開店前に、百人以上の行列の後ろに並ぶ。
 三階建ての貸しビルの地上一階にある一室。50平方メートルもあろうか。
 折りたたみ椅子が百程並んでいる。後方に座るが続々と来店者は続く。
 立ち見客も会わせて、百五十人ほどを詰め込んで、十時半にようやく開始。
 延々一時間、自然食品の良さなど、宣伝広告費をつぎ込んだ商法の話を聞く。
 吉永小百合を起用した三十分テレビで広告すると、必要する費用は一億円もかかるとの事。
 いくら彼女が美味しいと言っても、視聴者にはその味はわからないし売れない。ならば、ここで試食し買ってゆく方が良いでしょうと力説する販売員。
 店長は四十歳前後の女性、店員は二十代の女性二人。三人で多数の客を裁く。
 初回は食パン三斤。広告を聞いた客にはこれが百円で買える。
 妻が早速バタートーストで食べる。旨い、次回も行きなさいと言われる。
 午後の部は二時開始。一時半に到着し折りたたみ椅子に座り開始を待つ。
 米二キロが百円だ。次回の交換券も渡される。話は初回と似ている。全国に数万人の会員がいる。旨かったら定価で通販するから会員登録しろと言う。
 定価は千八百円だが自然製法なので無農薬で健康に良いと力説する店長。

 妻は喜んだ。もう一度ゆくように言われる。夕方は四時半開始だ。
 またまた、百人以上の行列。順に入室し椅子に座る。中年主婦が大半。
 夫婦で来る老人も多い。客を連れてくれば砂糖が百五十円で特売される。
 自然製法の砂糖なので真っ白ではない、二千円もする上等なものだ。
 妻を連れてくれば私もこの砂糖を買えたのだ。残念。
 三回目のテーマは千二百九十円のカレーうどん一箱が百円の一時間説明。
 帰りに百円と引き換えにもらえるのだ。折り込みチラシはもうしないという。広告費用よりここでライブ販売した方が、説得力が大きいのだと店長が力説。
 長野大学新卒で、就職して二十年のベテランだと自己紹介する。若い女性店員二人も大学卒で就職しこの仕事に打ち込んでいるのだと職業自慢。
 自然食説明。健康維持説明。老人夫婦が本気で聞いている。私はあと五年で八十才。長生きと健康を心掛けるべきなのか。一時間も聞かされ続ける。
 ヒマな老人が百円につられて多数押しかける。それで商売になるのだろうか。
 壁一面に手書きのポスター。健康食品表。写真。厚生省見解などなど。
 演説より、ポスター読みで時間をつぶす。ひたすら一時間待つのだ。
 こうして一日目が終わる。百円玉を握りしめ、ひたすら広告演説に耳を奪われて明け暮れた。
■関連情報=外狩雅巳のひろば